第七十話 冬季 曇り
神谷冬季。1~2日目から継続。3日目人員変更に伴い「神谷姓」が二人になったので、タイトルでは「神谷」から「冬季」に変更します。貴重な10代の時に4年間も神道系修験道者の元で修業していた。視えるし祓えるけど物理的には非力な人です。
毎日のように乗る電車だと、だいたい同じ辺りに乗るじゃないですか。周りの人もなんとなく見たことある人だったりする。私は乗り換え一回でその前後は二、三駅ずつなんで、たいてい電車には立って乗っています。
先日も、帰りにだいたいいつもの辺りに乗ったわけです。乗り換え後の電車ですね。時間はいつも同じってわけじゃないですけど、その日もたまに見かける人が幾人かいる感じでした。前に座っている人もそうでした。それでその日は、前に座っていた人の後ろのガラスが曇っていて、なんか、人型に見えたんですよね。
まあ、冬場はね、よくあることです。結露だので窓が曇るから、そんな形で見えやすくなる。でも、夏なんですよね。
前に座っていたのは、若い女の人で、時々見かけてはいたんですけど、その日は少し雰囲気が違っていました。
喪服だったんです。
また、数日後に、同じ人が前に座っていて。やっぱり、後ろの窓が曇ってて。
人型が、前よりはっきり曇って映っていて。ちょっと手で拭えば消えちゃうようなもんです、しょせん窓の曇りですからね。けど、そこに、若い男性の陰影があるわけですよ。
座席に座る彼女と深い関係だった彼なんでしょうね。喪服だったのは彼のお葬式の時でしょう。
多分、亡くなった彼の意思ではなく、彼女の意思で、その場にあったように思えました。
次に見た時には、僕にはもう、はっきり姿が見えて。
彼は、僕が気づいたことに気づいたようで。戸惑ったような表情で、僕と彼女の背中を見比べていました。
僕は、以降は乗る車両を替えました。だから、その後のことは知りません。
残された人の想いが大切なのもわかるんですけどね。
でも、それで本当に、いいんでしょうかね。
語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。




