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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十三巡 名残り
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第六十九話 冬太 カレンダー

深見冬太。妻子持ち。入り婿。森山昴の異父弟。視るだけなら視えます。

 高校の時、学校のそばにあったお店の話です。

 表門と裏門それぞれに商店があって、どちらも品ぞろえはコンビニに負けますけど、学校に近いですからね。どっちも生徒がよく行っていました。表はおにぎりやパンも売っていて、裏はおまけつきのお菓子なんかも売ってるっていう違いがありました。

あとは、店番がですね、表はおっきなおばちゃんで。裏はおじいさん。表を「ババ店」裏を「ジジ店」と僕らは言っていました。

僕が入学したころは、表のおばちゃんの店の方が客は多かったですね。先輩が言うには、裏のおばあちゃんが亡くなってから、客足が落ちたようだってことでした。 僕が入学する前の年に亡くなったのだそうです。

 ただ、部室棟が裏門に近かったので、部活のおやつのまとめ買いはジジ店にひとっ走り。小腹がすいてるなら個人でババ店の売れ残りを狙うという感じでしたね。

 そんな感じで使い分けていたんですが、一年の秋頃に、噂が流れてきたんです。

 ジジ店にお化けが出るって。

 まあ、高校生ですからね。近所で死人が出れば勝手に一つ二つ幽霊話を思いつくまま創作してそれが広がるものです。

 いろいろ、ジジ店の話が入ってくるんですけど、統一性がない。

 アイスのケースを開けようとしたら、ガラスにばあちゃんの顔が映ったとか。

 薄暗い店に入ったら、じいちゃんいなくて、ばあちゃんがレジにいてにんまり笑って消えたとか。

 夜通りかかったら、明かりの消えた店内からおいでおいでしてたとか、人魂が飛んでたとかね。

 誰が見たかって個人名はなくて、何年の先輩が、とかって感じで、まあ、いつもの想像が実話のように広がってるだけだろうと思って聞いていたんですが。

 部で急にクリスマスパーティーをやろうということになって、お小遣いを出し合っておやつを買いに行くことになりました。店の商品を買いしめたらほかの部に嫌がられるので、表と裏とコンビニに部員が分散して買いに行くことになったんです。

 デザートはコンビニ、おかずの売れ残り狙いがババ店、乾きモノとプレゼント交換替わりのおまけつきお菓子がジジ店って感じですね。それで、僕はジジ店に先輩と行く担当になりました。。

 寂しい感じはありましたけど、別に、幽霊なんていなかったし。おじいさんもクリスマスやんのか、賞味期限近いおやつ安くするから持ってけや、とかやってたし、噂は噂だなあと。

 ただ、レジの脇の柱にかけてあった日めくりカレンダーの日付が、ね。二月十四日だったんです。もう十二月半ば過ぎなのに。

 で、僕は、何も考えずに、日にち違うじゃんって言っちゃったんですよね。一緒に行った先輩が気まずそうに睨んで来て。

 それはねえ、って、おじいさんが。

ばあちゃんが死んだ日なんだよなあ、って。

 ばあちゃんがいつもめくっていたんで、めくる気がしなくてそのままにしてあるんだって。

 そんな話をさせちゃったし、なんか行きにくくて、僕はしばらくジジ店には行きませんでした。

 三年が卒業したあとに、全員進路決まったからって先輩方がおやつを持って遊びに来てくれたんですが、盛り上がっておやつが足りなくなったんでひとっ走りジジ店で買って来ようってことになりました。僕は荷物持ち。

 おじいさん、ストーブを焚いてお店にいました。

 会計の時、何気なくカレンダーを見たら、やっぱり二月十四日でした。

 ずっとこのままなのかなあとぼんやり見てたら、おじいさんが、僕がそれ見ているのに気づいちゃったんですね。それで、ちゃんと新しくしたんだよ、って言うわけです。

 覚えてたんですかね? 前に話したのが僕だって。

 よく見たら、その年の新しいカレンダーだったんです。

 おじいさんが言うには、年末に新しいのに替えて、翌朝、新聞をとりに行ったついでにめくり始めようと思ったら、先にめくられていた。

 めくった分は、レジのわきのメモ用紙のとこに重ねてあった。いつも、ばあちゃんがそうしていたように。

 次の日も、その次の日も。

 ずーっと。

 けど、それも二月十四日までだった。十五日の朝は、そのままだったんだそうです。

 それで、おじいさん、もうカレンダーをめくる気になれなくて、そのままにしているってことでした。

 二年生の冬も、三年生の冬も、新しいカレンダーが二月十四日で止まっていました。

 新年にやってきて、バレンタインデーにいなくなる幽霊、なんでしょうかね。

 おじいさんは毎年、なんか、嬉しさ半分、寂しさ半分、って感じで話してくれましたよ。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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