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第5話

リストに家がある。

組み立て式の住宅やアパートのようなものもあるが、ほとんどは数字が書かれたままロックされており、俺が購入できるのは2つだけだ。

それはコンテナと小屋。

一番安いのはコンテナでできた家だ。


「これも等級制限がかかってるのか…」


以前イノシシを狩った時に、購入ボタンが非アクティブになっていた銃で見たのと同じだ。

ロックされている理由は、まさしく等級制限。

コンビ∞にはVIP等級というものがある。

物を購入したり販売したりするほどポイントが貯まり、そのポイントが一定値に達すると買える物品の種類と数が増えるのだ。


「この世界に合うものだけ、まずは買えるようになってるってことか…」


今、俺のVIP等級は0段階。

1段階まであと100万ブロンをさらに使わなければならない。


「それでも1段階はすぐに達成できそうだけど?」


一番安いコンテナハウスだけでも20万ブロン。

少なくとも人が住める場所と言えるのが小屋だが…


「ご…50万ブロン?」


日本円で換算すると約5百万円だ。

小屋一つに5百万円…完成品として出てくるならかなり安い方だが、万が一完成品ではなく材料として出てきた瞬間、しばらくの間、俺は商売を休んで家だけ作らなければならないだろう。


「(今持ってるお金が…)」


持っているお金は約11,000ブロン。


「これじゃあ、とてもじゃないけど足りないな…」


契約した石鹸とシャンプーを2ヶ月ほど納品して、ようやく小屋一つを買える程度だ。


「はぁ…しばらくはテント生活か…」


東京のように寒くはないが、今は冬だ。

それにここは森。

昨日は寝るにもかなり寒くて、寝ては起きるを繰り返した。

2ヶ月間、果たして耐えられるだろうか。


「とりあえず前借りしてコンテナだけでも買って配置しておくか…」


コンテナは生活費を含めると、1ヶ月ほど納品してようやく買える。

しかし、買って売れば半額、あるいはそれ以下に値下がりするコンビ∞らしく、一時的に住むためだけにコンテナを買うのはかなりの損だ。


「いっそ、しばらくは家賃を払うつもりでハンスさんの宿屋に泊まるか…」


多分それが一番良さそうだ。

宿屋に滞在していれば、たくさんの人に会えるだろうから。商売は人で回る。

その時にお金を稼げたら、小屋を建てよう。


***


納品を始めて5週間が過ぎ、今納品しているのがちょうど2ヶ月目だ。

残念ながら、俺が大口の顧客に出会うことはなかった。


「はぁ…」


それでも今回の納品で、小屋を買うお金が貯まる。

ついに家なし生活から家あり生活に変わるのだ。


ハンスさんの宿屋の近くへ行くと、人々がざわめく声が聞こえる。

宿屋の隣に集まっている一群の人々。

ほとんどが女性で、貴族の衣装を身につけた女性、質素な市民の衣装を身につけた女性など、様々な身分の女性たちが混じり合い、店が開くのを待っているようだった。


「何だろう?」


気になるけれど、今は納品が優先だ。

宿屋のドアを開けて中に入ると、ハンスさんの焦った声が聞こえた。


「やっと来たか!」

「え?」


メガンさんまで裸足で駆け出てきて、俺を掴んで引っ張った。


「どうしてこんなに遅かったんですか?!」

「俺が…遅れましたか?まだ6時ですが…?」

「都会の朝は早いんですよ。さあ、こちらへ」


メガンさんが俺を連れて1階のカウンター裏の部屋を通り、さらに別のドアを開けて中へ入った。

様々な棚が置かれていることから、ここは物を売る場所らしい。


「さあ、早く出してください」


メガンさんの頼みに、俺は持っていた石鹸とシャンプーを取り出した。


「優司さん、これらを陳列するのを手伝ってください。あなた!あなたも早く来て手伝って!」

「しかし私は宿屋を…」

「早く手伝わないの?!」


メガンさんの鬼のような目にトゲのある言葉で、ハンスさんはしっぽを巻いてちょこちょこ駆け寄り、棚に石鹸とシャンプーを陳列し始めた。


「どうしてこんなに急いでるんですか?」

「来る途中で外を見なかったんですか?」

「外というと…」

「今、シャンプーを買おうと外にすごい人が集まっているでしょう!」

「外で待ってる人たちが、シャンプーを買いに来た人たちだったんですか?」

「今、シャンプーが女性たちの間でどれほど話題になっていると思ってるんですか!」


シャンプーがそんなに良いものだろうか。

確かに、石鹸だけを使っていた人がシャンプーを一度使ったら、気が狂うほど良いと感じるだろう。


二人と一緒に陳列を終え、俺はドアの方へ歩いていった。


「それでは、俺はこれで…」

「どこへ行くつもり?」


今回も笑顔で腕を掴むメガンさん。


「な…なんですか?」

「売るのを手伝ってほしいのよ」

「俺がですか?」

「当然でしょう。人手が足りなければお互い助け合って生きていくべきでしょ?」


昨日、納品する物品を小分けにするのに腰が折れるかと思ったのに、今度は販売までしなければならないとは。


「さあ、それではオープンします〜」


メガンさんがゆっくりとドアの方へ歩いていき、ドアの鍵を外し、大きく開けた。


「皆さん、いらっしゃいませ〜。今からメガンのビューティーショップを開店しま…キャーッ!」


開くや否や、中に押し入ってくる人々。

彼女たちは皆、シャンプーのところに駆け寄り、棚の上のシャンプーを我先にと掴み始めた。


「早く会計してください!」

「これは私のよ!」

「予約でもしたんですか?!先に掴んだ人が持ち主でしょう!」


「(はぁ…疲れるな)」


押し寄せる大勢の人々がシャンプーを手に取る光景を見て、俺は深いため息をついた。


***


一騒動が終わり、日暮れになってようやく店は人一人いなくなり静になった。


「あ…本当に休みたい…」


会社で働いていた時とは全く違う種類の疲労にどっぷり浸かった。

もし俺が店を出すとしたら、こんな風に働かなければならないのだろうか。

店を出すことが急に悩み始めた。


「優司さん。お疲れ様でした」


メガンさんが山積みの硬貨を満足げに眺めながら俺に話しかける。

このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。


「俺の1日分の給料は?」

「日給?ああ…」


何か惜しそうに硬貨と俺を交互に見ていたメガンさんは、銀色の硬貨を5枚渡してくれた。


「今日、お疲れ様でしたから。はい、どうぞ」


100と書かれた銀色の硬貨を5枚受け取り、インベントリに入れると、俺の財産に5,000という数字が加わった。


「おお、思ったより気前がいいですね?」

「これくらい、どうってことないわ」


にこやかに笑いながら硬貨を大きな袋に入れたメガンさんは、カウンターの下に硬貨を置き、俺を見た。


「さあ、では次の話をしましょうか?」

「また何かあるんですか?」


今にも帰ろうとする俺を、再び引き止めるメガンさん。


「これが最後だから心配しないでくださいね〜」


俺はメガンさんが持ってきた椅子に座った。


「何ですか?」

「何って。契約延長よ」


残りの期間が1ヶ月になった時点で契約延長の話し合いが行われるのは当然のことだが、メガンさんが持ってきた書類。

それを読んで、俺は呆れて笑った。


「納品量が…2倍に増えてるんですが?」

「見たでしょう?ものすごく売れているのを。正直なところ、それよりももっと多く発注したいのですが、一人でされていることを考慮して決めたのですよ」


俺は決めた。


「申し訳ありませんが、契約延長はいたしません」


目を丸くしたメガンさんが俺を見つめる。


「どういうことですか?契約延長しないって?もしかして納品量のせいですか?もしそうなら、元の量に…」

「そうではなく、今日からしなければならないことができたので。それにメガンさんのおかげで、かなりお金も稼げたので、俺も以前のように屋台を作って商品を売ってみようかと考えています」

「ち…ちょっと待ってください。まさかシャンプーを売るつもりでは…ないですよね?」

「はい。石鹸もシャンプーも売るつもりはありません。他の商品を少し売ってみようかと考えているんです」

「例えば?」

「まだ正確に何を売るか決めていません」


メガンさんは何か考えているように虚空を眺め、爪を噛む。

しかし、すぐに深いため息をつくと、微笑んだ。


「まあ…別に商売をされるのであれば、私がこれ以上どうしてくれとは言えませんわね」

「申し訳ありません」

「申し訳ないなんて。もともと期間が3ヶ月だったのだから、そのまま終わっただけ。それに私もシャンプーを売ってずいぶん儲けましたから」


メガンさんは満足げに金袋を眺める。


「残りの期間は引き続き納品してくださいますよね?」

「はい。残りの1ヶ月間で準備して納品します」

「よろしくお願いします」


メガンさんは微笑んだ。

ハンスさんもそうだが、メガンさんも二人とも本当に良い人だ。


「これから商売をされるそうですが、もし商売に関して何か疑問があれば、遠慮なく聞いてくださいね」

「後で疑問が生じたら、一番に駆けつけます」

「ええ。もし私がいない場合は、夫に聞いてください。彼もああ見えて商人ギルドに加入している人間ですから」

「商人ギルドがあるんですか?」


俺の言葉が終わった瞬間、メガンさんの顔がこわばった。


「まさか…商人ギルドに加入せずに商売しようとしていたのですか?」

「はい、まあ…商人ギルドがあること自体、今知ったんですが」

「とんでもない!」


メガンさんは驚愕し、俺の肩を掴んだ。


「商売をする前に、必ず商人ギルドに行って加入してください。分かりましたね?」

「あ、はい…」

「本当にまだ見つかっていなくて幸いよ。見つかっていたら街から追放されていたわよ」

「ギルドに加入しないと追放されるんですか?」

「物を売る行為は、法的に商人ギルドに加入している者だけができることになっています」


メガンさんが何かを取り出して見せる。

それは俺が最初にこの街に到着した時、馬車の御者たちが警備兵に見せていた証票だ。


「これがまさに商人ギルドの証票。もし検問があった時にこれを持っていなければ、すぐに追放されてしまうから、気をつけてください」

「はい、分かりました」


おかげで良い事実を知った。

この世界にも事業者登録のようなものがあるのだということを。


俺はメガンさんに挨拶をして店外に出た。


「はぁ…一つやることが終われば、またやることが増えるな…」


小屋を建てるのが終わり、納品契約が終わろうとしているのに、またしても新しいやることができた。

人生とは本当にやる事の連続だ。

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