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第17話

第17話


「いくらでお考えですか?」

「900ブロンくらいで考えている。」

「900…ブロンですか?」


俺は、かなり高く言い過ぎたか。

ルーコンが信じられないという表情で俺を見つめている。

どうやら価格を少し下げないと…


「こんな発明品を、たったの900ブロンで売るんですか?!」


…じゃなくて、もっと高く言うべきだったのか!

俺が得られる価格に関する情報といえば、コンビ∞の価格だけだ。

コンビ∞で売られている懐中電灯の価格は400ブロンくらいだったので、2倍を少し超える価格の900ブロンで十分だろうと思った。

本来は1000ブロンで言おうとしたが、買ってもらえなかったらどうしようと思い、100ブロン下げて言ったのだが、この価格でそんなに驚くほどなら、どうやら1000ブロン以上を考えているに違いない。


こういう時は、俺の意見を押し通すより、この世界の現地人の話を聞くべきだ。


「お前なら、いくらくらいで売ればいいと思う?」


俺の言葉に少し悩んでいたルーコンの反応が、何かおかしい。

まるで俺が言った言葉の裏の意味でも理解したかのように、真剣な表情を浮かべて頷く。


「試しておられるのですね…私が、優司さんが売る品物の価値を理解しているかどうかを…」


‘試す?’


何の試験だ?

俺はただ聞いたただけなのに、どうやらルーコンはとんだ勘違いをしているようだ。


「そうじゃな…」

「承知いたしました。私がこの品物の価値を判断し、必ず優司様のご基準に達するようにいたします。」


ああ、好きにしろ。


「この懐中電灯の価値…」


髭も生えていないつるつるの顎を撫でながら、あちこち眺めていたルーコンは、熟考の末、やがて口を開いた。


「品物に使われている材質も初めて見るものですし、頑丈で、持ち運びやすいように小さく作られている上に、明るさまで松明やランタンよりも明るいので…私の考えでは、この品物の市場価格は、約5800ブロン!」

‘5…5800ブロン?’


俺が買った価格は400ブロン。

5800ブロンなら、約15倍の価格だ。

これは工場出荷価格を通り越して、完全に詐欺に近い価格。


‘このまま売っても大丈夫なのか…’


コンビ∞で購入した価格なので、誰かが俺の購入価格を確認できるはずはないが、なんだか詐欺をしているようで後味が悪い。


「いかがでしょうか?!」


正解を期待するかのような、輝く瞳。

これを違うと言うわけにもいかないし。

どうせ高く売れれば俺にとっても良いことだから…


「ま…まあな…」

「くぅぅっ!さすがは私です!トゥスカードギルドでもエリートの私が間違うはずがありません!」


悪いが、間違ってるぞ…


「では、まずはこちらで買い取る卸売価格を決めたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ああ。」


市場価格とは、文字通り品物を市場に出す時の価格だ。

それが5800ブロン。

しかし、市場価格で買い取って品物を市場価格で売るわけにはいかない。

企業も金を稼ぐためには、品物を大量に購入して一定の金額を割り引いてもらわなければならない。

それがまさに卸売価格だ。


「まず、優司様が卸売価格としていくらをお考えか、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

「俺が考えている卸売価格は…」


400ブロンで購入したので、卸売価格は600ブロンくらいを考えていた。

しかし、900ブロンで売る予定だった品物の価格が5800ブロンまで上がったのだから、卸売価格もそれくらい上げても問題ないだろう。


「きっぱりと4000ブロンでどうだ。」

「4000ブロン…確かに卸売価格としては適正な価格ですね。しかし、こちらで流通を担うことになると、人件費や運送費、税金など様々なことを考慮すると、これはそれほど安い方ではありません。」

「じゃあ、いくらくらいを望むんだ?」

「4000ブロンから500ブロンを引いた、3500ブロンくらいでお願いしたいです。」

「3500ブロンか…」


俺が提示した卸売価格から10%以上を引く価格だ。

俺にとってはこれもかなりの利益ではあるが、市場価格が5800ブロンであることを考えれば、かなり安く売ることになる。


「よし、3800ブロンで売ってやる。」

「3800ブロンでは、この品物を各地に送る馬車の費用や、品物の整理に使われる人件費などを考慮すると、利益がほとんど残りません。3500ブロンが難しいのであれば、せめて3600ブロンでお願いします!」

「お前が言った価格が5800ブロンだろう。3800ブロンなら、ほぼ40%を割り引く価格だ。これくらいあれば、馬車代だけでなく人件費まで十分に賄えると思うが。」

「商人ギルドを運営する上でかかる費用は、それだけではありません。この品物を売るためには、各国家で実施される検査も受けなければならず、その検査を受けてからもライセンスを維持するために毎月支払わなければならないお金があります。」

「それは俺の知ったことじゃない。トゥスカード商人ギルドがおれの品物を処理する代わりにおれに納品してほしいと言ったんだ。それは俺が考慮すべき対象じゃない。」


その言葉に、もはや言うことがなくなったのか、ルーコンが腕を組んで悩んでいる。

おそらく頭の中で、数多くの葛藤が渦巻いているだろう。

自分で価格帯を考えたとはいえ、市場で本当にこの品物がその価格で売れるかは、売ってみなければ分からないのだから。

特に、この製品を製造するのにかかる原価さえ知らない彼が、勝手に決めることはできないだろう。

もちろん、製造原価を教えることはできない。

なぜなら、俺も知らないからだ。


‘それでも、少しは譲歩してやるのがいいだろうな…’


最大限の利益を得る上で最も重要なのは、どこまでが相手の許容範囲かを見極めることだ。

3800ブロンで悩んでいるところを見ると、ルーコンの限界値は3800ブロンあたり。

俺もこの品物が売れなければ、国家で行う製品検査も受けなければならず、かなり面倒なことになる。

だから、ここでは限界値より少し下で提案するのが最も理想的だ。


「きっぱり3750ブロンにしよう。これ以上価格を下げようとするなら、俺もどうしようもない。」


俺の言葉に、ルーコンはじっくり考え込んだ後、深いため息をついて頷いた。


「分かりました。3750ブロンなら、おそらくマスターも問題ないとおっしゃるでしょう。」


一体ルアナさんは、どうやって価格を値切って仕入れているから、35%も割引された価格が、やっと「問題ない」価格になるのだろうか。


「では、代金をお支払い…したいところですが…」


ルーコンの表情が暗くなる。


「どうやら、この品物を全部買うのは難しそうです…」

「難しいって?」

「はい…優司様がどのくらいの価格の品物を売られるか分からなかったので、とりあえず持ってこられるだけは持ってきたのですが…納品される品物が3000ブロン以上になるとは思っていなくて…」


ルーコンが胸の内ポケットから小銭入れを取り出して見せる。


「これだけ多くの品物を買うには、お金が…」


小銭入れを受け取ってざっと数えてみると、約10万ブロンほど。

これくらいなら、30個と少し買えるくらいの価格だ。


「確かに、そうだな…」


俺が買った懐中電灯は200個だから、10万ブロンなら俺が投資した懐中電灯の価格を全て賄って、なお余りある。


「じゃあ、とりあえず10万ブロンだけ渡して、全部積んでいけ。」

「えっ?!本当にいいんですか?!」

「お前も、ルアナさんも、金をちょろまかすような性格には見えないからな。」


初対面の時も、自分が最も重要視するのは信頼だと言っていた。

そんな人間が、はした金のために、この世界に存在しない品物を納品する人間を切り捨てるはずがない。

もしルアナさんが俺の品物を持ち逃げしたら、その時から戦争の始まりだ。


「承知いたしました。優司様が私を信じてくださった以上、懐中電灯の納品代金は必ずお届けいたします!」


ルーコンが大きな決心でもしたかのように、真剣な顔で敬礼する。


「そんなことで、敬礼までするなよ。」

「そ…そうですか?」


ふっと笑って言う俺を見て、ルーコンが気まずそうに後頭部を掻く。


「さて、じゃあこの品物を積んでみる…か…?」


インベントリに懐中電灯の箱を入れようとした俺は、瞬間的に感じた違和感に、あたりを見回した。


いない。


「ルーコン、ルエリはどこだ?」


ルーコンと一緒に俺と懐中電灯を見ていたルエリが見当たらない。


「ルエリ?!」


慌てたルーコンが、あたりを見回して大声でルエリを呼んでみるが、反応は聞こえない。


もしやと思い、小屋の中に入って部屋の中を見てみたが、ルエリだけでなくハルも見当たらない。

つまり、ルエリがハルと一緒に行ったということだが、それはまだ幸いな状況だ。


「ハル!」


ハルを呼んでみても、返事は聞こえない。


「どうやら、森の中に入ってしまったようです!」

「あぁ、よりによってこんな時期に…」


かなり厄介だ。

今、周りにイノシシがいるなら問題ない。

単独で行動するし、ハルが三、四頭くらいは自分で仕留められるからだ。

しかし、最近このあたりで見かけるのは狼たちだ。

前だけを見て突進するイノシシとは違い、奴らはかなり素早い動きをする。

ハル一人ならまだしも、ルエリを守りながら戦うのは、ハルにも難しい。


「ルーコン、お前は狼を仕留められるか?」

「狼なら…一応、私も数頭は仕留められます!」

「じゃあ、こうしよう。俺は森の奥の方を探すから、お前は街の方へ向かって探してくれ。」

「しかし、そうなると優司様が危険に…!」

「俺は大丈夫だから、早く行ってくれ。」

「あ…分かりました!」


ルーコンが街の方向へ駆けていくのを確認し、俺は森の深い方へと歩いて行った。


‘何事もなければいいが…’


***


森の深いところへ入るほど、嫌な予感がした。

全身に鳥肌が立ち、体がこわばる。

今にも何かが飛び出してきそうで緊張している瞬間。


ガサッ。


瞬間的に聞こえた音に、音のした方へ石弓を構えた。


「はぁ…」


茂みから出てきたのは、ウサギ。

奴は俺を見るやいなや、素早い速さで逃げ始めた。


大声でルエリの名前を叫んで探したいが、そうすれば周りにいる狼が皆、俺に集まってくる可能性があるため、慎重にならざるを得ない。

石弓しかない俺に、大勢の狼が現れたら、それで終わりだ。


‘かといって、静かに探すには広すぎるが…’


何か良い方法はないだろうか。


‘とりあえず、ここがどこか確認してみるか…’


自分の位置を確認するためにマップを開いた。

その瞬間、俺は自分の目を疑った。


「これは…」


マップに4つの点が映っている。

一つは青い点。

それは今俺がいる位置に映っており、ウサギが行った方向には黄色い点が映っている。

俺がいる場所からかなり離れた場所に見える緑の点二つと、その周りを囲むように存在する数多くの赤い点。

俺は、この色たちが何を意味するのか知っている。


今までは一人、あるいはハルと一緒にこの周辺だけをうろついていたので、マップをあまり開いてみなかった。

特にハルが来てからは、イノシシ狩りはほとんどハルがやっていたので、俺は品物を売ったり、畑仕事をしたりすることに集中していた。

それで忘れていた。

マップに、敵と味方、中立が表示されることを。


そして、今マップに見える状況は、かなり危険だ。


「ちくしょう…!」


このまま駆けつけたところで、奴らがハルとルエリを攻撃する前に到着できるだろうか。

おそらく不可能だろう。

だから、狼たちが襲いかかってこないように、時間を稼ぐ方法を見つけなければならない。

そして、俺はどんな生物であれ、遠くからでも視線を引きつけられるものを持っている。

うまくいけば、逃げさせることもできる品物。


俺はインベントリを開き、取り出した品物を空へ向けて持ち上げた。

そして。


パンッー!


空高く舞い上がる一筋の光。

そして、それが爆発し、四方に光を放つ。

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