14."Jackpot Sad Boy Ⅵ"
清水が本当に来るなんておそらく誰も想像していなかった…………いや、隼人くんだけは「清水ならどうにかVIPルームに来る気せん?」と言っていたか。
「え………?
お前マジで来たん?」
全く、そんなことはなかったようだ。
「16000行ったから特例で戻れたんだよ!そんな嫌な目で見るんじゃねぇ!」
「しれっと和也の記録上回ってんのな…………まぁ流石にタキシードも入れたくなるか」
現在、隼人くんがぶっちぎりの最高額を更新してしまっており、当然だが清水に勝ち目は全くない。
清水は、和也さんが打っていた台に座りスロットを回し始める。
そして、それを遠くから眺めていると和也さんがこちらに寄ってきた。
「名前……なんやっけ? 隼人の彼女やんな?」
「違います!!」
「そんな勢いよく否定する事もないやろ……まぁ、その反応で大体察したけどな」
まるで友達の恋バナを聴いてウキウキルンルン状態の男子高校生と同じ目だ。
あくまで悪意はなく、単なる興味とある種の好奇心。純粋に恋バナをしたいだけの無邪気な目だ。
「まぁ…………気になってはいます。
自分で言うのもアレですけど、私顔はいいので。それなりに言い寄ってくる人もいるんです」
「学園のマドンナってやつ?まぁ、ああいうレベルになると無自覚系はもはや不自然まであるしこれを自分で言っちゃうのもしゃーないわな」
「でも、思春期なのもあってしょうがないんでしょうけど………けど………下心がすっごい人がやっぱり多くて…………」
和也さんの表情がかなり神妙な顔つきになる。
「まぁ、女の子目線の不快感ってのはやっぱあるんやろうなぁって思う反面、男ってそういう生き物やし諦めなあかんのちゃう?って思う部分もある…………」
あくまで学生や男子としての立場で相談に乗り、でも大人の余裕や俯瞰した意見が出てくる。
少し考えるようなそぶりを見せ、思い口を開いた和也さんは、迷った末に口を開いた。
「隼人もな、彼女がいたんよ。
アイツ……なんも言ってくれんかったけどさ、本気で酷い失恋やったんやろなって容易に想像できるよ」
「…………らしいですね。
私も細かい事情は知りませんが、かなりきてるみたいですよ」
和也さんは難しい顔をしながら唸る。
「まぁ、隼人のこと好きならさ……支えてやってぇや」
「ちょ、な……何を言ってるんですか!?」
「同意と見なすし、俺は黒崎ちゃんの事応援してるからさ。任せた!」
とんでもない人だ。
めちゃくちゃな事を言うだけ言って嵐のように去っていった。
去り際に和也さんが、
「詩穂ちゃんに連絡してみるか…………」
と何か言っていたように聞こえるが、気にしないことにした。
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僕はまた、スロットの並び打ちをしていた。
今回は清水がチャンスタイム。しかし僕はチップ差で大いに有利を作っている。
正直清水が僕に勝てるなんて微塵も思っていない。
「清水、今回は悪いけど僕勝つよ?
さっき大当たり引いたばっかりだし」
「いや………ごめん早速当たったわ」
清水、大当たり1回目。
第14話「ジャックポッドサッドボーイ Ⅵ」




