1."POTATO"
文化祭準備も順調に進んで、いよいよ文化祭まであと3日。
うちのクラスに、クラスTシャツが届いた。
ポテトの専門店、ということもあり「P」、「O」、「T」、「A」、「T」、「O」のどれかが印刷されたTシャツになっており、36人いるクラスなので割る6で「P」と「A」のTシャツを来ている人は6人なのだが、「O」と「T」は12人になっている。
まぁ、「そうしたらクラスで6つ余り無く『POTATO』を作れるじゃん」といった人がいたからこうなったのだが……
「うわぁどうしよ……」
クラスメイトが黒崎に渡したTシャツの字が「P」だったのだが……
それを持ってきたのが、メイド喫茶の案に唯一乗っかろうとした男……田口くんだったのも災いしてかものすごく不機嫌だ。
黒崎のスタイルがいいのは認める。
美人なのもわかる。
でも……
「田口ナイスゥ!」
「これで黒崎さんとおそろいじゃん!」
「しかも田口が選んだの「P」かよ!わかってんじゃ〜ん!」
田口軍を取り囲むように喜ぶ原田くん達。
やっぱりアイツらは好きになれない。初日から下心しか見えない発言をしていたのもあり……いや、それがなくてもこれ普通にヤバいだろって思う。
人によってはセクハラと感じる人もいるだろう。
「………………ッッ!!」
「黒崎! 落ち着いて!」
セクハラと受け取った黒崎は昨嫌〜なオーラが滲み出ていて今にも立ち上がって掴みかかりに行きそうなのでどうにか制止しながら気づく。
「黒崎が嫌なの……あぁいう連中か……確かにアレはヤバい……」
男子ですら嫌悪感を抱くのだ。女子がどう思うのかは分からないが僕より大きな嫌悪感を抱く人が多いのではないかと容易に想像できる。
僕が田口君から手渡されているTシャツは「A」だ。
加藤さん、佐々木さん、高田さんも「A」のTシャツを持っていて、残り2人も女子だ。
田口くんにそういう意図があるかどうかは置いておいて、「お前もかわいい女子とおそろいにしてやったから黙ってろよ」と言うメッセージとも受け取れる。
まぁ、クラスTシャツなんだからおそろいも何も基本的に同じなんだから気にすることはないっちゃないんだが……黒崎からすればそういう問題でもないだろう。
「僕このTシャツまだ着てないから、嫌じゃなければ黒崎のと交換しようか?」
正直、これが一番平和的だ。
黒崎も激怒していて、それを見た女子も田口くんや原田くんに怒りを募らせている。
黒崎をこのまま放置してどうなるか分からない今、黒崎をなだめて、女子にも「まぁ、大丈夫か」と思わせなければならない。
あそこの5人にどんな目を向けられるかは分からないが、いじめにしろ何にしろ僕に矛先が向くだけなら問題ない。
僕が辛い思いをするのには慣れたし、古傷を刺激されない限りはもう何も感じることはないだろう。
「いいの?」
目を輝かせながらこちらを見る黒崎に僕はまだ綺麗にたたまれたままのTシャツを差し出す。
「気持ちが分かる、とは言わないけど…………僕もアイツらは嫌いだし」
「ありがと」
黒崎から渡されたTシャツは、その怒りが原因か端っこのほうを強く、強く握りしめた跡がある。
帰ったら適当な理由付けて祥子にアイロンかけてもらおうか。
その前に、いつか黒崎をイジるネタにするために写真をこっそり撮っておいた。
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今日は文化祭3日前ということもあり、出来栄えを見たり、作っている各チームの主観だけになってしまわないように料理をしていない僕達を相手に試食会をすることになっていた。
細長いポテトと、太めの皮付きのポテトと、味付きの粉を入れるタイプのポテト(味付け済み)と、でっかいトルネードポテトと、網状になっているポテトと、ハッシュドポテトと、子供向けの顔の形をしたポテト………7種類が僕の皿に盛られていた。
ここにないってことは……重音ポテト没になったんだ……今からでも作ろうよ重音ポテト……
というネタ半分の感想は置いといて、ポテトを色々食べてみる。
「僕が関わらなくて正解だったかも……普通においしい」
「え、おいしい!」
ふと横を見たら黒崎がポテトを頬張っていたが、あれ……?
黒崎ってポテト作ってなかったか?
装飾班でもないし、生徒会との会議があれば清水が出席してきたはずだ。
そんな事を考えながら黒崎の皿をよく見れば……
「重音ポテト!?」僕の皿にはない。
ただ、僕が忘れられているわけではないのか、他の人のお皿にも盛られていない。
「黒崎さんはこの重音ポテト作って……グヴォア!!」
横から口を挟もうとした清水が思いっきり顔面にグーパンを食らっている。
まぁ、話に割って入ろうとしたのだから自業自得か。
殴られていたが里香ならギリギリ助けたけど……いや、助けるかな?
でも清水を助けようという気は1mmもない。一考の余地もない。
「いや、清水がこの前の話し合いの流れを話してくれた時に出てきてた重音ポテトだけど……重音●トを知らなかったから理解できなかったんだけどさ……」
「やっぱ陽キャ女子ってボカロ知らねぇのかな……グヴォア!!」
僕の足元に清水が転がっているが無視しておく。
あれ……?起き上がった。懲りるってことを知らないのかコイツは……
「音ゲーでやった曲とか聴いてみたりしてた延長で他のボカロ曲とかも聴いてみたりするといい曲も結構多いし最近ちょっとハマってて……」
「お、マジk……グヴォア!!」
もう一言も発することを許されない清水が僕の足元で痙攣しているが助ける気はない。自業自得だ。
「重音ポテトの元ネタ分かったからさ?
これ作れたら……隼人くん喜ぶんじゃないかなって思ってさ?」
「「「ブーーッッ!!」」」
黒崎が発したその一言をきっかけに、原田くんや田口くんなどが同時に飲んでいたジュースを吹き出した。
確かに、昔の僕なら本当に心の底から喜べただろうなと思う。
でも……今は…………
第1話「POTATO」
誰かあのニコニコしてるポテトの正式名称教えてください………




