7."Lending Encounters"
「ええっと……どうしたものか……」
僕は今、非常に困惑していた。
昨日貸したお金だが……清水くん、まさか忘れているのではないかという疑惑が浮上し始めた。
事の発端は10分前。
彼が登校してきてすぐのことだ。
「ふわぁ……ねっむ……なんかカフェイン……コーヒー買いに行くか」
と、財布を握りしめてコーヒーを買いに行ってしばらくすると戻ってきたのだが………
帰ってきて15分ほど経つ今も僕にお金を返す気配はない。
財布を見ればふと思い出すかなぁ……と思い、自販機から帰ってきたたお金を返してくれるのではと期待していたのだがそれも怪しそうだ。
かと言って「金返せ」ってわざわざ言いに行くのもなぁ……
後5分でホームルームだし……タイミング見失ったり僕自身が忘れてしまわないうちに聞いた方がいいし……うぅん……
「どしたの? 珍しく難しいこと考えてそうな顔して」
たった今教室に入ってきた黒崎にとんでもなく失礼なことを言われたような気がしたが、
「え? そんな顔してた?」と、そっちが勝ってしまった。
「いや……昨日食堂で、清水くんに500円貸したんだけどさ」
1秒ほど天井を見つめた黒崎はハッとしたように、
「あぁ〜! 確かに貸してたね。
私が席つく5秒前ぐらいにやってたの見たよ。500円なのは知らなかったけど」
「で、明日返すって昨日言われたから今日返ってくるはずなんだけど……覚えてるか怪しそうだけど催促しに行くのも何というか気が進まなくて………」
金返せ、と朝一番に言いに行くのは自分も相手もいい気がしない……と思う。
それに僕の印象もあまり良くないものになってしまうと思う。
「あぁ〜そりゃ確かに言いにくいやつだね……」
黒崎も苦笑を浮かべていた。
しかしその会話が聞こえていたか、「……ッ!? ヤッベ忘れてたぁ!!」と言い出して清水くんが財布の中身を数え始める。
黒崎は『ま、もう大丈夫じゃない?』的な視線を向けてきた。
『そうだね。きっともう大丈夫』的な返しを………伝わってるかはわからないがしてみた。
「あ……終わったぁ……」
僕たちは清水くんのその一言に、とても不穏な雰囲気を感じた。
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「……さてはとんでもないドアホか?」
自販機にコーヒーを買いに行くまでは500円玉があった……いや、500円だけならかろうじてあったという清水くん……いや、清水。
170円が溶けて現在330円しか所持金がない金欠クソ野郎は「大変申し訳ないッ!!」と土下座し始めたが……
「次500円集まりそうな時っていつなの?」
まずはそこだ。
今返せないというのはわかった。僕は借金取りではないので「今返せっつってんだよ」なんて言ったりはしない。
ただ、いつ返せるのか、いつお金が入るのか、などは聞いておかねばならない。
「ええと……5月の分のお小遣いはゴールデンウィークでほぼなくなっちゃってて……6月1日にもらえる分も前借りしちゃってるから……文化祭終わった2週間後の期末テスト終わるまでは……」
7月1日はテスト2週間前だから、彼の親もその時期に金を渡すのは嫌だったのだろうか。
テストが終わるのは17日……まだ5月25日なのだが……
「じゃあ、その日になったら必ず! か! な! ら! ず!
隼人くんに500円返しなよ?」
いつもの笑顔と声のはずなのにどこか圧を感じる話し方で清水に金を返す約束をさせた。
紙で何か書かせようとしてたけどそれは僕が止めた。
そしてその後、「ここにいる私が隼人くんの証人になってあげるから! 安心してね」と言ってくれた。本当に頼もしいし心の底から安心できる。
というか、ゴールデンウィークでお小遣い2ヶ月分溶けたのか……
僕もお小遣いは和也からもらっているが大半は貯金に回している。
スピーカーやパソコンは元をたどれば和也のもので今はそれを借りパクしている状態である。
パソコンは、もととも和也が自作したものだったのだが勝手にパーツを付け替えてスペックは今店で2桁万円後半で売っているようなお高いものと変わらないものになっている。
ただ、僕が買ったのは合計5万円もしないパーツだったためお年玉だけで賄えた。
ポケ●ンをするために使っている昔の入手困難なハードや、ラノベにマンガ、アマ●ラのアカウントも和也のものをこれまた借りパクしているのだが……
頻繁に行くわけでもないゲーセンでしか金を使わない僕は金欠の人の気持はあまりわからないが………
清水の金遣いが荒いことだけは間違いなくわかる。
「とんでもないヤツに金貸しちゃったな……」
「500円……先に私が渡そうか?私があとから清水から貰えば大丈夫だし」
と、黒崎が気遣いをしてくれたがさすがに申し訳ない。
「いや、大丈夫だよ。後で僕がしっかり貰うから」
第7話「貸し出した出会い」




