6."Well, it happens."
ーーーピピピピピッと、アラームの高い音がする。
朝6時半。
「寝落ち……してたか」
パソコンの前においてある椅子で寝落ちしていたらしい。
僕はすぐさまアラームを止めて動き出す。
僕は割と朝には強い方だ。
朝に強いというより、眠れないだけなので夜に弱いという意味のわからない表現の方が相応しいとすら思えるのだが。
部屋から出て朝ごはんの準備を始める。
と言っても、インスタントコーヒーを入れて、棚からパンを取り出すだけなので大したことをしているつもりはない。
とりあえずポットにお湯を入れて沸かし始める。
和也は今日まだ起きてきていない。
おそらく今日も在宅ワークをするつもりなのだろう。出勤しない日は僕が家を出る7時半ごろに起きているなんてザラにある話だ。
里香は……起きる気がなさそうだな。
ピピピピピ、とけたたましくアラームが鳴っているのには全く構わず爆睡しているご様子だ。控えめに言うとかなりうるさい。
こいつは僕とは真逆で朝に弱すぎる。毎朝俺が起こしてギリギリに起きているが中学の時まではどうしていたのだろうか。
お湯が沸く前に叩き起こしに行こう。
部屋の扉をノックし、「おーい、里香ー! 起きろー! アラームうるさいねん!」
と大きな声で10回ほど読んでみるが返事はない。
「お〜い! 入るで?」
こういう場合は言ったら怒られるのだが、起こさなければ起こさなかったで怒られるのでもうどうでもいい。
ドアを開けるとベッドから体の大部分が落ちていて、頭がもうすぐ落ちるか落ちないかの瀬戸際みたいなところまで来ていた。
「相変わらずとんでもない寝相やなこいつ……」
ほんとに首がどうにかなりそうな寝相を見てため息を吐いた後、スリッパを履いたまま何度か軽く蹴る。
「うぅ〜ん? %*‘)&$!!」
寝言なのか起きているのかよくわからないのでもう一発割と強めに蹴ってみると、
「うわ!? もう…………勝手に入らんといてって…………」
「そう言うなら外からノックして呼びかけてる段階で起きぃや」
里香の部屋から出て、そろそろお湯も沸いているだろうと思ったその頃。
「そういえば祥子まだ寝てるやん……珍しいな」
いつもこのぐらいの時間になると祥子は僕と里香のためにお弁当を作ってくれていて、もうとっくに起きているはずの時間なのだが珍しい。
僕は祥子の部屋をノックして
「祥子〜? もしかして体調悪い?」
そう僕が問いかけたら、ドタバタと部屋の中で音がした。
「ごめん寝坊したッ! あとでお金渡すし今日は食堂で食べて来て!! 」
と言う声が聞こえてきたので少なくとも体調が悪いとかではなさそうで安心した。体調不良だと………和也だけではあまりにも頼りなさすぎるからどうしたものかと困っていたところだ。
僕が体調が悪くなった時、祥子は前から入っていた外せない大事な仕事があってどうしても家を空けなければならないということがあった。
その時和也は冷凍うどんを解凍して適当に麺つゆや天かすを乗せたりして僕に出してくれた。
ただ、その時和也が解凍したうどんなのだが………「裏に書いてあった表示時間通りにやった」という供述が真実とは思いにくいほどに、時々氷の塊が浮いていたりした。
さらに、僕が咳き込んでいて喉を潤した方が良いと言い持ってきた飲み物はお茶。
しかしこれが困ったことに、冷蔵庫に常に入っている麦茶をタイミング悪く切らしていた為、この前誰かに何かのタイミングでもらったお茶がある!と思い出した和也が淹れたのはまさかの玉露。
すごい量のカフェインをとってもちろん眠れるわけもなく。
数時間、眠れなくて辛いという状況に陥ったりもしたほどだ。
その時僕は小学生だったので、和也はとても心配だったのだろう。つきっきりで面倒を見てくれた。
決して和也に悪気があったわけではないとわかっているし、和也なりに気を遣って色々行動していたのだと思うが………そういう時に裏目に出た行動というのが1番怖かったりする。
そんなことを考えているうちに朝ごはんも食べ終わり、僕は部屋に戻って制服に着替え始める。
祥子にお金を1000円もらった。「お詫びっていうかなんていうか……お釣りはあげるから」と俺と里香に平謝りしていたが別に僕は気にしていない。
正直、ご飯なんて食べればいいと思うレベルご飯に頓着がない。
休日なんかは朝も昼も食べないなんてこともあるし、とりあえず空腹を凌ぐための手段として食事をとっているが極論点滴で一生を過ごすのも僕はありだと思っている。
味を感じない、というわけではないので特段不味いものは無理だが………
まぁ、500円は手元に残るだろうし僕にとっては得でしかないからむしろありがたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「祥子ちゃんが寝坊なんて珍しいよな。いつも誰よりも早く起きてんのに」
「毎日寝坊気味な里香とは正反対やな……まぁ、確かに祥子にしては珍しいけどまぁたまにはそういうのもあるやろ。しゃーないしゃーない」
昼休み。
僕たちは食堂に来ていた。
とりあえずご飯を受け取ったら黒崎達と合流する予定になっている。
里香が何にするか長時間悩みそうなので僕は先に焼き魚定食を頼んで会計を済ませると、先に6人分の席を確保しておく。
すると、「あ、小林くん!」清水くんがやってきた。
「あのさぁ……財布家に忘れちゃって……食堂て食べるつもりだったから弁当ももちろん持ってなくてさ……明日絶対に返すしお金貸してくんない?」
「え?まぁいいけど」
僕は500円の臨時収入を得ているのでその500円を貸す分には全然問題はない。
ただし、返ってくるならの話だ。
まぁ清水くんは学級委員だし、普段から真面目そうなイメージで悪い印象なんてない。
まぁ、明日返してもらえるなら………
「まぁいいよ」
これが全ての始まりだった。
第6話「まぁそんなこともあるだろ」




