3."Floating nightmares"
「終わった……確実に終わった……まともな点を取れた気がしない……」
テスト最終日。
最後のテストが終わった瞬間僕は机に突っ伏した。
頑張ったつもりだったが結局ダメだったっぽい。
こんな絶望を突きつけられてからも尚、LHRという地獄に連れて行かれるのだ。
うちの高校はなんと文化祭を6月下旬に行う。
基本的に秋が多いイメージだがここは例外らしい。
今日のLHRはなんと文化祭でやる出し物を決める話し合いだ。
こういう話し合いの場は、本当に嫌いだ。
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「え〜、じゃあ文化祭でやる出し物、考えてきたやついるか〜?」
1週間前に担任の青山先生に、「文化祭の出し物を決めるから案を考えとけよ」と言われていたので一応考えてきてはいる。
今回僕たちは教室を使って店を出店する。
他のクラスと被っているか、予算がかかりすぎる、あるいはあまりにも学校でやるにはふさわしくないものをやろうとしている場合を除いて基本的に申請すれば案は通るらしい。
ーーザッと、一斉に手が上がった。そしていろんな提案が出てきた。
1つは、クラスの大食い男が提案したたこ焼き屋。
1つは、陽キャグループの1人お化け屋敷。
1つは、出店の闇の深さを表現する射的。
1つは、少し暑くなり始める季節にはピッタリなかき氷。
1つは、豪華景品が当たるのかと思わせて「置いてあるだけで景品ではないですよ?これが当たるとも言ってませんし」と言うもはや詐欺まがいのくじ。
1つは、あんこはもちろん、カスタードや変わり種も入れるたい焼き。
1つは、歩きながら簡単につまめるメリットがある唐揚げ串、もしくはホットスナック全般を扱う店。
1つは、オタク女子が鼻息を荒くしながら提案したメイド喫茶。
たこ焼きやたい焼きは作る技術を得るのが難しいことから却下。
お化け屋敷は教室に作るセットや壁、さらにお化け役の衣装などが予算で足りない可能性が高いことから却下。
射的とくじは、案が出た段階で真面目ちゃんが甲高い声を上げて否定した。
かき氷は、たった今明かされた「食べ物で出店するなら加熱処理をしたものでないといけない」という衛生観点上のルールから一応アウト。
メイド喫茶は、同じくオタクな男子の熱い熱い賛同はあったが、大半の女子が全力で拒否。
ホットスナック系の店は、いくつもは無理かもしれないが2、3個に絞ればできなくはないかもしれないという結論に至った。
しかし、そんな会話をして盛り上がっていっていくうちにクラス内の話し声は多くなり1人1人の声も大きくなりかなりうるさくなっていた。
「ゔぅ……うるさい……」
僕は騒音と人混みがかなり苦手だ。
ゲーセンに行くときでさえ、m●imaiの媒体にあるイヤホンジャックに中継機を挿して無線のノイキャン付きヘッドホンを付けてやらないと無理というレベルで、周りがガヤガヤしているのが苦手だ。
R●UND1はかなりマシだった。
正直、ヘッドホンがないとまずいかと思っていたがR●UND1ではどうにかヘッドホン無しで済んだという感じなのだが……
「高校生でもやっぱこうなるかぁ……」
誤解を恐れず言葉を選ばずに言うと、猿のように騒いでいる。
もちろん全員がそうと言いたいわけではない。
学級委員の黒崎さんと清水くんは割と静かだし、なんなら止めようとしてくれている。
ただ、他の男子のほとんどはとてもうるさく騒いでいるし、女子も女子で各々好きなように私語のオンパレード。
「ゔぅ……」
頭痛い……と思いながら耳を塞いで伏せる。
去年はクラスに里香がいたからどうにか助けてもらえた。
事前にこうなることが分かっていれば里香も対処はしやすかっただろう。
ただ黒崎さんは僕のことを知らない。
頭は痛いし、耳塞いだままだと会話はできないが耳を塞がないわけにも行かない。
どうしよう……と思った瞬間黒崎さんが僕の肩を叩く。
耳を塞いだままでも意思疎通ができるよう図ってくれたのだろう。
『こういう空気苦手なの?頭、痛そうにしてるけど大丈夫?』
と書いたメモ用紙を見せてくれた。
「無理無理!! 助けて!」という視線とともに首を横に振ってみると、黒崎さんはメモにペンで何か書き足している。
見せられた紙には『なら、ついてきて』と書かれており、どうやら僕をどこかしらに連れ出すつもりらしい。
黒崎さんは先生に声を掛けると、僕の肩を叩き、袖を引っ張る。
来て、という意味なのだろう。
立ち上がった僕は黒崎さんに促されるまま外へ出る。
第3話「浮かれた悪夢」




