2."For some people, this would be hell."
僕の頭の悪さが露呈したところで、黒崎さん、加藤さん、佐々木さん、高田さん、そして里香が合流し、勉強会がスタートした。
黒崎さんと里香はかなり頭が良い成績優秀者で、
加藤さんと佐々木さんも2人には及ばずともそこそこできる方。
高田さんは「ヤバい……ほんとにヤバい」と焦っている様子。
僕は、「まぁ、隼っちは論外か……」と言われるレベルには頭が悪い。
「私が隼人くんに教えるし、里香は伺奈に勉強教えてあげて〜
ヤバいヤバいって言ってるけど教えてあげたらすぐできそうだし」
その一言で、僕は凍りついた。
正直、高田さんは頭が悪いのかと思ってたし同類だと思っていた。
多分……いや、確実に僕よりは頭がいい。
「じゃ、あーしらはお互い苦手なとことか潰そっか」
「それでいいんじゃない?得意不得意がキレイに正反対だし」
加藤さんと佐々木さんはそういう感じで勉強を開始した。
うわぁ……これ確実に後で追い出される感じでは?
決して、黒崎さんがひどい人だと言いたいわけではない。
ただ、僕に勉強を教えるという塾講師ですら投げ出すような難題をこなせと少し頭が良いだけの女子高生に頼むのは酷すぎるという話だ。
「じゃあ隼人くん、数学だよね。どこがわかんないの?」
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勉強開始からだいたい1時間半は経ったのだろうか。
もうその段階で黒崎さんはすごいと思う。
ただ……
「えっと……?−3x−4✕1(4x−6)≧0だから……()の中かけて……−3x−4✕4x−6≧0になって……」
「……ん???」
分配法則……だったかなんだったか……
()の左にある数字を()の中にかける……みたいなのがあったはずだ。
だから僕は1を(4x-6)にかけたのだ。
「1かけても変わんないじゃん……4を1にかけてからだよ……?」
「え?いや……ほら、()の前にあるのって1だしさ」
「あーーえっとね……?」
小林隼人という人間をアホたらしめているその所以は、本質を理解していないという部分である。
今回も、分配法則というものがある方は理解していてもその本質を理解していなかったせいでまともに計算ができていない。
数学に限らず、ルールを理解していないせいで行き詰まることが多々あるのだが………もちろんその理由は僕が授業で爆睡しているからだ。
受験生だった頃は放課後割とすぐに自習室に向かっていたため、夜になって帰ってからはご飯を食べて風呂に入って、そこから遊ぶ時間に使っていても自習室でのリカバリーができていたが……
今は帰ってからずっと勉強せずに夜まで遊んでいる。
というのも、夜に早く寝るという習慣がなかった僕にとって夜中に何もしないというのはなかなか落ち着かないもので………
「授業聞かないといけないのは分かるし、寝ようとして寝てるわけではないんだけどなぁ……」
中学校には、「学校で寝てなんぼや」とかほざいてたクソ野郎も居たが僕はそんなふうには思っていない。
寝なければこんなふうなアホには育たなかっただろうし。
「なんだ、学校で睡眠時間稼いでるタイプの人かと思ってたけど………違うならウトウトしてたり、寝てたりしてるのを見つけたら起こしてあげる」
「いいの?ありかとう」
これはかなり助かる。
起こしてもらえればかなり授業に集中できるだろう。
「で、分配法則だけどね?」
そして勉強会は続き、最終下校時刻である19時ギリギリまで僕達は学校にいて勉強していた。
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「黒崎さん……今日はありがとう」
里香は地獄と表現したこともある僕に勉強を教えるという苦行をかなりの時間させたわけだ。
そして僕が授業中に寝たら起こす、という割と長期的なお願いまでしてしまった。
「ううん。今回のテスト範囲割と簡単だから私はそこまで勉強するつもりはなかったけど隼人くんに教えてるうちにテスト範囲以外のとこも復習になったから」
悪気がないのはわかっている。
ただ、勉強する気になかった人にテスト範囲以外も勉強させたということになるのでは?
「とりあえず今日教えてもらったとこは自分で復習すればどうにかなりそう………ありがとう」
「うん!あ、お礼っていうかなんていうか……テスト終わったら音ゲーの練習付き合って!ゲーセンでm●imaiやろ!」
確かそんな話もあったなぁ
「わかった。ただし音ゲーやるなら長時間ゲーセンに居座って金が溶けること覚悟しといてよ?」
「分かってるよ〜じゃあまた明日ね」
黒崎さんは俺に向かってそう言うと嬉しそうに微笑んだ。
「うん、また明日」
第2話「人によってはこれは地獄だろう」




