1."Despair is sudden"
「来週は中間テストだぞ〜まさか勉強してないなんて奴はいないだろうな〜?」
ゴールデンウィークが明けて、目を背けていた事実を突きつけられた。
テスト勉強………今までは夏菜子の手を借りていたが今後はそうもいかなくなる。
かと言って、僕が真面目に授業を受けたのかと聞かれればそうではない。
ただ、僕には頼もしい味方がいる。
あの自由奔放で破天荒な同居人だが、あれでいて成績はそこそこいい方だ。
「帰ったら色々勉強教えて」と、HRが終わってすぐにメッセージを飛ばしたが、それを見越していたのだろうか。
送った瞬間に既読が付き、「絶対に無理。隼っちに勉強教えるのはとてつもなくしんどいし」と音速で返信が返ってきた。
危うく、よくわかってるじゃないか、と返しそうになった。
夏菜子はあの地獄のテスト勉強に手伝ってくれたが、あれは夏菜子が優しすぎたのだ。
僕は授業の大半を理解していないのでテスト前のたった1週間で、それまでの1〜2ヶ月前後の授業内容を全て把握する必要ある上、僕のとんでもないアホさ加減も相まって教えるのに必要な労力は計り知れないのだ。
僕が夏菜子に出会う前に一度頼んだことはあるのだが、1時間もしないうちに「だめや……隼っちが絶望的にアホすぎる……」と投げ出されたのを覚えている。
自習室で、夏菜子に会う前に先生に質問した時は、「ん?あ〜え〜っと? どう説明すれば伝わるんや……? まぁ、とりあえずもっかい自力で頑張ってみたらええんちゃう?」と、プロでさえ匙を投げた。
そういうレベルなので、僕に勉強を教えてくれる心優しい人物に心当たりは一切ない。
もはや諦めの境地に達した僕は「終わった……」と思わず声を漏らす。
それを真横で見ていた黒崎さんは、僕のその姿を見かねたのか「今日、放課後みんなで勉強会やるけど来る?」と誘ってくれた。
「お世話になります……」と言いながら、僕は静かに頷いた。
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まぁ1時間ほど持てば良い方だろうと思いながら、僕は図書室にやってきた。
放課後の図書室はびっくりするほど人がいない。
唯一そこにいた図書委員の人ですら、カウンターに足を乗せながらマンガを読んでいるという状況だ。
普段から人が全く来ていないというその状況が丸わかりだ。
まぁまぁデカい机があったので適当に座り、とりあえず何を勉強するか考える。
国語と英語は正直教科書を読んでおけばどうとでもなるので前日に追い込むだけで大丈夫だ。
化学と公共は暗記しなければならない……後でやろう。
まぁこうなったらやらない未来しか見えないが。
法則も解き方も何もかもわからない数学は場合によってはこのままだと0点になりかねない。
化学や公共はどうにか書けそうな部分というのはどこかしらにはある。
それとは違いやり方がわからなければどうやっても解けない数学はどうあがいても対処のしようが無い。
「とりあえず、やらないと詰む。」
そう思い、意を決して開いたワークだが……
「1ページ目からわかんないとかある?」
自分で自分に絶望した。
これなら里香も1時間であきらめたのも納得だ。
夏菜子にも、すごく迷惑をかけただろう。かなり反省します。
教科書を見ながら45分ほどかけてどうにか1ページ目を終わらせた辺りで、
「あ、やっぱり隼人くんいた〜!お待たせ〜」
そりゃ呼ばれたんだからいないほうがおかしいでしょっていうツッコミはグッと堪えて、
「いや、大丈夫だよ……ワークやってたからそこまで待ってたっていう感じはしないし」
「隼っち……多分やけど遊んでたわけじゃなくて、真剣にその進度なんやんな?」
勉強しようと思っても横でアニメを流していてそっちに目がいってたとか、ガッツリとコントローラーを握ってポケ●ンやってたり、キーボードを叩いてDisc●rdに入り浸っていたり……
そんなことは割としょっちゅうなのだが今回は何も触っていなかった。
「うん……教科書見ながらやっとのことで1ページの解答と俺の答えが一致した。」
「ちなみに、そこまでかかった時間はどんぐらいなん?」
里香はわかっている。
僕がとてつもなくバカな事を。
「え〜っと……約30分、かな。」
「まだマシな方か〜」
「「「「マシなんだ!?」」」」
四捨五入してこれだ。
切り捨てという文化は素晴らしいと思う。
43分なんて言ったらどんな反応をされたかわかったもんじゃない。
第1話「突然現れる絶望」




