1. "suicidal desire"
僕、小林隼人は、本当にダメかもしれない。
今日は本当にそう思った日だった。
中学2年生。ちょうど2学期の中間テストが終わったあたりの10月中旬。
僕は本当に、自殺しようか悩んでいる。
まぁ、自殺すると決めてもどうせヘタれて自殺未遂に終わるだけだろうけど。
小学1年生から今まで7年半ほどいじめられる続けているのだが、たった1人親友と呼べる男がいた。
彼は学校の雰囲気が苦手で不登校気味だったのだが、最近少しずつ授業に出れるようになってきていたのだ。
まぁ、途中で授業を抜けてしまうこともあったがそれはみんな咎めていなかった。
なのに理解のない先生が突然叱責してしまい、その先生の強すぎる圧に呑まれて僕は何もできなかった。
その後はどこを探しても彼の姿もカバンも見つからなかったから帰ってしまったのだろう。
本当にやってしまった、という責任とは別にもう一つ大きな後悔があるのだ。
小学校の時にも似たようなことがあり、「今度こそはしっかり止める」と決めたはずなのにこのザマだ。
「ハァ………結局悟は守れんかったか………」
僕は自販機に金を入れて何か飲み物を買おうと飲み物を選び始めることにした。
いくら自分が勉強も運動も親友を守ることもできない能無しでも塾はサボれない。
自殺できればいいのだが、自殺に失敗すればただのサボり魔になる。
せめて自殺するなら塾の帰りだ。
そう思って、今日を乗り切るために飲み物を飲んでせめて気分を軽くしようと思ったが………
「なにこれ…………焼き芋茶漬け?米入りとか書いてあるし絶対マズイやん………でも少し気になるな」
意味不明な飲み物に惹かれ、ボタンを押してしまう。
「なんか2本落ちてきたし………もらっていいのかこれ……って……え!?冷た………自販機壊れてるやん………」
『あったか〜い』の表示に騙された。もういい。とりあえず自習室へ向かおう。
授業は無いが、ある程度自習室に通うことが義務付けられているうちの塾はお菓子や飲み物の持ち込みはある程度黙認されており、しっかり勉強するならそれでいいというスタンスらしい。
わけのわからない飲み物をもち、自習室に入る。
「あ、隼人〜」
小声で僕を呼ぶ声がした。
隣の席がちょうど空いている。そこに座った。
「これ、自販機バグって2本出てきたんやけどいる?」
と、隣にいた少女に声を掛けるが
「こんな激マズ決定な飲みもんいらんわ。お前が1人で飲め〜」
と、一蹴された。
「で、今日はどこがわからんの?ここ来たってことはどーせ何かわからんかったんやろ?」
「ゔ………一応僕年上なんやけど?」
この少女は三嶋夏菜子。僕のことを舐め腐ってる中学1年生で、
僕は一応中学2年生のはずだ。
夏菜子は私立中学に通っておりなぜか僕の勉強している範囲の少し先まで勉強している。しかも地頭が良い。
「年上やって主張するならこんぐらい解けてくれって思う事が多々あるけど?」
勉強を教えてもらった時に少し話していたら、アニメやゲームなどの趣味が驚くほど一致していて意気投合し仲良くなった。
そして、頭の悪い僕に毎回のように勉強を教えてくれている。
「え〜っと、証明できなさすぎて泣きそうなんやけど………助けて?」
「年上なんやけど?って言った5秒後に出るセリフそれなんが信じられへんわ………まぁいいけど」
ーーー全く反論できない。
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勉強を始めて1時間半ほど経ったあたりだろうか。
「なぁ隼人?なんか今日変やで?なんかあったやろ」
気付かれた。
あまり夏菜子にはバレないようにしていたつもりなんだけどバレていたようだ。
「バレないようにしてたつもり………なんやろうけど残念。バレました〜」
夏菜子になら、話しても笑われないだろう。
夏菜子は僕を舐めているように見えるが本来はある程度信頼してくれていて、だからこそこういう風に砕けて接してくれているのだろうから。
まぁ出会った当初やっている勉強の範囲が近くて同級生だと思っていたのもあるが。
「じゃあ………話、聞いてくれる?あ、このページ終わったら。」
「んん〜まぁいいよ?なんか珍しく死にそうな顔してるし」
死にたいことまでバレていたようだ。
第1話「自●願望」