素寒貧の天仙に施しを
闖入者を退場させた午後のおやつ時
さちえさんに良く通う和菓子屋の新作まんじゅうと渋めのお茶を出して台所で無心で包丁を研いでいた俺は外から鳥たちのけたたましい鳴き声と共に羽ばたく音で無意識に警戒態勢をとった
(何か解らんが此方に来る)
勘だが覚った俺は玄関口の方に研ぎ終えた包丁を構える「は‥せ‥はっ‥せ、ん、、、」
扉の向こうでは聞き慣れた声が弱々しく俺の名を呼ぶこれは‥玄関を開けると師父の悪友で真面目に修行して天仙に登り詰めた美さんの姿が
「どうしたのですか!?そんなやつれて外傷はみたところありませんが取り敢えず人参果入ります?」
人参果は美容を保つ目的で人間界では時の皇后が血眼になって探した代物
まあ確かに美容効果あるが3日分の食事や水分量を含んだ超回復できる代物、見た目は赤ん坊か苦悶の表情を浮かべた人の顔みたいでグロテスクだが
味も美味。数千年に一度下界で採集できる貴重なものだが、仙界では桃源郷の彼方此方で収穫される。
特に此処30年の間に大量生産出来るようになったとか
「いや‥酒はないかのう?暫く里帰りしておったのだが説教と路銀を没収されてしまってな。此方に戻るまで断酒、素寒貧ときた種銭もなけりゃあ博打はおろか金を錬成する材料も揃えられぬときた‥それに帰ってみたら担当の山の警備と管理を任され、挙げ句の果てには私がハマっているMMOで推しの新作ガチャが出るときたこれは蓄え遣ってでも天井迄回すしかなかろう?」
「‥‥あんたそんなんではまた邪仙に戻りますよ?というか里帰りということは大陸に渡っていたのですか?説教と路銀没収は日頃の行いと汐小姐が来日した時で筒抜けになったのしょうなあ」
ハアッ‥なんでこの人本気出せば凄いのに堕落しちゃうかなあ嗚呼そうか本気出せば直ぐに成果を出すから堕落しちゃうのか
「取り敢えず八仙、少し酒を‥あ、あと二万円程貸してくれまいか?倍にして返す!」
そらあ倍どころかそれ以上返せるから美さんは信用できるし貸しても良いんだけども‥
「因みに師父の件について‥」
「嗚呼!勿論知っておるぞあやつの追っていた件がまさか弟子のお前が解決するとはなあ!私も八仙の処にフォローにと奴に云われてな馳せ参じたんじゃ!」
「俺をフォローする前に美さんのフォローを押し付けられたような感じなのですが?」
そう苦い顔するでない~なんてほざくこの博打狂いのアル中仙人どうしようか‥
「では丁度近所の酒屋で上物を安く手に入れたので差し上げますが、できればそのフォローという言葉通り俺の手伝いを引き受けて頂けましたら金も倍にして返さなくて良いので手伝って下さりますか?」
「のった!なんぞ八仙欲がないのう暫く見ぬうちに煩悩を取り払ったのか?成長したのう!」
やはりこの案のったか‥
「いえいえ煩悩は無くなりませんよ最近個人でやっている薬師としての仕事時の調合で不足しているものがありまして顧客の依頼が中々遂行できずにおりまして、美さんちょっと桃源郷でこのリストに書いたものを調達してきて欲しいのですよ」
仙界、桃源郷は俺独りでは中々行けないし師父や美さん同行でも審査が必要な為丁度良い
「成る程?それくらい御安い御用じゃしかし先に一杯飲ませてくれんかのう?」
上目遣いで頼むアル中ええいまどろっこしい!
「‥水筒にいれておきますのでこれは前払いと言うことで」部員が使う大きな水筒に酒を注ぎ依頼のメモを付けて渡す
「クフフッ解っておるではないかうむ確かに受け取ったでは行ってくる!」
まるで疾風の如く2階から1階へ駆け降りて行く美さんを見送る俺
(近所迷惑になるから
隠形の術くらい使って貰いたかったなあ‥)
隠密行動に優れた仙術隠形術は力量によるがカメラにさえ写らない足音も気配も消せる声は出しても聞こえにくい会得したら便利過ぎる技なのだが
「八仙さんあの方も仙人様なのですか?」
いつの間に後ろで少しあきれた顔のさちえさんが俺に問いかける
「あーそうなんですよあんなんですが実は凄いお方なんですがね‥少し残念な部分をお持ちで師父の博打仲間なのも頷けますよ」
「そうですね‥でも面白いお方なのですね今度お会いしたらじっくりお話してみたいです!」
うおお‥そんなに目を輝かせないで!
「解りました一週間以内には戻ってこれるでしょうから紹介しますよ」
「約束ですよ!」
とても、とても喜んでいた何よりだ




