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進路希望に悩む少年

作者: 光井 雪平

「進路希望は明日まで、だったよな」


 俺は名前以外かけていない、進路希望用紙をみながらぼそりとつぶやいた。


 自分の進路、やりたいこと、何も思いつかなかった。


 適当に書いてもよかった。だが、なぜかそれは個人的には許せなかったのだ。


 誰かに相談することも考えた。だが、なんだかわからないが、良い相手がいないと感じた。


 親、友人、先生、先輩、他にも様々な人が思いついては消えていった。なぜかわからないが、相談相手に適さないと感じたのだ。


 そして、一人で色々と調べてみたし、自分のことを整理してみた。


 今までやってきたこと、今まで興味・関心を持ったこと、得意な勉強、スポーツ、得意なこと。


 だが、何も進路に関しては思いつかなかった。


「やりたいことがねえんだよなぁ」


 正確に言えば、それは違うとわかる。ただ、これからもずっとそれをやりたいと思えることがなかった。


 きっとそれは普通のことかもしれない。


 だからこそ、自分が少しでも興味・関心を持ちえたことをベースに進路というのは決めるかも知れない。それに別に今決めた進路を今後一切変えていけないというわけではないのだから。


「ただの今の希望、それはわかってるんだけどなぁ」


 だけど、決められない。決めてはいけないと思う自分がいる。


 キンコーンカンコーン・・・


 学校のチャイムがなった。学校から帰らなければならない。


 もうそんな時間か、と思いながら、進路希望用紙を鞄にしまう。そして、教室を出ていく。


 部活に入っていない自分が学校が閉まるまでの時間、学校にいるのは初めてだった。


 何度も見た帰り道がどこか違うものに見えた。いつもと少し時間が違うだけで。


 その時、ふと思った。


「あそこ行ってみるか」


 そこは、自分にとっての思い出の地、自分が暮らす街をある程度見渡すことができる丘の上の公園。


 ここからさほど遠くはない。それにきっと、今この時間はほとんど人はいないだろう。


 そこにはもう何年も行っていなかった。なんだかわからないが、行かなくなったのだ。


 公園に到着すると、案の定人がいなかった。


 その場所は、自分の記憶とほとんど変わらなかった。遊具や自販機、ベンチ、その他諸々が少し古くなったくらいであった。


 適当なベンチに座る。


 公園を見渡すと、色々な記憶が思い起こされる。


 ほんとに色々な記憶が。


「昔は色々やりたいことあったんだけどなぁ」


 ぼそりとつぶやく。ここにきて思い出した。自分は色々とやりたがっていたのだ。色々なものに影響され、飛行機を操縦したい、宇宙に行きたい、バイオリンを弾きたい、バドミントンをやりたい、など色々とやりたがった。


 できるものは可能な限り、親はやらせてくれた。


 だけど、全部長続きしなかった。すぐにやめた。


 一回ですぐに満足した。


 そして、途中から何もやりたいことがなくなったのだ。


 わかってしまったのだ。自分は何をやってもすぐに満足し、何も続かないとわかった。


 だけど、きっと。


 同時にこういう気持ちもあった。


 自分はできない、という強い感情。


 自分は憧れを感じた人のようにできないと。


 続ければできたのかもしれない。だけど、一回の失敗、一回の挫折、周りのすごさを見るだけ、それだけで自分の中から産まれてきた負の感情。


 できない、なれない、だからやめよう。今のうちに。


 早くやめれば、本気になれなかったから、あの領域まで行けなかった。


 才能がないわけじゃない、と。


「くっだらねえ」


 それに今気づいた。そして、それに気づいた瞬間、くだらないと感じた。


 しょうもないことを思ったものだ、と思った。


 鞄を開け、進路希望用紙と筆箱を取り出す。


 そして、進路希望用紙に書いていく。


 今自分がやりたいと考えたことを。


 今の自分の進路を。


 できなくてもかまわない、何を言われてもいいと思えるものを。


 自分の進路希望を書いた・・・


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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)レビューで書いた通りですね。敢えて答えを書くことをしなかった。この演出がにくいと思いましたね。 [気になる点] ∀・)この演出そのものは意図的にそうさせた?または自然とそうなった? …
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