表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラザンノーチスの闘技士  作者: 莞爾
2/13

02:セフィリア・アストレア


 私は技巧整備士ぎこうせいびし。セフィリア。

 セフィリア・アストレア。女性。歳はまぁ……秘密ってことで。


 IDEAの加盟国である第六国家ラザンノーチスの闘技士とうぎし『トァザ』を作り出し、現在も彼の専属技師を務めている。わかりやすく例えるなら、格闘技の選手がトァザで、私は彼を育てたトレーナーというわけだ。


 ……ちなみに、最高技巧整備士団IDEA(Illuminated Dexterity Experts Association)というのは、堅苦しい肩書であるが、平たく言えば平和維持組織で、存在そのものが抑止力だ。彼らが一人いるだけで、国は無益な戦闘行為を回避できる。

 加盟する上で同意を求められる条件は以下の三つ。


 ・『あらゆる国家間の衝突に際して、国が民を徴兵することを禁ずる』

 ・『最後通牒の告知後、戦争に突入する場合はIDEAの認可を受けた資格保有整備士とその闘技士が戦闘行為を代表する。国は自衛以外の兵力を保有することを禁ずる』

 ・『武力紛争や内紛などの国内での争いにおいて、政府はIDEAの認可を受けた資格保有整備士とその闘技士を用いることはできない。戦闘介入の判断は資格保有整備士とその闘技士の判断に委ねられる』


 ――要は、国が認めた代表者同士で勝敗を決するのだ。それにより大霊戦争のような悲惨な歴史を繰り返さないで済む。大勢の人の命が失われることを回避できるというわけだ。


 さて、話を戻そう。


 自己紹介も済んだことだし、次はなぜ私がうんざりした顔で早起きして、円卓にいるのかについて……とはいえここまで読んでくれた方はすでにご存知かと思う。


 私はトァザを作った整備士であり、

 トァザはこの国、ラザンノーチスの闘技士だ。

 つまり戦争をする。


 ――宣戦布告はつい先日に告知されたのだ。

 内容は以下の通り。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


         【第六国家ラザンノーチス戦争突入の告知】


 第六国家ラザンノーチス 最高技巧整備士資格所有者

 セフィリア・アストレア 殿 及び闘技士『トァザ』に通達



 この度、第六国家ラザンノーチス(以下、『ラザンノーチス』)と第八国家ラバニス(以下、『ラバニス』)の間において緊張を高めていた深刻な領土問題が発生し、双方は協議を重ね、和平的解決を模索してまいりましたが、残念ながら合意には至りませんでした。


 ラバニスは、ラザンノーチスに対して条件付き宣戦布告の最後通牒を告知しました。ラザンノーチスは真摯に交渉を続けるべきと考え、ラバニスの提案を慎重に検討しました。

 しかしながら、その要求はラザンノーチスの主権および国益に重大な影響を及ぼすものであるため、断固として拒否する決定を下しました。


 本状況を鑑み、ラザンノーチスは国家自衛のため、戦争へと突入する決定を下しました。円卓もこれを承認いたします。


 よって、ラザンノーチス任命の最高技巧整備士セフィリア・アストレア殿におかれては、ラザンノーチスの安全と繁栄を守るため、『トァザ』と共に速やかに円卓へ参集されたい。


 ラザンノーチスの闘技士『トァザ』よ、困難な時にこそ真の力が発揮されるのです。整備士セフィリア・アストレア殿と共にその拳が遺憾なく発揮されることを期待しています。


 なお、本命令に対する拒否権は認められない。

 本命令に応じない場合、セフィリア・アストレア殿が保有する技巧整備士国家資格は即刻剥奪され、併せて国家反逆罪により身柄を拘束する。



                 最高技巧整備士団IDEA

                 代表 ブラッドレイ・ジャンヌ=ダルク

                 第六国家ラザンノーチス

                 国王 ガストー=ソル・ホーエンハイム


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 別に寝耳に水という話でもない。二国間の緊張はニュースでも取り上げられていた。

 ……とはいえ代表の厚顔には呆れたものだ。よくもまあぬけぬけと私を円卓に呼び出したな。とは、思う。


 まあ、私は望んでこの地位にいるのだし、船旅で世界を回った挙げ句、この国に居を構えたのも私だ。何事も平和が一番だと思うが、戦争が始まるっていうならこの国のために頑張るつもりだ。


 私はトァザと共に昇り詰めてきた。そして他の誰でもなく私と彼が、国を背負って立つ戦士だ。


 そうして、私は迷う余地もなく『円卓』への招集に応じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ