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第9話 人にやさしく

 次の日、早朝。いつも通りのジョギングと偽り森へと出発。神様からのメッセージを見るためにウキウキだ。

「昨日も来てくれているかなあ、神様」

「どうかしらね。それよりも昨日は急にさよならなんてひどいじゃない」

「それは本当にごめんなさい。でも急にお父さんが部屋に入ってくるんだもん、そこは分かってよ」

 僕の周りをくるくると回るリンネ先生に弁解の言葉をしゃべりながら走った。途中、散歩しているおじいさんに不思議な顔をされた気もするけど、まさか声に出していたのだろうか、気を付けよう。

 神様の返事を期待してノートを開いた。

 

『単行本か、少し待て』


 短い文章と一緒にTシャツとパンツ一枚を履いて女豹のポーズでこちらを向いているエッチなお姉さんのイラストが書かれていた。神様、あなたは私の望みを叶えるだけでなくこんな素晴らしいイラストまでかけるのですか。

「リンネ先生、やっぱ神様ってすごいね」

「ふふ、なあに。あなた、こんな雰囲気の女の子が好きなの」

「い、いや一番好きなのはリンネ先生だよ。でもこのちょっとタレ目でお姉さんな感じの人がかけるなんてやっぱりすごいよ。服着てるけどおっぱいがすごいでかいのもわかるし」

「へえ、タレ目でおっぱいが大きい子が好きなんだ。」

 いじられて、うぐっと詰まってしまった。ノートを閉じると表紙に「コミュニケーションノート」と神様の字で書かれているのに気がついた。コミュニケーション、このノートは神様からも認められた連絡手段なんだ。嬉しくなって、神様に返事を書いた。


『お願いします。リンネ先生のいろんな作品が見たいです。それとその女の子すごいエロいです。次はエッチなナースさんを書いてください』


 教室に入ると、窓際の席で男子たちが集まって話をしていた。

「田中、おはよう。何の話してるの」

 群れの端っこにいる田中に声を掛けた。

「ん、なんか吉本が河原でエロ本みたいのを拾ってたって山下が言ってて、そうなると吉本じゃなくてエロ本だなって噂になってる」

「へ、へえそうなのか」

 自分の事じゃないのに心臓がドキっとした。やっぱりエロは危ない。バレてしまったらどうなってしまうのか。

「でも、直接、本の中身を見たわけじゃないんだろ。もしかしたら普通の本かもしれないじゃん。変な噂を流すのはまだやめたほうがいいんじゃない」

 少し声が震えていたかもしれない。もしも針井賢治が超エロ本コレクターだったら…と噂をされたら、それを想像したら心臓の鼓動が早くなった。そんなことになったら僕はもう二度と学校に来ることはできないだろうな、吉本君のことをとても馬鹿にできやしないと彼のことを一生懸命フォローした。

「針井、そんなに吉本と仲良かったっけか」

 田中がきょとんとした顔で言った。ああ、なんでこいつはこういう時、変なことを勘ぐるんだ。おとなしく宿題でもやってなさい。

「田中それより今日の英語の準備したか。多分順番的に指されるぞ」

「あっ、やべーやべーそうだった。和訳教えてよ」

「教えてやるから、さっさとノート持ってこい」

 田中が席に戻ると他のみんなも興味を失ったのか、昨日のテレビの話や部活の話に話題が変わっていった。

「やさしいね、針井くん」

席に座ろうとしたら篠田さんから話しかけられた。

「ん、まあ田中に教えるのはいつものことだから。」

 そう返すと、篠田さんが少し可笑しそうに笑って

「それもだけど、噂話に乗っからないで注意するんだからすごいよー」

「えっ、あっ、いや、やっぱり変な噂流されたらかわいそうだなって思って」

 挙動不審になりながら答えると、すごい楽しそうに笑いながらそのあとも褒めてくれた。ありがとう吉本君、たぶんお前も素晴らしい本フレンドだったから助けただけだったのに、すごい得をした。


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