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みどりは太陽に向かってのびてゆく  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第2章 青葉若葉と藤の花
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第十話  集中しすぎ

「いろいろ、忙しいところありがとうございました!」

「藤野先生、また、紅茶を飲ましてもらいに来るぜぇ! あと、いつか遊びに行こうぜぇ!」


 緑と足立はワゴン車に乗り、窓を開けて藤野へ手を振る。


「また、来る時はいつでも連絡してよ。給食の試食にもおいでー」

「はい! 藤野先輩、ありがとうございます! また、よろしくお願いします!」

「右京ちゃんにも会ったら、よろしく言っといて。あと、足立主任と遊びには行けないねー」

「ええぇ! なんだよぉ。マジかよぉ!」

「あはは! 右京先輩にも、よろしく言っときまーす! じゃ、失礼しまーす!」


   ブルルルン!  ブロロロロロロロォ!


 給食センターの前でぐるりと車を転回させ、危なっかしい運転で緑は市役所へ戻っていった。

 車内では、足立がずっととめどなく緑へ話を振っているが、目を見開いて極度の緊張状態で運転している緑には、まったく耳に届いていなかった。


「・・・・・・――――ってわけなんだよー。すげえだろぉ? そんでよぉーっ――――・・・・・・」

「(集中! 集中! 運転に、集中!)」

「どうだぁ緑チャン! オイラ、他人の緊張をほぐしてやるのは達人なんだぜぇ!」

「(もう少しで、役所だ! 集中! 集中っと!)」

「・・・・・・――――でしょー? ひゃひゃ! これがまた、面白ぇんだ! でさ――――・・・・・・」

「(まっすぐ前見て、集中! 集中っと!)」

「・・・・・・――――ってことでよぉ! ひゃひゃひゃ! ・・・・・・って、ん! 過ぎてる?」

「(藤野先輩からのアドバイス。対応は、原理原則に基づいて、毅然と・・・・・・)」

「おい! 緑チャン! おい! 聞いてんのかよぉ、緑チャン! 過ぎてる! 過ぎてる!」

「(鬼島さんには、怖いけど、ダメなものはダメって言わないと・・・・・・)」

「おいいいぃ! 緑チャーンっ?」

「え! え? はっ! な、なんですか?」

「何ですかじゃなくってよぉ、オイラたち、役所に戻るんだべぇ?」

「そ、そうですよ? 何か、ありました?」

「いや、あのさぁ。とっくに役所、過ぎちまってんぜぇー?」

「ええええ! は、早く言ってくれてもよかったじゃないですかぁー」

「オ、オイラ、ずっと言ってたんだけどなぁ。・・・・・・すげぇ集中力だったぜぇ、緑チャン」

「とっ、とにかく戻らないと! えーと! ここをUターンして、と!」


 緑の強引な運転により、助手席では足立がこの後、ものすごい車酔いになっていた。


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