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GHOS&BELL!!  作者: ナックル
第二話 幽霊と神様のイタズラ
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イタズラじゃ

「…………えっ」



僕のキャパシティでは聞き取れない程の長ったるいお名前。


"つくものたま"……なんて?

もう一度言ってもらうよう促そうとするも、



「面倒じゃから"アオガミ"でよい。」



本人も面倒臭がっていた!!


さっきから妙に玲の声が聞こえないと思っていたら、玲は何故か気を失ったかのように地面に倒れ込んでしまっていた。


女の子――アオガミ曰く、



「スマン、霊体にはわしの出現はちとキツかったようじゃ」



と、よく分からない、というか分かりたくもない理由により玲はブッ倒れてしまったらしい。


……傍から見ればただの電波な女の子なんだけどな、この神様……。


この神様の胡散臭さに疑っていると、ようやく意識を取り戻したらしい玲がムクっと起き上がった。



「……おはようございます。」


「まぁ反応がないという意味では寝てたと同じだからツッコまないでおこう。」



ボケの開幕パンチを忘れない玲なのであった。


玲は眠たそうに瞼を擦りながら、まず僕を見て、次にその視線を僕の後ろで仁王立ちしているアオガミへと向け――



「――わぁ~お!?神様ですか!?」


「君はアレ神様に見えるの!?」



何か知らないけど凄い負けた気分だよ!!


あぁでも一応玲はアオガミと一度会ってるのか……。

玲は僕の身体を文字通り"すり抜け"、そのままアオガミの前へと近寄る。


……あぁ希、確かに幽霊が自分の身体をすり抜けるってのは心臓に悪いね……。



「こんにちは神様!!ありがとうございます神様!!」



玲はアオガミと向かい合うや否や、"こんにちは"と"ありがとう"とで二回頭を下げた。


そんな元気な玲を見て、アオガミは僕の方を見る。



「……最近の人間はそそっかしい奴ばかりじゃな……」


「え何!?僕も"そそっかしい奴"にカウントされてるの!?」



話が進まないからこれ以上はツッコミ無しでいこうと心掛けた僕。


玲はキラキラした目でアオガミを見て、まるで有名人にサインを貰った一般人のような満ちた表情を浮かべている。



「あのっ、神様――」


「アオガミと呼べ。その方が落ち着く。」



あ、結構その名前気に入ってんだ……。

そう言われた玲は嬉しそうにニコッと笑う。



「じゃあアオさん!私達は今日、アオさんに尋ねたいことがあって来たのです!」



"アオさん"ってのはアオガミの名を玲なりにいじった呼び名なのだろう。

玲は続きを言おうとしたが、アオガミは手でそれを制した。



「分かっておる。わしが説明してやる。」



そう言い、アオガミは躊躇うことなく地面に胡座をかいて座る。

その"地べたに座る神様"というシュールな絵に僕が苦笑いを浮かべると、



「頭が高いぞ人間。」



アオガミは僕を睨み、人差し指を僕に向け――



「――――!?」



直後、僕の身体はまるで操られたかのように制御出来なくなり、そのまま僕は脳の命令とは無関係に地面へと正座してしまった。


その一瞬のファンタジーな体験に言葉が出ず、僕は正座したままポカンとする。



「神じゃからな。人間には理解の追い付かん力も使えるに決まっておろう。」



……らしいです。


もうツッコミは無しと決めたから僕はツッコまない。


玲も僕に合わせて地面に正座して、アオガミと向かい合った。

……何このアホな光景は……。



「さて話しておくべき事柄は幾つかあるが、時間が足りんから重要な事柄だけ話そうかの。」



そう前置きをし、アオガミは語りを始める。

こちらも重要な事さえ聞ければ十分だ。

あんまり詳しく追求すると、またファンタジーな話になりそうだし。



「貴様……名は白河だったな。貴様は約二年前の冬、死んだ。」



アオガミは玲に対して、確認を取っているわけでもないだろうにそんな事を言う。

でも、玲は全く動じず、アオガミに向かって首を縦に振った。



「わしが白河に"力"を貸してやった事で、白河は仮初めの"生"を手に入れた。」



アオガミなりに僕らにも分かりやすいよう、一つ一つ説明してくれているんだろう。

でも、僕が一番聞きたい事はまだ教えてくれてない。



「同様に、貴様……橘にも、霊体を認識できる"力"を分け与えてやった。」



ビシッと、アオガミは僕を指差す。

迷惑極まりない話だけど、ツッコまない。



「まぁ昨晩貴様と共に居た人間にも、その"力"が多少宿ってしまったようじゃが……。」


「あぁ……希か……」



成る程、だから希もその……"霊体状態"である玲が見えたのか。

なんと言うか……可哀相に……。



「……と、まぁ……重要な事柄はこれぐらいかの。」



そう締め括り、アオガミは話は終わったとでも主張するかのように欠伸をかいていた。


…ちょっと待って、まだ僕が一番聞きたかった事を聞いてないよ。



「わぁお!流石アオさん、太っ腹!」



玲はその説明だけで満足してしまったのか、得にそれ以上追求はしない。

でも、僕は違った。



「ちょっと待ってよ。肝心なことをまだ聞いてない。」



僕がそう言うと、玲も、アオガミも僕と目を合わせる。

これは……僕にとって、得に重要なことだ。



「……どうして……僕なの……?」



……わけがわからなかった。

そう、最初からわけがわからなかった。

これじゃまるで……僕が神様に選ばれたみたいじゃないか。


でもそんな僕の問いに対し、アオガミは嫌な笑みを浮かべた。



「……イタズラじゃ。」


「…………は?」



その余りに単純で簡潔な発言に、僕は少し理解が遅れ……理解する頃には完全に間抜けな顔をしていた。



「神様のイタズラです!」


「ええぇぇぇぇぇ!?」



僕の代わりに玲がそう言い、僕はとりあえず叫んでリアクションをする。


そんな……そんな適当な理由で僕が……!?

要するに、ただの神様の気まぐれってこと!?



「神様のイタズラ、か。……違いないの。」



アオガミは自嘲気味に笑い、それを目にした僕はヘンな気分になった。

……気まぐれで僕を巻き込んでおいて、何でそんな表情をするんだ……?


アオガミは思い出したかのようにポンっと手を叩く。



「あぁそうじゃった、重要な事柄はまだ一つ残っとった。」



そう言いアオガミは、僕ではなく玲へとその視線を向けた。



「貴様に仮初めの"生"を与えはしたが、所詮は仮初めじゃ。いずれ貴様は成仏せねばならん。」


「……成仏、ですか?」



その言葉に、流石の玲も少しだけ動揺したようだ。

成仏、ってのが幽霊にとって良い事なのか悪い事なのかは知らないけど……いわゆるそれは、この世から……消えてしまうということだ。



「貴様には、成し遂げたい願いがあるのだろう?」



アオガミが玲に向かってそう尋ねたのを聞き、僕も玲へと視線を向けた。


……成し遂げたい願い……?

それって、生きていた時に出来なかった事……って意味?

それとも、もっと違う何か…なの…?



「はい。そのために私は、神様に奇跡を起こしてもらったんですから。」



そう言って玲は初めて、真面目な顔を見せる。

その玲の言葉は……なんというか、今までのポワワンとしたものを感じさせない……真剣なものだった。

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