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96.旅行初日 その五


「わぁ、広い……!」

「広いし綺麗だし……あっ、窓から海も見えるよ!」

「はぁ……旅行先の部屋って気分上がるし良いよなぁ!」

「ははっ、そうだね。とりあえず荷物置いて、あとは先に和室洋室で寝る場所も決めてしまうか?」

「あー、そうだな。三人とも一旦集まってくれ」


 勢いよく部屋の奥へと進んで行った三人をリビングルームに呼び集める。


「はーい、聞いてたよ。部屋を決めるんだよね?」

「あぁ、洋室と和室を決めるんだが、洋室はベッドの数的に二人までだな」

「私はできれば和室の方が落ち着くからそちらがいいね」

「俺はどっちでもいいぞ!」

「俺もどちらでも」

「私もお兄ちゃんたちと同じく!」

「成実は?」

「えっと、男女で分かれる方がいいよね?」

「そこまで気にしなくても良いと思うよ。まぁ、さすがに成実と晃が同じ部屋とかになったら友也が嫉妬しそうだけどね」

「なっ、いや、否定はしないが……。とりあえず、成実はベッドの方がいいのか?」

「うん……」

「あぁ、いやそんな顔をしないでくれ。別に責めてるわけじゃないよ」


 となると瑠璃と成実がベッドで、他三人が和室か? などと考えていると


「あ、お兄ちゃん」

「何だ?」

「私、香織さんの方で寝てもいいかな?」

「……何でだ?」

「久々に香織さんと二人でお話したいのと、明日の朝起こす役がいないと活動開始がお昼くらいになっちゃうかもよ?」

「あー、確かに姉ちゃんなら一人だと昼まで寝るな……それに部屋もオートロックだし……。それなら俺が行くか?」

「ううん、さっきも言ったけど私がそうしたいの! うん、それじゃ、ちょっと荷物持って向こうに行ってくるね〜」

「お、おう………ん? あっ、おい、瑠璃!」

「温泉行く準備して待ってるね〜!」


 そう言って瑠璃は足早に部屋から出ていった。瑠璃の姿が扉から出た後になって大事なことに気付いたが時すでに遅し。


「おや、これだと私と晃が和室、友也たちが洋室になるのかな?」


 にこやかにそう言う白雪。多分分かってて瑠璃のことに口を出さなかったよな……


「何かな?」

「いや、なんでもない。……まぁ、そうだな。成実さえ嫌じゃなければこれでいいか?」

「嫌だなんてそんな! 私は大丈夫だよ!」

「まぁ、それならいいんだが」


 いつもと変わらない表情で大丈夫だと言い張る彼女。意識してるのは俺だけなのかな……まぁ、変に意識されるよりはいいし、俺自身は嬉しいからいいか。と、そう心の中で呟く。


 そうして奇しくも俺、それから晃も好きな人と同じ部屋で寝ることになった。




「お風呂どんな感じかなっ? 露天風呂もあるらしいし……!」

「ふふっ、成実さん楽しそう! 私もわくわくしてるけどさっ」


 部屋も決まったので入浴の準備をして、今は浴場へと向かっている。海の後に軽くシャワーを浴びたとはいえ、一度風呂に入ってサッパリしたい気持ちはある。だからだろうか、女子勢は特にテンションが高くなっている。


「この時間なら人も少ないよな! なら、広い浴場でゆっくりできるな!」


 前言撤回。男子、というか晃もすごい見るからにテンション上がってる。


「まぁ、気持ちは分かるけど、はしゃぎすぎて滑ったりはするなよ?」

「もちろんだ!」

「あら、ここね。それじゃ、また後で会いましょう」

「えぇ、また後で」


 男子の方が早そうということで部屋の鍵は貰っている。まだ夕暮れ前なので上がったらゆっくりと昼間に買ったプリンでも食べようかなどと考えながら、俺は男湯の方に入っていった。



「やっぱり広いなぁ!」

「そうだな……! あ、人も誰もいないな」


 広くて綺麗で、外の露天風呂からは海や綺麗な街並みも見える。それに広い浴場を一人、いや二人占めだ。これに興奮しない人はいないだろう。


 俺たちはささっと身体を洗い、まずは室内の大風呂へと入る。


「「はぁ……」」

「おっさんみたいだぞ」

「そっちこそ」

「「あははっ」」


 つい声が漏れるくらいに気持ちいい。温かなお湯が疲れた身体を優しく包み込み、つい全身の力が抜けていく。


 しばらくした後、次は露天風呂の方へと向かう。外に出た瞬間ちょうど風が吹き、温泉から出た後なせいで夏とはいえ少し寒く感じる。


「っ! さ、さっさと入るぞ!」

「お、おうっ」

「熱っ!」

「……確かに。だけど入らないと寒い……よし、一気に行くぞ」

「おう!」


 いっせーので二人で露天風呂へと入る。最初のうちは熱く感じたが、段々と慣れてくる。


「ふぅ、気持ちいいな……」

「あぁ、そうだなぁ……」

「……良かったな」

「ん? 何がだ?」

「白雪と二人きりになれて」

「なっ!」

「あ、おい、急に立ち上がると……」

「寒っ!」


 タイミング良く風が吹き込み、温まっていた身体の熱を奪う。


「ふぅ、暖かい……ってそれより! いきなり変なこと言うなって!」

「あぁ、悪い悪い。でもそこまで動揺するとは思わなくてさ」

「はぁ……それで言ったら友也こそ、瑠璃ちゃんの機転? で二人きりになれて良かったな?」

「ま、まぁ、そうなんだけどな……」

「歯切れ悪いな……何かあったのか?」

「いや、さっきそれが決まった時に普段通りの感じでさ、そんなに意識されてないのかもな、なんて思って……」

「いやいや、それはないだろ」

「そう思いたいが……」

「お前、自分が愛されてること自覚しろよ? 傍から見たらべったべた、あっまあまだぞ?」

「そうか?」

「あぁ、そうだ! 逆に俺の方こそ華から幼馴染としか見られてないからなぁ……」

「いや、それこそないだろ?」


 そんなことを話ながら、愚痴ったり惚気たりと忙しくしつつ、風呂を楽しんだ。




〈成実視点〉



「んー……」

「どうしたんだい成実?」

「あっ、華ちゃん」


 一足先に露天風呂の方へ行っていた私の後ろから声をかけられる。


「何か悩み事かい? ……例えば部屋の事とか?」

「うん、ちょっと緊張しちゃってね……」

「その割には先程決まった時には普段通りに見えたけど?」

「あっ、うん。私だけ過剰に意識してるって友也くんバレるのが恥ずかしくて……」

「いや、あれ多分、友也もかなり意識してるよ?」

「えっ?」

「結構動揺してたし、それにいつも通りならわざわざ確認なんてしないと思うよ」

「そっか……私だけじゃないんだ……」

「あぁ。ふふっ、二人は付き合ってからどんどん仲が深まっているね」

「そうかな? えへへ、そうだといいな……」


 これからはもっとちゃんと友也くんと話し合って、お互いのことをよく理解していきたいなぁ。


 そういえば同室といえば華ちゃんは和泉くんのことをどう思ってるのかな?


「あっ、そういえば華ちゃん!」

「なんだい?」

「華ちゃんと和泉くんって幼馴染なんだよね?」

「あぁ、小学校からずっと同じだね」

「その、やっぱり幼馴染は恋愛対象には入らないのかな?」


 ネットで過去に見たのだけど、幼馴染みたいに幼少から一緒にいる相手は恋愛対象になりにくいらしい。


「あはは、恋バナかい? そうだね、晃か……嫌いではないよ」

「それじゃ、好き?」

「ふふっ、どうだろうね? そうだね、成実からしたら、私と晃が付き合ったらどう思う?」

「えっ、私からしたら? えっと……素敵なカップルに見える、と思うよ?」

「ははっ、そうか……素敵なカップルか……」


 反芻するようにそう言う華ちゃん。珍しく頬を赤く染めているのは、温泉に入っているからなのか、それとも照れているのかは分からない。

 けど、恋愛にそこまで詳しくない私から見ても、少なからず和泉くんのことを意識してるような、そんな気がする。


「……瑠璃と香織さんが来るまで待とうと思っていたけど、ちょっとのぼせたみたいだから先に上がってるね」

「あ、うん、了解だよ」

「それじゃ、また後で」

「うん!」


 そう言って華ちゃんは戻って行った。心做しか、その背中は少し弾んでいるように見えた。




 ようやく初日が終わりそうですね! 行きしから書きたいことをただ詰めて行ったらめっちゃ時間かかっちゃいました。タイトルも変わりなく、旅行回続きになってしまいました。

 というかさすがに進まなすぎるのはやばいと思って字数今回多くなりました。あと別視点途中で突っ込んだり……


 それでは今回もありがとうございました。また次回も是非ともよろしくお願いいたします。

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