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94.旅行初日 その三

 今回から視点戻ります。


「あ、成実さん」

「何かな、瑠璃ちゃん?」


 サービスエリアを出発する際に席を変え、俺が香織さんの隣に、瑠璃と成実が二列目、三列目に白雪と晃となった。助手席は寝ない人ということで俺か白雪でジャンケンで決めた。


 そして再び出発したばかりの時にはすごい気にしている様子だったが、成実がそれを解したことで、復活した瑠璃は成実に甘えたり、幼い頃の話なんかをして楽しんでいた。

 こうして見ると姉妹のようにも見えてくる。仲がいいのはいい事だな。



「……あのさ、さっきはごめんね」

「えっ? あ、もう本当に気にしなくていいんだよ?」

「そうじゃなくてさ。お兄ちゃんとハグしたり、撫でてもらったりを先にしちゃって……って、あれ?」


 瑠璃がそんなふざけたことを言うから叱らないとと思い、俺も後ろを振り向くが、成実は顔を赤くして黙り込んでいた。いや、そんな表情をされるとこちらまで思い出して照れるんだが……



「お兄ちゃんってヘタレ……あ、積極的じゃなかったりするし、そういうのもまだかなって思ったけど……。流石私のお兄ちゃんだねっ」

「おい、瑠璃。今なんて言おうとした?」

「な、なんのことかな?」


 兄妹でそんな問答をしている中でも、成実は照れている。

 というか瑠璃のやつ、成実に気にしないで欲しいと説得されてからというものの、前よりも随分と距離が近くなったのではないだろうか。


 今までしっかり者で、俺や父に負担をかけないように甘えたりできなかったのは薄々感じていたが、それの反動で成実を姉のように慕って甘えているのかな。

 妹が生き生きしているのは嬉しいが、彼女に負担がかかるのは良くない。と、そう思っていると瑠璃がこちらに声をかけてくる。


「さっきね、成実さんや華さんから、年下なんだからもっと甘えて頼ってくれていいって言われたんだ。だからちょっと甘えすぎちゃった」

「と、友也くんっ。私は気にしてないし、一人っ子だったから、妹みたいな存在ができて嬉しいよ!」

「そ、そうは言ってもな……」

「えへへ、ありがとう成実さんっ。それと、妹みたいなじゃなくて、お兄ちゃんと成実さんが将来そういう関係になったら、本物の義妹(いもうと)になるよっ」

「そういう関係……義妹……。はぅ……」


 おい瑠璃、さらに成実が赤くなったじゃないか。なんて心の中で呟いているが、俺も俺で多分耳まで赤くなっているかもしれない。そういうってつまり、結婚ってこと、だよな……

 いつかしたいし、それも含めて彼女の心を埋めたいとは思っているし、覚悟もしてるつもりだったが、まだまだ甘いみたいだ。


 白雪や晃もほぅ……なんて言いながら眺めてるし、香織さんも「あはは、若いっていいわね〜」なんて呑気に言ってるし。


 というかさっき成実に言おうと思ったが、小学生の時のまだ母親がいた時の瑠璃は、甘えたでいたずらっ子だった気がする。長年溜め込んだ分、成実に向かっているのか?



 そんな無茶苦茶な車内とは別に、景色はどんどん変わっていき、ついに海が見えてきた。


 立ち直った成実や楽しそうな瑠璃も外の景色を見ている。


「わぁ……! 海だよっ、友也くん!」

「すっごい綺麗だねっ!」

「すごいな……!」

「あぁ。綺麗な海だね」


 各々窓の外を見て感嘆の声を上げていた。太陽が反射して光り輝き、水平線まで美しい青に染っている景色に俺も思わず見惚れる。


「ふふっ、外を見るのも良いけどひとつ相談。もうしばらくしたら着くけれど、チェックインの時間はまだ先だから途中で昼食とか食べていかないかしら?」

「おぉ、そうだな!」

「そうしようか」

「私も賛成っ。それで、どこで何にするの?」

「あっ、あの有名な商店街とかどうかなっ?」

「あぁ、いいな。香織さん、ここからだとどれくらいですか?」

「えっと、ちょっと待ってね……。あ、結構近いわね。ならそうしましょうか」


 というわけで熱海駅前の商店街へと向かうことになった。




「到着だねっ!」

「ずっと座ってたから体が固くなってる気がする〜」

「おぉ! 東京とは空気が違うな!」

「天気も良くて気持ちがいいね」

「駅近くのパーキングが空いてて良かったわ〜」


 各々車から出て、感想を言いながらゆっくりと歩いていく。

 とりあえず歩きながら食べたいものを見つけるようだ。まだ一時過ぎなのでゆっくりしていてもチェックインにも間に合うだろう。



「商店街って言っても、私の駅前のところよりも賑わってて大きいね〜」

「あぁ、そうだな。それにあちこちからいい匂いも……」

「あははっ、お兄ちゃんってば結構お腹空いてる?」

「まぁ、結構空いてるな……。でもそういう瑠璃もさっきから串揚げとか食べたそうにしてるだろ」

「えへっ、バレちゃったか。せっかくだしどこかの店じゃなくて、食べ歩きでも良いかな?」

「あぁ、俺は賛成だぞ!」

「異議なしね? それじゃ、好きに食べ歩きましょうか!」


 反対意見がなかったので、瑠璃は俺を連れて先程見ていた串揚げを買いに行った。宿の夕食は海鮮だと聞いているから、ここで食べるのはこういうので良いだろう。それにずっと、そこらからいい匂いもしていたしな……!



 各自食べたいものを買ったり、色々な店を見て回って楽しんでいると、成実から声をかけられる。


「友也くん、友也くん!」

「うん? どうした?」

「プリンだって! あっ、瑠璃ちゃんやみんなの分もいるかな?」

「あぁ、確かに瑠璃も甘いもの好きだし……って、本人がちょうど来てくれたよ」

「あっ、お兄ちゃん、成実さん!」

「瑠璃ちゃん、それに華ちゃん達も! ちょうどいいところに!」

「おや、どうかしたのかい?」

「うん、みんなもプリン食べないかなって思って」

「もちろん頂こう、って言えたら良かったんだけどね。私はもうお腹いっぱいだよ」

「ごめん、私も……」

「俺もだ……テイクアウトとかできないのか?」

「あ、できるみたいだぞ」

「それじゃ、テイクアウトにしよっか?」

「そうしようか。風呂か夕飯後に食べても美味そうだしな」

「ふふっ、ありがとう。二人がそう言うなら私たちもテイクアウトしていこうかな」

「あぁ、前にテレビで見た時から気になってたんだ! どれにしようかなぁ……」

「どうしよう、選べない……お兄ちゃん、二つ買っていってもいい?」

「食べ切れるならいくつでもいいぞ」

「ほんと!? あ、でも、二つくらいがいいかな。夕飯食べられなくなりそうだし」


 俺はどれにしようか……。普通の、抹茶、いちご、それにレモン……実に迷う。


 気付けば他の全員が購入を終えたところだったので、俺も急いで二つ買った。それにいつの間にか香織さんも合流して買っているし。


「全員いるしそろそろ宿に……って思ったけど、時間もまだあるのね。チェックインは三時から四時頃だし、皆さえ良ければこれから海に行って遊ばないかしら?」


 今からなら二時間から三時間程海にいられるかな。元々明日だけの予定だったが、多く遊べるのなら賛成だ。


「「賛成!」」


 と晃と瑠璃が即答する。


「断る理由もないし、食後の運動にもなりそうだ」

「あぁ、俺も賛成だ」

「私も同じく!」

「了解。それじゃ車に戻るわよ!」


 そうして全員で一度車に乗り、海辺の駐車場へと移る。そのまま車から必要な荷物を取り出し、男女それぞれで近くにあった更衣室へと分かれていった。



 親しくなったのを機に呼び方もさん付けやめようかと思ったのですが、会話で分かりにくくなるのでさん付けのままにしました。ご了承ください。


 それでは今回もありがとうございました。

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