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93.旅行初日 その二


〈成実視点〉



「……実、成実」

「……ん、うぅ……友也、くん?」

「おはよう成実。サービスエリアに着いたよ」

「私、寝てた……え、えっ、寝てた!?」


 隣に友也くんがいる横でぐっすりと。

 多分、いや間違いなく寝顔なんかも見られたと思う。だらしない顔を……恥ずかしい……


「あぁ。ぐっすりと友也の肩で眠ってたよ」


 華ちゃんがそんなことを言う。友也くんの肩で?


「う、そ……」

「ふふっ、事実だよ。瑠璃が寝た後すぐに眠りについていた」

「と、友也くん、ごめんなさい!」


 私が肩にもたれかかっていたってことは友也くんはゆっくりとできていなかったと思う。


「重かっただろうし、寝れてないよね?」

「全然重くないし、元々寝るつもりじゃなかったから大丈夫だよ」


 そうは言ってくれるけど気を使わせてる気がする。本当に申し訳なく思う。


「……それに寝顔も可愛かったから本当に気にしてないよ」

「そ、そっか……」

「ふふっ、青春ね〜。まさかあの友也くんが可愛いなんて言うとは」

「か、香織さん……!」

「あははっ、ごめんね。とりあえず他の三人も行ったし、二人も一応御手洗に行っておいてね。あ、小腹が空いてたら何か買ってもいいわよ」

「あっ、はい、ありがとうございます!」

「それじゃ、ちょっと行ってきます」

「えぇ。行ってらっしゃい〜」



 可愛いと言われた嬉しい気持ちと、寝顔を見られた恥ずかしい気持ちで胸がいっぱいになりながら、早足で御手洗に向かう。



 今まで可愛いって友也くんから直接言われたことはほとんどない。想いはたくさん伝えてくれるし、大切に思われているのも分かる。しかしそれとは別で、好きな人から可愛いって言われるのがこんなに嬉しいとは知らなかった。


 よく知らない人からは容姿や成績を褒められることはよくあったけど、言い寄られたりすることも多く、違う容姿なら良かったと思ったこともある。

 けれどこれのせいでナンパされたおかげで、中学生の頃に友也くんと出会えたのだからむしろ感謝しなきゃいけないかもしれない。



「えへへ……」

「すごいいい笑顔だね」

「は、華ちゃん!?」

「ふふっ、友也のことでも考えていたのかい?」

「……うん、そうだよ」

「ほぉ……」

「えっと、どうかしたかな?」

「あ、いや、やはり成実も随分と変わったと思ってね」

「そう、だね。友也くんと、華ちゃんたちと出会って仲良くなってから、良くも悪くも取り繕わなくなったかなっ」

「悪くも、ね。あはは、私たちが悪い影響を与えちゃったかな?」

「あっ、今のは言葉の綾で!」


 そうして華ちゃんと仲良く話しながら香織さんの車へと戻っていく。



「おかえり。瑠璃はまだか」

「ん? 先に戻っていると思ったんだが」

「まぁ、しばらくしたら戻ってくるか」

「そうだね」


 華ちゃんと話しながらだったから一人で歩くよりも遅かったはずなのだが、瑠璃ちゃんは未だ戻っていなかったようだ。もしかしたら何か飲み物でも買いに行ってるのかもしれない。



「遅いな……」


 友也くんの呟く声。確かに先程から何分も経っているのに一向に戻ってこない。


「私と一緒に行ったところまではいたんだけどね……」

「その時に何か買いに行くとかは言ってたか?」

「いいや、何も」

「……ちょっと探してくる。戻ってきたら誰か連絡してくれ!」


 心配そうな顔で車から勢いよく飛び出す友也くん。


「あ、私も見てくる! 華ちゃんたちは待ってて!」


 私も気づけばそう言って飛び出していた。御手洗の方は友也くんは見に行けないし、一人だと時間がかかるかもしれない。ここはサービスエリアと言っても飲食店やちょっとしたお土産などが売っている店もあり、駐車場だけでもかなり広い。


 もし見つからない間に何かに巻き込まれていたら嫌だし、こんな場所でそれほど危険なことはないとは思うけど、親しい人を失うのは怖い。



「いない……」


 御手洗までの道を辿り、買い物ができる所も見てきたが見つからない。



 私はもう既に戻っているのではという一縷の望みを持って車へと戻ることにした。


 その途中、駐車場の香織さんの車とは少し離れたところに見知った顔が見えた気がした。勘違いかもしれないが、急いでその場所へと向かう。



「瑠璃ちゃん!」

「……! 成実さん……!」


 私を見つけるなり抱きついてくる瑠璃ちゃん。安心した声が聞こえてくる。


「道に迷って……ごめんなさい……」

「大丈夫だよ。見つかって良かった……」

「本当にごめんなさい……」

「大丈夫。無事だったんだがら、気にしないで……。けど友也くんも心配してるから戻ろっか」

「うん……」


 申し訳なさそうにする瑠璃ちゃんの手をしっかりと繋ぎ、みんなの待つ車へと向かう。



「あっ、成実、それに瑠璃も!」

「はぁ〜、見つかって良かったぞ!」

「とりあえず友也くんにも連絡しましょう」


 いつも落ち着いている華ちゃんも相当心配していたようで、私たちを見つけた瞬間に焦りの表情から心からの安堵へと変化した。


「心配かけてごめんなさい……」

「ははっ、気にするなって!」

「あぁ、晃の言う通りだよ。それに私が帰りも一緒に戻っていればよかったんだ。瑠璃だけの責任じゃないよ」

「そ、そんなこと……」

「そんなことあるよ。瑠璃は一番年下なんだ。普段はしっかりしているが、もっと私たちに甘えたり頼ってくれていいんだ」

「うんっ、華ちゃんの言う通りだよ!」


 普段の瑠璃ちゃんはしっかり者だが私たちよりも年下だし、苦手なこともあるだろう。

 初めて会った時は好きな人の妹さんというだけだったが、今では友達であり、大切な妹のような存在である。華ちゃんの言うようにもっと甘えたり頼ってほしい。


 そんなことを考えていて気付くのが遅れたが、足音が段々と近づいてきていた。


「瑠璃!」

「お兄ちゃん!」

「良かった……本当に良かった……!」

「うぅ……ごめんなさい。心配かけて、迷子になってごめんなさいっ……」


 二人とも幼少に母親を亡くしているからこそ、家族と会えなくなる苦しさは十分に分かっているのだろう。

 瑠璃ちゃんは友也くんを見て安心したのか堰を切ったように泣き出してしまったし、友也くんも瑠璃ちゃんを強く抱きしめていた。




「……取り乱してすまなかった」


 しばらくして二人は離れて、友也くんがそんなことを言う。


「いや、仕方ないだろ。それに友也は瑠璃ちゃんがそれだけ心配だったんだろ?」

「まぁ、そうだけど……」

「……ごめんなさい」

「あっ、責めてる訳じゃないからな!」

「そうだね。瑠璃、気にしすぎるのも良くないよ」

「うん……」


 そして少し何かを考えるようにしてから、瑠璃ちゃんはこちらに顔を向ける。


「成実さん、ごめんなさ……じゃなかった。ありがとうございます」

「えっ?」

「私を見つけてくれて、本当にありがとうっ」


 そう言って深々と頭を下げる瑠璃ちゃん。


「本当に気にしなくて大丈夫だよ。それに瑠璃ちゃんが無事なら問題ないから!」

「……華さんにも言われたし、そう言って貰えるのはありがたいけど、やっぱり気にはしちゃうよ……。私のせいで迷惑かけて、出発も遅れちゃったでしょ?」

「瑠璃ちゃん、時間に関しては気にしなくて大丈夫よ。ここで休みにしたのは道が混んでたからであって、少し時間が経ったおかげで、むしろ今はこの先の道も空いてるのよ」

「あぁ、それにこの中で迷惑なんて思う人はいないし、こういうのもきっと旅の醍醐味みたいなものさ。まぁ、友也は何か言いたいことがあるみたいだけどね」


 華ちゃんがそう言ったが、確かに友也くんは何か言いたげな様子をしている。


「瑠璃」

「お兄ちゃん……」

「お前は一人だけの大切な妹だ」

「う、うん……」

「誰かと行動するか、せめて携帯を持ち歩け」

「うん……」

「心細い思いさせて悪かったな」


 瑠璃ちゃんを優しく撫でる友也くん。お互いを思い、信頼しきっていて、心を許しあってる様が伺える。



 私も一応友也くんからは信頼されていると思うし、寄り添おうとしてくれていると思うけど、頼られているかは分からない。いつかは心を委ね合えるような、何でも分かり合えるようなそんな関係になりたいな……



 ふと別視点で書きたくなりまして……

 というか自分用で複数視点でストーリーを考えるのもありかもしれませんね。この場面で一人はこう考えているけど、もう一人は違う考えや見方をしてるとかもあったりするかもしれませんし。


 それよりも色々書きたいことなんかを入れてたら、今回でチェックインまでするはずがまだ道中です。どうかお許しを……


 あと、泊まるのを旅館ってことにしてましたが、和洋室なら違うと思って、前話までの旅館って書いていたところを宿に変えました。


 長々と失礼しました。

 それでは今回もありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。

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