88.終業式と暑い夏
「暑い……」
「そうだな……」
今日は夏休み前の終業式。七月となり本格的に夏がやってきたような暑さの日が続いている。まだ朝にも関わらないのにとても暑い。暑さで語彙力がなくなってきた気がする……
「まぁ、今日が終われば夏休みだけどな」
「だな。それに来る時は暑かったけど教室は涼しいしな!」
しばらくして成実も白雪も少し汗ばみながら登校してきた。
「暑いね〜」
「あぁ。あ、水分はしっかり取らないとだぞ」
「うんっ、心配ありがとね!」
その後放送による学校長の話と、担任から通知表を渡されて午前中で解散となった。
「やっぱり勝てないか……」
「ううん、そんなことないよ! 前よりも全体的に少し上がってるし、次こそ負けちゃうかも!」
「そういえば前もだったけど、そう言う割には嬉しそうだよな?」
「あ……確かに嬉しいのかも! 中学では成績とかスポーツとかで好成績を取ると皆からは納得されて、それで追いつこうって頑張る人がいなかったから……。その点でも華ちゃんにも友也くんにも感謝だよ!」
確かに最近まで優等生で常に一位だったから周りからは追いつけないと思われても仕方ないかもしれない。
それに彼氏として、隣に立つ人として負け続けるのも悔しい。ゲーム好きで他人想いで抜けてるところもあったりするけど、凄い努力家でもあるしな。本当は努力してるのに、周りが天才だからの一言で終わらせるのは違うと思う。
「絶対追いついてみせるよ」
「うん、私も負けないように頑張るよ!」
そんなことを言ってはいるが、順位は前回と変わらずだった。ちなみに晃は白雪に勉強を見てもらったおかげか、初めて校内順位で三十番以内に入っていた。
「「いただきます!」」
今、俺と晃は冷やし中華を食べている。
まぁ、いつもの長期休み前のように二人で飯を食べに来たのだ。
「そういえば成実と白雪も二人でどこかに出かけてたよな」
「あぁ、そういえばそうみたいだな。何か買い物行くらしいぞ!」
「そうか」
「あの二人も随分と仲良くなったよな〜。まさか華に女友達ができるとは思わなかったな」
「それは白雪に失礼なんじゃないか?」
「いやいや、本人が女友達なんて面倒臭いとか言ってたんだよ! それが素の笑顔を見せれる相手ができるなんてなぁ」
「お前は親か」
「ははっ、まぁ幼馴染として少し心配してたんだ。他人にも自分にも厳しいし、色々と面倒な性格してるからさ……」
嬉しそうな、それでいて少し寂しそうな表情を見せる晃。
「……白雪のこと大切なんだな」
「あ〜、いや否定できないな。まぁ、友也のことも親友として大切だけどな!」
「おう、ありがとな」
俺へは親友としての大切だが、白雪に対してのそれは幼馴染や親友としてのものとは別に好きな人へのが混じっていると思う。
だけど同時に今の立場が崩れるのが怖いっていう、俺自身も成実に告白する前にしてたような目をしている。
いつから想いを抱いていたかは分からないが、もどかしくて背中を押したい気持ちがある。もしかして俺のうだうだ言ってた時の晃の気持ちもこんな感じだったのだろうか。
「どうかしたか?」
「あぁ、いや……」
つい考え事をしながらじっと見すぎてしまった。
「何か言いたいことでもあるんじゃないのか?」
「相変わらず鋭いな……。まぁ、無くはないな」
「予想はついてるさ。ははっ、もしかしたら今日までこうやって休み前に誘っていたのも、背中を押して欲しかったのかもしれないな……」
珍しくしおらしい様子だ。もしかすると随分と前から想っていたのかもしれない。それなのに俺ばかりが相談やらをしてしまっていた。
「……白雪のことどう思ってるんだ?」
「いつにも増して回りくどいなぁ。あぁ、好きだよ。ずっと前から」
「そうか……晃はどうしたい?」
「できることならずっと隣にいたい、かな」
「おう、ならそうしろよ。それで告白するって気があるならすればいい。骨は拾ってやる」
「失敗前提かよ!」
「ははっ。ようやく辛気臭い顔じゃなくなったな。一つ言っておくけど、成実といる時も楽しそうだが、なんだかんだで白雪はお前といる時が一番笑顔だぞ」
親友がずっとテンション下がってる状態なんて嫌だし、美味いご飯も美味しくなくなる。少し投げやりな感じになってしまったかもしれないが、いつも通りの晃が俺も白雪も一番好きだしな。
「ははっ、そうか……。ていうかそんな酷い顔だったか?」
「あぁ、こっちまで気分が下がる感じだった。昔、俺を助けてくれた時みたいに、いつもみたいに笑顔で明るい晃なら大丈夫だ」
「あぁ。ありがとな! でも、いざ告白しようってなったらこんなにも緊張するのか……」
「まぁ、晃の場合は何年も幼馴染だったからっていうのもあるだろ」
「そうだな。でも、だからこそこれからも華とはずっと一緒にいたいと思う! 夏の間にはどうにかするよ!」
「おう、何かあれば言ってくれ。まぁ、告白するとしたら旅行中とか祭りとかみたいなイベントに合わせるのがいいか?」
「なるほど。経験者の言葉は違うな!」
「からかうな。というか実は余裕あるんじゃないのか? 今から呼び出すか?」
その後もわちゃわちゃと話しながら店を後にした。
親友二人の恋の行方か。もし、万が一にも失敗したら今までの関係じゃ居られなくなるのだろうか。そう考えると安易にあんなことを言ったのは失敗だったのかもしれないが、それでも二人ともに幸せになって欲しい。
あのままでは晃はずっと気持ちを燻らせてしまう。
俺はただひたすらに、告白の成功を祈りながら帰路を歩いていった。
告白って心拍数やばいくらいになります。それに失敗したら辛いです。まぁ、経験なんてありませんが……
というか気付けば初投稿から早二ヶ月ですね。長い間ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします。
それではまた次回に会いましょう。




