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84.期末対策の勉強会


「体育祭が終わったと思ったらすぐに期末だ〜」

「ははっ、そうだな。晃、今回もちゃんと勉強やってるか?」

「一応だけどなぁ。嫌でもやらないと赤点取って夏期補習はシャレにならん」

「それは同意だな。あー、一緒に勉強会でもするか?」


 去年末も勉強会をした。あの時は別件もあったが、今年は純粋な勉強のみの物をやろうかと提案したタイミングで白雪が登校した。


「おはよう二人とも。そちらも勉強会するのかい?」

「おう、おはよう」

「おはよう白雪。もしかして白雪と成実もするのか?」

「あぁ、そうさ。良かったらだけど一緒にやるかい?」

「いいのか?」

「もちろんだよ。晃の理系への苦手意識もそろそろ改善してほしいね」

「友也……本当にやるのか? 華は厳しいぞ……?」

「ふふっ、それは晃にだけだよ。まぁ、その前にまずは成実にも聞いてからだね」


 そして成実の話題を出した時にちょうど彼女も登校してきた。


「おはよう〜、何の話してたの? 呼んだかな?」

「ナイスタイミングだよ、成実」

「あぁ、俺と晃で勉強会しようと思ったんだが、成実たちとも合同でいいか?」

「そういうことなら私はいいよ!」

「決定だね。いつどこでかはこれから決めていこうか。期末まではあと二週間ほどしかないからしっかりやらないとだよ」

「そうだね!」

「だな。まぁ、復習はしてるが、分からないところもあるかもだから教えてくれると助かる」

「あぁ、俺も凄いお世話になると思うから、よろしくお願いします!」

「ふふ、晃には私がみっちり教えてあげよう」

「お、お手柔らかに頼みます……」


 にこやかな白雪と震える晃。まぁ、白雪が付くなら晃は前回よりも成績が上がるのではないだろうか。

 俺も気を抜いたら成績を落とすかもしれないので、気合いを入れよう。


「今回も頑張ろうね、友也くん!」

「あぁ、今回こそは二人に追いつきたいな」

「ふふっ、簡単には負けないよ?」

「望むところだよ」




 というわけで昼のうちに相談して、今日から早速放課後に図書室で勉強することになった。自習室もあるが、あそこは音を立てるのも禁止なので小声でなら教えあっても問題はない図書室でということにした。



「それじゃ早速始めようか」


 各々が教科書や参考書を取り出して勉強を始める。

 何かあれば随時聞いてくれとは言われているが、まずは改めて基礎から復習していくか。


 二人二人で向かい合うように座っており、晃と白雪が隣同士だが、たまに晃が聞いては白雪がしっかりと教えている。苦手意識があるだけでしっかりと教えれば理解してくれるので、教える側としても晃相手だとやり甲斐もあってやりやすい。



 ん、この問題は……


「すまん成実、少し聞いてもいいか?」

「うん、大丈夫だよ。どれかな?」


 教えるために席を近づけ、彼女が肩がくっつく辺りまで来る。


「これなんだが……」

「あー、了解っ。これはね――」


 別のことに意識が割かれるのは集中しきれてない証拠だろう。彼女の教えを聞くために頭を切り替える。


「――って感じなんだけど、分かったかな?」

「あ、あぁ、教えてくれてありがとな」

「うん、他にもあったらまた聞いてね」


 そう言って席を元に戻す彼女。最初こそ集中できていなかったが途中からしっかりと切り替えられたため、彼女の分かりやすい説明で十分に理解ができた。



 その後もいくつかの問題を解き、少し疲れたため伸びをしていると、床に消しゴムが落ちていることに気がついた。


 誰のかは分からないがまずは拾おうと手を伸ばすと同時に、すぐ横から自分とは別の手が伸びてきた。


「あっ……」


 そのまま指先が触れ合う。ピクっと反応した後、お互いに手を引っ込めて相手を見る。


「な、成実か」

「う、うん。さっき落としちゃって……」


 そう言いながら彼女は消しゴムを拾い上げる。

 お互い消しゴムを拾おうと前屈みになっていたため、自然と顔が近くなっていた。


「と、とりあえず勉強再開するか」

「そ、そうだねっ」


 今までに手を繋いだことも何度もあるのに、場所か不意だったためか、お互いに少し照れていたと思う。



 そのまま勉強を再開して気を紛らわすように集中していると、ふと声をかけられる。


「友也くん」

「あ、あぁ、なんだ?」

「そろそろ下校時間だよ?」

「もうそんな時間か」

「あぁ、すごい集中力だったな」

「ふふっ、とりあえず帰る準備をしてしまおうか」


 何か含みのある笑みをしながらそう言う白雪。




「友也くん、華ちゃん、またね!」

「おう、またな」

「あぁ、また明日」


 四人で校門を出た後、家の方向が違う晃と別れ、今しがた成実とも別れの挨拶をした。


「ふふっ」

「どうかしたか?」

「いや、二人は相変わらず仲が良いなと思ってね」

「ん、どうした急に?」

「消しゴム」

「――ッ!」

「あとは最後こそ集中してたけど成実に教えてもらった時は雑念が入ってたよね。あっ、責めてるわけじゃなくて、仲が良いって思った原因を話してるだけだよ」

「そ、そうか……。よく見てるんだな」

「まぁね。家での癖かな」


 家での……。いつか一緒に帰った時も思ったが、今でこそ普通に話せるようになったが、昔は親と折り合いがつかなかったりした白雪。家では心が休まらず、三人で遊ぶ時が楽しいと言っていた記憶がある。


「まぁ、仲がいいのは白雪と晃もだろ」

「そうかい?」

「あぁ。今日も甲斐甲斐しく教えていたし、少し前だが体育祭の借り物競争の時もうだったろ?」

「あ、あぁ、そうだね……。借り物競争の時は不覚だったよ」


 晃の好きな人として連れていかれた彼女。あの時のお題がわかった時の表情が照れたような、嬉しそうなようであった。


「まぁ、私も晃のことも友也のことも好きだよ。幼少からの友人だ。これからも仲良くして欲しい」

「あぁ、こちらこそだ。それに今まで助けてもらいっぱなしだし、今後何かあれば協力を惜しまないよ」

「ふふっ、ありがとう友也。それじゃ私もここでお別れだ」

「おう、またな」

「あぁ、またね」



 俺が一番荒れてた頃に普通に接してくれた二人だ。そして白雪も晃のおかげで自分に正直になれたと随分と前に話を聞いた。


 成実を幸せにすると同時に、晃と白雪にも幸せになってもらいたいと思っている。二人のためならば何であれ、俺は協力を惜しむつもりは無い。そんなことを考えながら一人、家への道を歩いていった。

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