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83.嫉妬と感謝


「あっ、委員長〜、やっほー。これ課題だよ」

「おう、ありがとな」


 今はクラス委員長としての仕事で、前日に出された課題を集めている。


「一ノ瀬くん、まだ終わってないの……ちょっと待っててくれない?」

「あ、あぁ、まだ時間もあるし待っとくよ」

「あっ……」


 クラスのある女子生徒からいきなり手を握られて懇願された。朝のHRまでに職員室に提出するのだが、時間もまだあるので大丈夫だ。

 というか今までに成実と手を握ったりしていなかったら、いきなり握られた時に動揺してしまっていただろう。これも成長、だろうか?


「あー、委員長、申し訳ないんだけど写させて貰えない? お礼は何でもするからさっ!」

「何でもって……はぁ、今回だけだぞ。お礼はいいから次から真面目にやれよ」

「はーい。ありがとね委員長」

「むぅ……」


 こうしてクラスメイトと話をできるのも、クラスに馴染んできた証拠だろう。しかし先程から少し視線を感じるような……



 しばらくして写していた生徒からも課題を受け取り、成実に声をかける。


「成実」

「なっ、何かな?」

「あと何人か分かるか?」

「あ、うん、これで全員だよ」

「了解だ。出しに行こうか」

「そ、そうだね」


 成実と共に課題を渡しに教室を出る。気のせいかもしれないが成実の様子が変というか、よそよそしい気がする。


「何かあったか?」

「えっ!? な、ないわけじゃないけど、私の問題だし……」

「相談に乗れることはあるか? なんだか少し元気ない気もするしさ」

「えっと……まず、ごめんなさいっ」

「え?」

「その、さっきのもこれまでも、友也くんが他の女の子と仲良くしてたりすると気持ちがモヤモヤするの……」


 さっきと言えばクラスの女子生徒から課題を受け取ってた時だろうか。半ば向こうからしてきてたとはいえ、彼女がいる身としては誠実さに欠けていたと思う。



「いや、それなら俺の方こそごめんな」

「えっ、友也くんが謝ることじゃないよ!」

「そうじゃなくて。成実が男子に囲まれてたり、課題を受け取る時に手が触れたりしてるので俺も嫉妬してたからさ……」


 思い返せば、課題は委員長のどちらかに出せば良いのだが、男子の多くは成実、女子の多くは俺に渡していたと思う。


「成実が誰と仲良くしても何かを言う権利はないし、離れていかないって信じてるよ。まぁ、それでもちょっとヤキモチを焼いちゃうよな」

「うん、私も。友也くんを信じてるけど、だからこそなのかな、ヤキモキを焼いちゃうよっ」

「同じだな」

「そうだねっ」

「ははっ」

「ふふっ」


 お互いが好きだからこそ他の異性と話されると嫉妬もしてしまうが、絶対に離れていかないと信じているし、離すつもりもない。



「話聞いてくれてありがとね」


 課題を提出して教室へと戻る時、隣にいる成実からそんなことを言われる。


「俺の方こそ。話してくれてありがとな」

「うんっ。あのさ、これからも、もしかしたらヤキモキ焼いたりしちゃうかもだけど、私は絶対に友也くんから離れないからね?」

「俺の方こそ。離さないし離れないよ。これからもずっと一緒だ」

「うん!」


 と、そんなことを話していたのだが、ここがどこかを失念していた。廊下にいた生徒からの視線が……。微笑ましそうな表情をされるといたたまれない気持ちになる。

 女子は女子で友人と何か話してるし、男子もニヤニヤしている。いっその事、男子からは悔しがられていた方がまだ恥ずかしさも少なかっただろう。


「と、とりあえず早く教室に戻ろうか……」

「そ、そうだね。急ごっ!」


 俺の手を取り、駆け足で教室へと向かう彼女。スッキリとした表情で生き生きとした彼女は、以前のような優等生の面影はなく、ゲームをしている時やデートの時の等身大の女の子だった。


 そのまま教室へと入って、再び教室の生徒からも視線を集めたのは言うまでもない。




「あははっ、そういう事か! ははっ!」

「晃、笑いすぎだぞ」

「あはは、すまんすまん。でもそうだよな〜。まぁ、嫉妬するってことは相手のことがそれだけ好きなんだろ。なら何の心配もないだろ」

「そうだが……」


 昼になりいつもの場所、いつものメンバーで昼食を摂る。


「ふふっ、成実も友也も仲睦まじそうだね」

「まぁ、実際そうだと思ってるし、そう見えるなら良かったよ」

「友也も最近素直になったよな〜」

「そうか?」

「あぁ、神崎さんと会ってから変わったよ。前も言ったけど、ありがとな、神崎さん」

「ううん、私の方こそだよっ。友也くんと出会ってから変われた。ありがとね、友也くん」

「おう」

「確かに成実も随分と変わったね。まぁ、私は以前よりも今の方が好きだよ」

「華ちゃん……ありがと!」


 そうして雑談をしながら昼食を食べ終える。



「ご馳走様。成実、今日も美味しかったよ。ありがとな」

「私がやりたいことだからねっ。こちらこそいつも美味しそうに食べてくれてありがと!」

「おう。でもやっぱり何かお礼がしたいな」

「うーん、そうだよね……あっ、それなら、また今度一緒にお菓子作らない?」


 今まではお礼がしたいと伝えても、断られるのが関の山だった。しかし、今回は受け入れて貰えたため、つい食い気味に返事をしてしまう。


「い、いいのか! いつでも、いくらでもやるぞ」

「ふふっ。あ、やるなら期末が終わってからの方がいいよね?」

「まぁ、そうだな……」

「あっ」

「どうかしたか?」

「あの、華ちゃんたちも誘っていいかな?」

「白雪と晃か? 俺は構わないよ」

「やったっ。あ、場所は私の家にする?」

「んー、うちでもいいけど、場所とかいつやるかは後々決めていこうか。とりあえず教室戻ろう」

「そうだね!」


 そうして期末の後の予定も一つきまり、少しテンションが上がった状態でその日は授業を受けた。


 今回もありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。

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