80.学校の雰囲気と誕生日会
翌日、いつものように学校へと登校する。いつもと変わったことがあるとすれば、登校中にあった鋭い視線や恨み妬みなどが消え、廊下でも何人かに挨拶された。
教室へと入ると、たまたま自分に関する声が聞こえてきた。
「昨日の一ノ瀬凄かったよな」
「あぁ、彼女のために努力して、最後まで諦めずに食らいついて……」
「今まで地味なやつだと思ってたけど、かっこよかったよな」
「そうだな……って本人来てるじゃん。おはよう一ノ瀬」
俺は面食らいつつも挨拶を返す。
「お、おう、おはよう」
「松村から色々と聞いたんだが、今まで悪かったな。正直悔しくもあるが、神崎さんのこと幸せにしろよ!」
「あぁ、もちろんだ」
そうして戸惑いつつも自分の席へと向かう。松村から聞いたと言っていたが、本当に色々と手を回してくれているようだ。
「お、友也、おはよう」
「やぁ友也、おはよう」
「おぉ、晃、白雪、おはよう」
やはりいつものこの二人が落ち着く。というか他人と話す機会が減っていたため、さっきはコミュ障みたくなっていなかっただろうか?
「ははっ、良かったな友也!」
「負けた後に潔く身を引いてくれた松村にも一応感謝だね。まぁ、友也と成実を認める云々とか言っていたことは許していないがね」
「そうだな。白雪は……まぁ、許す許さないはともかく、怖い顔してるぞ」
「おっと、失礼」
俺たちの事で怒ってくれるのは嬉しいが、黒雪姫が出ている微笑みは普通に怖い。
「まぁ、丸く収まって良かったよ」
「そうだな。まぁ、もしまだ何か言ってくるようであれば俺と華で対処するからいつでも頼ってくれな!」
「それは嬉しいが、さすがに友人に頼りっきりになるつもりは無いよ。それにもう大丈夫だと思う」
「そうか?」
「あぁ」
さすがに自分関係のゴタゴタにこれ以上二人を巻き込むのはどうかと思うし、頼りっぱなしは対等な友達では無いと思う。それに松村は約束を守ってくれているようなので大丈夫だろう。
「おはよっ、友也くん」
「おう、おはよう」
先程までの話を切り上げ、三人で談笑してると、成実が登校してきた。成実は教室に入って、周囲を見回してたようだったがどうしたのだろうか。
「うん、大丈夫そうだね。これで晴れて私たちは学校でも恋人らしくいられるね!」
「あ、そういう事か。そうだな。それと心配かけて悪いな」
彼女も彼女で、今後の学校での周囲を気にかけていたようだ。
「ううん、大丈夫! それよりも早く明日にならないかな〜」
「明日? 何かあるのかい?」
「華ちゃん! 明日の放課後に友也くんと……」
「ちょ、ちょっと落ち着け、成実。声が少し大きいぞ」
「あっ、ごめんねっ」
喜んで貰えるのは嬉しいが、教室内に聞こえるくらいの声でデートに行く話をされるのは気恥しい。
「えっとね、明日の放課後に友也くんとデートに行くんだ」
「へぇ、なるほどね」
「ほー、友也から誘ったのか?」
「あ、あぁ、そうだな」
「ははっ、そんなに照れるなって!」
「て、照れてないから。それより、今年の誕生日のはどうするんだ?」
「友也、露骨に話を逸らしたな。まぁ、今年も友也の食いたいところに行く感じでいいだろ?」
「それもそうだな……」
中学くらいから毎年、この三人の誰かの誕生日の時は、誕生日でない二人が折半して食事を奢ることになっている。いわば誕生日会みたいなものだ。まぁ、奢る分、プレゼントは無くしているが。
ちなみに、瑠璃や香織さんも予定が合えば一緒に行ったりもしている。
白雪と晃の誕生日は同じ月で近いので、食べたいものが一致した時は俺一人が二人に奢ったりもしていたが。今年はどうしようか……と思っていると成実が不思議そうな顔をしていたので、簡単に説明をした。
「成実も来るかい?」
「いいの?」
「私は構わないよ。あと、三人の悪習に巻き込むんだ。成実に奢らせるつもりはないかな」
「悪習って……まぁ、でも、そうだな。俺は文句はないぞ。瑠璃ちゃんもそうだったしな」
「えっ、さすがに申し訳ないよ……」
「なら、成実の誕生日にも同じようにやるか? 晃、白雪、二人はそれでいいか?」
「大丈夫だよ」
「もちろんいいぞ!」
「だそうだ、成実」
「それじゃ……うん、お言葉に甘えて、私もこれから参加させてもらうね!」
結局、朝の時間に俺の誕生日は何にするかは決められなかったが、成実がこの毎年の習慣に参加することが決まった。
お昼は教室でも良かったが、中庭の方が落ち着くということで、今日も中庭で四人で昼食を食べる。
「友也、成実。今週末は空いているかい? 朝に話した誕生日会を週末にしようかと晃と相談しててね」
「そういう事か。俺は空いてるぞ」
「私も大丈夫だよっ」
「決まりだね。友也は土曜日までには何にするか決めておいてほしい」
「了解。考えておくよ」
今までは焼肉や鍋、ピザに寿司、それから晃のリクエストで俺と白雪で手料理を振舞ったこともあったな。
まぁ、今までのと被ったらいけない理由もないし、自分の食べたいものを考えさせてもらおう。
そうして昼も終え、教室に戻る。
視線や雰囲気が変わったのは良かったが、クラスの一部が生暖かい視線で見てくるのは、なんとも言えないむず痒さがある。
まぁ、学校一の美少女とクラスの地味な生徒のカップルだ。以前のような視線が消えたのだから、甘んじて受け入れるべきだろう。
ただし晃と白雪は別だ。次にそんな目で見てきたらデコピンでも食らわせてやる。
今回もありがとうございました。また次もよろしくお願いします。




