75.体育祭 その1
体育祭当日、今日の結果で今後が決まる。とはいえ、負けてもどうとでもやりようはあるので必要以上に気負わず、彼女に活躍を見せることを一番の念頭に置いて頑張っていこう。
「おはよう友也」
「おはよう晃。白雪は委員か?」
「あぁ、そうだ」
体育委員としての仕事があるらしく、今日は晃と白雪は早くに登校していた。俺は登校した後、更衣室で着替えを済ませて教室に戻る。
「おや、おはよう、一ノ瀬くん」
「あぁ、松村。おはよう」
今回の部対抗リレーで競うことになっているサッカー部のエースでクラスの中心人物でもある松村。
「今日はよろしく頼むよ」
「こちらこそよろしく頼む」
そうにこやかな笑顔で手を差し出してくるので、俺も手を出して握る。
「それで友也、準備の方は大丈夫か?」
「あぁ、体感でしかないが、晃と走った時よりも仕上がってて調子も良い。心の方も全く問題ないよ」
「そりゃ良かった。本番で緊張して全力出せなかったら元も子もないしな」
「あぁ、今日は世話になる」
「おう!」
晃と話していると、着替えを済ませた成実が教室に来る。
「おはよう、友也くん、和泉くん」
「おう、おはよう成実」
「あぁ、おはよう神崎さん」
成実は付き合いがバレた後、砕けた感じになってからは白雪とだけでなく、晃とも以前より親しくなった。
「成実も今日はよろしくな」
「うん!」
三人で話しをしていると、白雪も委員の仕事が終わって教室に戻ってきたため、会話に加わる。
ちなみに今日のリレーの順番は、白雪が最初で晃、成実、俺の順番だ。
「しっかりとリードしてバトンを渡すからね!」
「おう、俺も普通のサッカー部には負けないぞ」
「私もトップバッターだが誰相手でも負けるつもりは無いよ」
そんな心強い味方の声を聞き、俺も気合を入れる。
「あぁ、今日は全力で勝ちに行くよ」
そんなこんなで開会式を迎え、体育祭がスタートした。
「一〇〇メートル走は最初の方だったな」
俺の出場する一〇〇メートル走は序盤の種目なので、予め移動をしておく。
「友也くん、頑張ってね!」
「あぁ。行ってくるよ」
同じ白組の成実に声をかけられて、俺は待機場所へと向かう。
ちなみに紅白について、俺と成実は白組、白雪と晃に松村、それから一年の瑠璃は紅組となっている。
待機場所へと着くと既に多くの生徒が集まっており、前の方から整列がなされていた。
「さっきぶりだね友也」
「白雪……委員の仕事か?」
「あぁ、ここと借り物競争は私の担当だ」
「もしかしてだが……借り物競争のお題って変なのあるか?」
「ははっ、秘密だ。友人とはいえ、ネタばらしはできないよ」
「そうか」
「すまないね。あ、友也はこっちだ」
白雪に案内されて百メートルの列へと並ぶ。
同じ出走レースの四人の内、俺を除く三人は運動部だった。しかし、リレーではサッカー部のエースが相手だ。ここで躓いているようではきっと勝てないだろうから、しっかりと勝ちに行く。それに彼女に活躍を見せたい思いがある。
競技が開始され、しばらく待機していると、自分たちの順番が回ってきた。
「一ノ瀬、お前には負けん!」
「あぁ、負ける訳にはいかない……」
そんな声が隣から聞こえてくる。しかし、こちらとて負けるつもりは一切ない。
『位置について、よーい……』
――バンッ
そんな競技用の銃の音でスタートをする。
出だしは好調だ。他の運動部の人と横並びに走っていく。
しかし今日は全力で勝ちに行くつもりだ。他の男子から少しずつ差を開き、俺自身が先頭を走る。
足を前へと動かし、腕を思い切り振って走る。
少し後ろから三人の息遣いが聞こえてくるが、さらに差を開いていき、そのまま一着でゴールテープを切る。
「はぁはぁ……ふぅ、一着だ」
そして生徒席の彼女の方に視線をやると、嬉しそうにこちらを見ていたため、軽く手を振り返す。
少し遅れて他の男子がゴールをする。
「はぁはぁ……は、早過ぎないか……」
「本当に帰宅部かよ……」
「松村、あいつ勝てるのか……?」
そのまま委員の人に案内をされ、一位の列へと並んで腰を下ろす。
その後、全生徒のレースが終わり、解散となった。
「友也くんっ、お疲れ様!」
「あぁ、ありがとう、成実」
席に戻ると彼女が労いの言葉をかけてくれる。
「すっごい早かったね?」
「まぁ、結構走り込んできたからな。勝ててよかったよ」
「男子の中でも一番早かったかも!」
「ははっ、そうだと嬉しいな。部対抗リレーではどうなるかな……」
「本番は一緒に頑張ろうねっ」
「あぁ!」
部対抗リレーは昼明けの最初、紅白リレーは全競技の最後だ。
そして午前の競技が少しずつ終わっていき、昼前最後の競技である、借り物競争となった。
その〜で分けてますが、4までで終わります。
前中後編で分けたかったけど、思いの外伸びましたことをご了承ください。
それでは、今回もありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。




