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69.休み明けと噂


 『学園の天使である神崎成実が男と歩いていた』


 翌日に登校して教室に入ると、どこからともなくそんな噂が聞こえてきた。


「おい、友也……」

「あぁ……」


 成実はもう父親とはどこかに行くことはできないし、兄弟がいるとも聞いたことがない。であれば可能性としては俺がになるのだが、もしかしてどこかで見られたのだろうか。



「おはよう晃、友也。噂について聞き耳を立てながら来たんだけど、どうやらモールで見かけられたらしいよ」


 登校してきた白雪が小声でそう伝えてくれる。


「あそこか」


 ここからは離れてるとはいえ、行く人がいないとも限らない。あそこは人も多く、こちらが気付かず、逆に他者から見られていても不思議ではないが……


「油断したなぁ……」


 反省せざるを得ないだろう。昼こそ一緒にいるとはいえ、我慢させているのだ。それなのに俺のせいでバレるのはとても申し訳ない。


「友也のせいじゃないとは思うがなぁ。まぁ、これからどうするんだ?」

「そればっかりは本人と相談だな」


 どうするにせよ本人と話し合うべきだろう。そう考えていると、噂の渦中の人物が登校してくる。


「おはようございます華ちゃん、一ノ瀬くん、和泉くん」

「うん、おはよう成実」


 白雪に続いて、俺と晃も返事を返す。すると後ろの方で、もしかして晃なのではという声が生まれていた。




 その日は普段以上に視線が注がれ、少し疲れた様子の成実、晃と白雪といつも通りに中庭で昼食を取る。


「で、どうするんだい友也?」

「あぁ、俺としてはこんな状態が続くのは本望ではないから、もうバラしてもいいとは思うよ」

「でも、それだと友也くんが……」

「しかし、成実が本当は必要のない苦労をするのはな……」

「……友也くんが決めてください。私はどちらでも大丈夫。それに噂だから放っておいてもいずれは収まるはずです」


 学校モードの状態で彼女はそう言う。俺自身がどうなろうとも構わないが、彼女が大変な思いをするのは黙認できない。しかし、どのタイミングでどう言うのが良いのだろうか……


 そんなことを考えつつ、食事を終えた俺たちは教室へと戻る。



「あの、白雪さん……」

「何かな?」

「その、神崎さんのことなんだけど、何か知らないですか?」


 クラスの一部の女子が白雪に対してそんなことを聞く。すぐ近くに成実がいるからか、相手の女子たちは凄い小声だ。


「どうして私が知っていると思うの?」

「だ、だって、神崎さんと仲良いし……」


 無表情で受け答えをしている白雪。晃や俺とは普通に話してくれるため忘れていたが、基本的にはあんな感じだ。だからこそ黒雪姫だなんて呼ばれてたな。


「さすが黒雪姫」


 横で晃がボソッと呟くと、その瞬間に白雪から晃が睨まれた気がする。ご愁傷さまです……



「も、もうやめとこうよ」

「でも気になるじゃん」


 そんなことを白雪に聞きに行った女子たちはしている。


「そんなに気になるなら本人に聞いたらどう?」

「「え!?」」


 !? 一応言うことに決めたが、具体的にどうするのかは決めていない。というか今、成実も驚いてなかったか?

 どうしようもないし、むしろ言う機会にもなりえるため、驚きはしたが感謝すべきだろう。



「え、じゃあ、神崎さん。聞いてもいいですか?」

「あ、いや……」


 そう言い淀んで、俺の方をチラッと見る彼女。



「……もしかしてだけど、一ノ瀬だったりしない?」


 白雪に聞いた後、神崎の方に行った女子の一人がそんなことを言う。


「うち見たんだけどさ、雰囲気とかも変わってて分からなかったけど、よく見たらそうだし」


 その声と同時に成実へと向かっていた視線が俺に集まる。というかこんな状態で午前中は授業を受けていたのか……すぐに助けてやらなかった自分が情けない。



 俺は深呼吸をする。晃は戸惑ったような心配したような表情をしてこちらを向いている。成実も不安そうな顔をしているが、そんなに頼りないのかな。


「……うん、事実だよ」


 成実に問いていた彼女たちだけではなく、クラスに聞こえるようにそう言う。緊張で声が震えかけたが、多分大丈夫だっただろう。

 クラスの反応はいくつかに分かれた。男子の大半は驚いたり憤ったり。女子は安堵したような人もいれば、ガッカリしている様子の人もいる。安堵しているのは晃に好意がある人だろうが、ガッカリの方はもしかして成実に好意を持っていたのだろうか?



「と、友也くんっ」

「気にしないで大丈夫だよ。それにいつかはバレただろうしね」


 彼女は不安そうにこちらを見るため、努めて優しい声をかける。

 テスト前に衝撃を受けるクラスメイトには申し訳ないが、もう隠し通すのも難しかっただろう。というか近くのスーパーに買い物に行ったりして、今までバレてなかった方がおかしいのだ。



「な、なんで一ノ瀬なんだよ! 和泉なら分かるが」

「そうだそうだ!」

「マジかよ……」


 予想通りの反応が出る。さすがに虐めなどに走る人はいないと思いたいが、明日からは気をつけるべきかもしれないな。と、そんなことを考えていると突然肩を叩かれる。



「ん?」

「一ノ瀬くん、勝負をしないか?」


 ついに見つかりましたね。それから後ろからかけられた声……


 中途半端なので一時間後にもう一話投稿します。


 それではまたお会いしましょう。

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