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7.何気ない日常

 翌朝、俺は普段よりも早くに目覚めた。学校に行くまでに時間がかなりあったので、昨日の夜の出来事を思い返し恥ずかしさで悶えていた。


「俺、何言ってるんだ!? いなくなるわけないだろう……ってなんだよ!」


 昨夜は成実と銀の世界に入り、アイテムを際限なく使ってふざけていた、そこまでは良い。だがその後、幻想的な雰囲気に加え、二人でずっと一緒にやっていたゲームだったからこそ思い入れが深く、いざ辞めるときになると二人とも感傷的な気持ちになっていたため、しんみりした雰囲気は良くないと思い……


「いや、だからといってあれはないだろ! 成実に寂しい思いをして欲しくなかったとはいえ……あー、はっずかしい……」


……コンコンッ


 自分の言動を振り返り、恥ずかしさで悶えていると突然部屋のドアがノックされた。


「お兄ちゃん、朝からうるさいよ〜?」


 眠そうな声で妹の瑠璃が注意をしてきた。


「すまん! 気を付ける」

「私じゃなかったら怒ってたよ、もぉ」

「ほんとに申し訳ない。朝食もすぐに作るからちょっと待っててくれ」

「了解だよ、お兄ちゃん」



「そんなに声出てたか……って、もしかして瑠璃にさっきのこと聞かれたか!?」


 その後朝食を作りながらも、瑠璃に聞かれていたかどうか分からないまま悶々とした気持ちで朝を済ませ、学校に向かった。



 気を紛らわすために走って学校に向かったので普段よりも少しだけ早く着いてしまった。教室には僅かな生徒しかいないため、荷物を置いて本を読んで時間を潰そうとしたが、どうしても昨夜のことが思い出されてしまった。


「おはよう、友也」

「っ! な、なんだ、晃か。おはよう」

「なんだってなんだよ……。どうかしたか?」

「いや、なんでもない。大丈夫だ」


 普段と違い、晃からの挨拶に過剰に反応してしまったため不思議に思われてしまったが、きっと晃は気にしないだろう。そう考えていたのもつかの間、今一番意識している相手が教室に入ってきた。いつものように周囲に挨拶をし、その過程で俺と晃にも挨拶をしに来た。


「お、おはようございます、一ノ瀬くん、和泉くん」

「おはようございます、神崎さん」

「おっ、おはようございます」


 挨拶の時に少し目が合ったため、俺は声が裏返りそうになるのを抑えながら挨拶を返した。神崎さんの方も少しだけ動揺していたように見えたが、そのまま自分の席へ移動した。



 

その後は何事もなく昼休みを迎え、いつも通り晃と昼食をとっていると、晃がじっと見ていることに気づく。


「な、なんだよ?」

「いや、友也が先週にも増して違和感があるような気がしてな。何かあったか?」

「いや……前からやっていたゲームがサービス終了して少しだけ気分が下がってただけだぞ」

「……そうか? それはドンマイだな」


 そう言って晃は少し疑った目を向けたが、すぐにドンマイドンマイと慰めてくれた。一応嘘は言ってないからこそ晃も深くは聞いてこなかったんだと思う。そもそも晃は人の感情の変化に機敏なため、嘘をついたところで騙せるとは思っていないが。


「まぁ、何かあれば相談に乗ったり愚痴に付き合ったりはできるからな。吐き出すことで自分の中でも整理出来たりするしな」

「あぁ、何かあれば頼らせてもらうよ」

「おう!」


 それに、気遣いもできて仲間思いな良い奴なんだよな。そもそも俺は女子と関わったことが少ないから、何か困ったら遠慮なく頼らせてもらうことにした。




 そのまま昼食を食べ終え、午後の授業も受け終わった俺は買い物に行くことにした。普段利用しているスーパーは家とは反対側の駅側にあるため、瑠璃に買い物に行くから帰りが遅くなると連絡を入れてから向かう。


 駅前のスーパーに着き、買い物かごに必要な食材を入れていくと、目の前に見知った顔、というか今日散々意識していた人がいた。流石に挨拶しないのもどうかと思い声をかける。


「神崎さん、こんにちは」

「えっ! 友也くん?」

「一応駅近いから他の生徒いるかもだし、苗字呼びでお願い」

「そ、そうだね。……私は別に他の人にどう思われても気にしないんだけどな」


 声をかけると名前呼びをされたので慌てて訂正する。最後に何か言っていたような気がしたが聞こえなかったため独り言だと判断し気にせず話を続ける。


「そういえばどうしてここへ?」

「あ、えっと、前に一ノ瀬くんが料理得意って聞いたから、私もやろうかなって思って」

「そ、そうなのか。ちなみにメニューを聞いてもいいか?」

「自分一人で作るのは久しぶりだからカレーにしようかな」

「なるほど、確かにいいかもな」


 しばらくは二人で少しだけ料理のことや世間話をしていたが、話が変わりゲームのことになった。


「そういえば銀の世界は終わっちゃったけど、これからどのゲームをするのか決めてなかったよ」

「そうか……。ゲーム性が近い方がやりやすいよな。同じオープンワールド系だし原女神なんてどうだ?」

「あ、名前は聞いたことあるよ! ユーザー数も結構多いはずだよね?」

「そうだな。少なくともすぐにサービス終了することはないと思うぞ」

「あはは、そうだね」


 原女神について少し説明をしたら成実は興味を持ち、早速今晩始めてみることにしたようだ。


「分からないことあると思うし、通話しながらプレイしてもいいかな?」

「今晩か? 構わないぞ」

「ほんと! ありがとっ!」

「おう。それじゃ、俺はそろそろ帰るかな」

「あ、引き止めちゃってごめんね! またね!」

「あぁ、またな」


 俺は買い物の続きをし帰宅した。




「あ、お兄ちゃんおかえり。買い物ありがと〜」

「おう、ただいま」


 そう言って瑠璃は俺から買い物袋を預かり、夕飯の支度を始めた。その後、いつも通り二人で夕飯を済ませ明日の準備をした俺は成実に連絡を入れる。



「『こちらはいつでも大丈夫だぞ』っと」


 返信が来るまで原女神のストーリーの序盤の復習でもしようと思ってパソコンを開いたが、思いのほかすぐに連絡が返ってきた。


『私の方も大丈夫!』


「ん? RICEでの口調はゲームの時のにしたのか」


 そんなことを考えながら俺は返信をする。


『通話開始するか?』

『うん! 色々よろしくお願いします!』


 そうして二人は通話を開始した。

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