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67.会いたい思い

「ただいま」

「あっ、お兄ちゃんおかえり〜」

「おかえり、友也」


 彼女の家から帰宅すると帰ってくると、瑠璃と父さんが出迎えてくれる。どうやら夕食の準備をしていたようで、もう少しで完成するとのことなので、部屋に荷物を置いてからリビングへと戻る。



「お兄ちゃん、お父さん。完成したよ〜」

「おう、ありがとな」

「ありがとう、瑠璃」


 彼女の家で一切れだけガトーショコラを食べたが、夕食は普通に頂かせてもらう。まぁ、お腹こそ少し空いていたが、色々あって胸はいっぱいだが。



「それで初めての成実さんのお家、どうだったの?」

「あぁ、そうだな。まずは父さん、神崎さんと会社で親しかったり、飲みに行ったりしてるのか?」

「事実だ。たまに相談に乗ってもらってたんだよ。色々と親としては彼女の方ができてる人だったからね」

「それはいいんだが、あんまり俺の事を話すのはよしてくれ……それとお土産で気付かれたし、何より恥ずかしい……」

「あはは、そうだったのか。それは悪い事をした」


 笑い事じゃないんだがな。まぁ、結果的にはいい方向へと行ったし、この話はここら辺で終わりにしよう。


「まぁ、着いてからは普通に勉強して、あとはお菓子作りをしてから帰ってきたな」

「お菓子……何作ったの?」

「ガトーショコラ」

「今度私にも作ってね!」

「了解だ」



 その後は家族で団欒をしながら食事を楽しんだ。




「そういえばアストラル社が明後日に何か配信するとか言ってたな」


 成実と出会うきっかけとなった『銀の世界』を運営していた会社であるアストラル社が、動画配信サイトでGWの最終日に何らかの発表配信をするらしい。

 あのゲーム、あの会社がなければ彼女と会うことも、付き合うこともなかった可能性があるし、銀の世界は長年やっていたゲームだ。少なくない思い入れがある。


「夜の七時からだったよな」


 配信開始はGW最終日の夜七時からだ。彼女もその事は知っているし、見ると思う。


「っ! ……」


 彼女の事を思い浮かべると、別れ際の光景が脳裏に浮かんでしまう。


「会いたいな……」


 そう小さく呟く。三時間も前には一緒にいたにもかかわらず、何故かそんな言葉が口から漏れる。


 自分で自分の言っていることが一瞬理解できずにいる。


「今、なんて? さっきまで一緒にいただろ……」


 口に出してしまったからか、先程の思いが少しずつ大きくなってる気がする。どうやら自分が思っているよりも、彼女への思いは日に日に膨らんでいるようだった。


「まぁ、あと何日もしたら学校で会えるしな」


 そう自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせる。


 するとその時、RICEの通知音がスマホから鳴り響く。



『今、時間ありますか?』


 ちょうど考えていた彼女からの連絡だった。


『あぁ、あるぞ』

『電話かけてもいいかな……?』

『もちろんだ』


 思いもよらないタイミングでの彼女からの連絡。驚きつつも返事を返す。着信音がワンコール目を鳴るとほぼ同時に電話に出る。



『あっ、もしもし』

「あぁ、もしもし」

『友也くんの声だ……』

「ん? 俺にかけたんだから当たり前だろ?」

『それはそうなんだけどね……。ちょっと声が聞きたくなって』


 そんな可愛いことを電話口から言われる。思わず照れてしまい、俺は黙り込む。


「……」

『いきなりごめんね? あっ、出てくれてありがとっ。友也くんとバイバイしてからも、なんだかまたすぐに会って話したくなっちゃって……』

「お、俺もだ……俺も家に帰ってから、また早く会いたいだなんてずっと考えてたよ」

『そ、そっか……』

「あぁ……」


 彼女も同じ気持ちだったことに少し驚きつつも、それ以上の嬉しさが胸に込み上げてくる。


「ありがとな」

『えっ?』

「こんな俺を好きになって、恋人になってくれてありがとう」


 彼女と出会ってからというもの、俺の生活は一変した。今まで気にもしなかった身なりに気を遣い、彼女の隣に相応しい男になりたいと思って努力もしているつもりだ。

 まだまだ至らない部分もある。それに彼女からは色々と貰ってばかりだ。


『こちらこそだよ! でも、こんな、なんて言わないで欲しいな?』

「え?」


 先程は彼女が疑問を口にしたが、今度は俺の番だった。


『友也くんはかっこいいし、優しいし、それに自慢の彼氏だよっ。こんな、なんて卑下しないで欲しいかな』

「あっ、すまん……じゃなくて、今度からは気をつけるよ」

『うん!』

「まぁそれで言ったら、成実の方が自慢の彼女だな。非の打ち所が全くない」

『え、えぇ!? そうかなぁ?』



 その日は夜が遅くなるまでお互いの好きなところ、自慢なところを語り合い、最後にはお互い照れてしまったため、その話は終了した。



『それじゃ、そろそろ寝なきゃだね……』

「そうだな……あっ、そういえば数日後のアストラル社の配信は見るか?」

『もちろんだよ! リアルタイムで見る予定だよ?』

「そうか」

『あっ、友也くんさえ良ければ、通話しながら見る? パソコンで配信を見れば電話はできるし』

「そうだな……そうしようか」

『了解っ、決定だね! じゃあ、七時からだから、十分前くらいに通話を開始しよっか!』

「おう、了解だ」


 そうして明後日の約束を取り決めてから彼女との通話を終えた。

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