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60.ショッピングモール その5

 しばらくのんびり歩きながら、雑貨屋や服屋などのショーケースを見たりして、お腹を落ち着かせる。



「そろそろどこかの店にでも入るか?」

「うーん、そうだね。大分お腹も落ち着いたしそうしよっ!」


 そうして服屋の建ち並ぶフロアに行き、どの店がいいのか物色する彼女について行く。主に買うのは彼女になると思うので、こういう時は黙ってついていくのがいい。

 少しして彼女が手を引き、ある店へ向かう


「あっ、あそこにしよ!」

「ん? あそこって男物じゃないのか?」

「うん、友也くんさえ嫌じゃなければ、また色々着てもらいたいなって……ダメかな?」


 そう上目遣いで頼まれて断れる男がいるのだろうか。少なくとも俺は断れない。というわけでもちろん構わないと伝え、彼女についていく。


 しかし一つ気になることがある。


「前にもそうだったが、俺ばかり着飾るより自分の服はいいのか?」

「えっと、もちろん友也くんが色んな格好するのを見てるのは楽しいし、普段のイメージと変わるから改めて見惚れちゃうんだ……!」

「そ、そうか……」

「それに自分の服となるとすっごい時間かかっちゃうから……」

「俺はいくらでも待つけどな。それに成実が色んな服を着るのを見るのは楽しいだろうし、何より見てみたいと思うよ」


 彼女が俺を見たいと思ってくれるように、俺も彼女の色んな姿を見てみたい。


「そ、そっか……じゃあ、後で一緒に行ってくれるかな……?」

「おう、了解だ」

「ふふっ、ありがと! それじゃ、まずは友也くんからだね!」



 そうして店に入った後、何着かの服を見繕い、試着してほしいと言われる。

 彼女に言われるがままに着ては、見てもらうを繰り返していたが、納得するものはなかったようだった。

 俺としては彼女のコロコロ変わる表情を見ていて飽きなかったが、彼女はお気に召すものがなかったからか少しテンションが下がっていた。


「ごめんね友也くん……ついついはしゃぎすぎちゃって色んな服を来てもらっちゃって……」

「あぁ、落ち込んでたけど、そういう事か。それなら気にすることないよ。こういう時くらいしか色んな服着る機会もないしな」


 これは事実だ。落ち込んでいた理由が俺にあると知り、励ますようには言ったが、実際にカジュアルなものやシックなものなど、それから外出用だけでなく部屋着なども頼まれた。

 しかし、自分では選ばないような服もあり、こんなコーデもあるのかと勉強にもなる。



「それより次は成実だな」

「あっ、うん、……えっと、ここに来たら来てみたい店があったんだけど、行ってもいいかな?」

「あぁ、大丈夫だよ」

「その……引かない?」

「ん? よく分からないけど、それも問題ないぞ」

「うん、分かった。それじゃ、行こっ!」


 そう言って歩き始める彼女について行く。何が引かないなのかはよく分からないが、そんな変わった店なのだろうか? 彼女がどんな趣味であろうと受け入れるつもりだが……


 そうして歩いていき、ある一つの店に入っていった。外装は至って普通な服屋だった。


「えっと、ちょっと長くなるかもしれないけどいいかな……?」

「あぁ、大丈夫だよ。それに瑠璃の付き合いで何時間も付き合ったこともあるしな」

「そっか。ありがとっ」


 そのまま店の中に入り、彼女が服を見ているのを後ろから眺めている。



 しばらくして彼女が二着の服を持ってこちらを振り向いた。


「一つ聞いてもいいかな?」

「ん? なんだ?」


 彼女は二着の服を持って問いかけてくる。これはもしや……

 瑠璃の時もそうだったが、どちらが似合うかという質問で解答に失敗すると機嫌が悪くなってしまう。

 成実に限って本当に機嫌が悪くなるかは分からないが、内心ではガッカリするかもしれないため、俺は少し身構える。


「友也くんはどっちが好き?」


 しかし、思っていた質問とは少し違うことを聞かれた。どっちが似合うか、そう聞かれるとばかり思っていたし、彼女がどちらに意識を向けているかも注意して見ていたが、実際の質問は別のものだった。


「えっ……?」

「あっ、いきなりごめんね? でもできるだけ、その……彼氏の好みに合った女の子になりたいなぁって……」

「そ、そうか……」


 想像と違う嬉しい理由だったために動揺すると同時に、勝手に身構えていた自分を責める。


「そうだな……」


 彼女の質問に答えねばと思い、二着を見比べる。まだGWだが、彼女の提示した二着はどうやら夏物のようだった。


 一着は白のシンプルなオフショルワンピースのようなものだった。着るとデコルテ辺りを露出して、元々の白い肌とマッチし、清楚さを残しつつ、若者感があり明るいイメージになるだろう。

 もう一着は、白のブラウスに夏らしい柄の入った薄手のロングスカートを合わせたものだった。こちらは先程のものよりも清楚で、少し大人っぽさもあるが、顔立ちも整っている彼女なら着ていても違和感がないだろう。


「どっちも似合いそうだな……でも好みで言ったらこっちかな」


 そうして指を指したのは二着目の方だ。どちらも彼女なら似合うと思ったが、好みを聞かれているため、自分の意思で決めた。まぁ、一着目は露出が気になったというのも無くはないが。


「ふむふむ、そっか。了解!」


 と言いながらも彼女は二着ともを元の場所に戻してきた。


「ん?」

「あっ、まだまだ試着するつもりだから一旦置いてきただけだよっ」

「あぁ、そういう事か」

「うん! それで、まだまだ色々と聞いてもいいかな?」

「おう、ドンと来い」


 嬉しそうに頷いた彼女は再び服を物色しに戻った。というか引く引かないの過程はなんだったのだろうか? 長くなるかもしれないと言う意味だったのか、とそう思い始めていた頃に彼女が再び戻ってきた。


 そして次に持ってきたのは予想外のものだった。


「これとこれならどっちがいい?」

「ん!? そ、そうだな……」


 努めて普通な反応をしようとしたが、彼女の持ってきたのは、お嬢様風のドレスとゴシック風な白を基調にした服だったため、驚きを隠しきれなかった。

 なんでこんな感じの服もあるんだよ……というかそういうことなのか?


「ふふっ。今、なんでこんな服があるんだー? って思ったでしょ?」

「っ! あ、あぁ、そうだな」

「この店って元々はコスプレとかの方が多かったみたいなんだけど、普通寄りの服も売り出したら人気が出たらしいんだ」

「そうなのか……ん? なら引かないか聞いたのもそういう事か?」

「うん、そういう事。友也くんの反応が見たかったのもあるけど、こういう服を着る機会もなくて前から気になってたのもあるんだよね」

「そうか……まぁ、驚きはしたが納得したよ。それで好みの方は答えた方がいいのか?」

「うん!」


 彼女に言ったように、驚きはしたが、前から気になってたところに来れたなら良かった。


 その後は彼女の提示した服を選んでは試着して見せてくれたが、どれもとても似合っていた。


 最初に選んだのはお嬢様風のドレス。その次は今どきではない、家政婦が着用している感じのメイド服。その次は本格的な和服。着付けは本人だけでできていた。

 ちなみに、どれも似合っており、大変魅力的だった。


 見ていて思ったが、彼女ならば恐らく大人っぽいものから子供らしいものまで彼女ならば何を着ても似合うのだろうと思った。



 だが、もしこんな所を晃たちに見られでもしたら、俺の趣味で色々と着せ替えをさせてると思われてドン引きされそうだと内心焦ってもいた。

 なにせ、晃と白雪が来るのも今日に決まったと、昨晩晃から言われたのだから。



 その後、最初に選んだものだけ購入し、満足気な彼女と共に店を出た。


 今回もありがとうございました。また次回の更新でお会いしましょう〜

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