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58.ショッピングモール その3


『最後に、大好きな人とキスをしよう!』


「は!?」

「ふぇ!?」


 二人揃って顔を赤くして黙りこくっていたが、最後の命令を聞いて、つい声を荒らげてしまった。


「さ、さすがにこれは……せめて頬にしとくか?」

「う、うん、そうだね! そうしよ!」


 ここで照れずにキスをしようと言えたならばまた違ったのかもしれないが、ヘタレてしまい、情けなくも妥協案を提示してしまった。


「それじゃ、いつでもどうぞ……」

「おう、行くぞ……」


『5秒前……』


 彼女は目を瞑り、こちらに顔を向ける。ここまで近距離で彼女の顔を見たことはない。肌は白くキメ細やかで、小さな唇は、なんだか見ているだけで吸い込まれそうな気すらしてくる。


 ああは言ったが、今ならキスしても大丈夫なのでは……?


 そんなことが頭をよぎるが、すぐに頭を振り、頬に自らの唇を寄せていく。俺自身も目を閉じ、


『3、2、1……』


――パシャ


 唇が頬に触れた直後、今までに二度聞いてきたシャッター音が切られる。


 ゆっくりと顔を離し、目を開ける。つい、行きしの電車の時のことも思い出してしまい、彼女の事を直視することが出来なくなる。


 しかし、照れている俺たちにも関係なく流れる機械音で目が覚め、次は加工と言われていたため、こちらと同じように我に返って移動しようとした彼女と共に外に出る。


「加工か……」

「そうだね……」


 午前中ということもあり、待ち人は居ないため、ゆっくりと加工することが出来る。


「デート記念! って下の方に大きく書こっか!」


 俺よりも先に立ち直った彼女がそんなことを言いながらこちらに笑いかけてくる。いい加減俺も普通に戻らねばと思い、返事を返す。


「そうだな。おぉ、目の大きさや表情も変えれるのか」

「そうだね。凄い色々な機能があるね〜」


 一枚目のハートの写真にはデート記念と書き、少々顔をいじって遊んだ。元々彼女は目が大きかったため、あまり変化がなかったのは驚いたし、逆に俺の方はいじりがいがあったようだったが、最終的に普通な形で収まった。

 二枚目のハグの写真は、どうやら顔が赤いのはある程度修正して貰えていたが、彼女は彼女で顔を埋めていたので加工する所もほとんどなく終わった。


「えへへ、さすがに恥ずかしかったからね〜」

「あぁ、そうだな。俺も加工されてなければもっと顔が赤かっただろうな」

「それはそれで見ていたかったなぁ」

「い、いや、やめてくれ」


 そんな風に話しつつ、三枚目の写真へと取り掛かる。


「……」

「……」


 つもりだったが、お互いに恥ずかしさで固まってしまう。


「頬とはいえ、写真として残るとなんだか恥ずかしいね……」

「あぁ……まぁ、これは特に触らなくてもいいか……」

「うん、そうだね」


 そうして加工の作業が終わったあと、二人分に切り分けていく。そして、それぞれ鞄に大切に仕舞う。



「って、もう十二時か」

「えっ、もう? そんなに経ってたかな〜?」


 次はどこに行くかと思い、時計を見ると気付けば正午になっていた。



「ちょうどいいし昼食食べに行くか」

「そうだね! 色々あって迷っちゃうね」

「そうだな。まぁ、歩きながら決めようか」

「うん!」


 買い物に行く店などは大まかに決めていたが、食事はその日その時で食べたいものが変わるかもしれないため、当日に決めることにしていた。



 食事処の建ち並ぶ通りに来ると、いい匂いが四方八方から漂ってくる。


「ふわぁ……いい匂いだね!」

「あぁ、凄い食欲をそそられるな」


 肉や魚、中華にイタリアンなどなど、様々な料理の匂いがあるのに、混ざりあった不快感などはなく、どれも美味しそうだという感想が浮かんでくる。


 しかし、いい時間なので人通りも多く、先程から道行く人と肩がぶつかりそうになっている。彼女とはぐれないように繋ぐ手の力を少しだけ強め、足を進める。


「んー、これだけあると迷うよなぁ」

「うーん……だけど段々と人も増えてるし、早く決めなきゃだよね」

「そうだな……何か食べたいものとかはあるか?」

「あっ! いや、でも……」

「何かあったか?」

「えっとね、少し先の方でチラッと見えたんだけど、お昼にスイーツはちょっと違うよね」

「なるほど、そうか……勝手に選択肢から省いてたけど、この時間なら空いてるだろうし、成実が嫌じゃければそこにしようか?」

「私は嫌じゃないけど……そういえば友也くんも甘党だったね! あ、でも男の子がお昼に甘いものだけで足りるかな?」

「多分問題ないよ。だから安心してくれ」

「そう? なら、スイーツ食べ放題で決定!」

「おう!」


 そのままスイーツ店へと足を進める俺と成実。休みの日でお昼ものんびりしたい時は甘いものだけにしている時もあるので、彼女の心配は全く問題ない。



 そして、人の波を掻き分けながら進むと、見るからに女性向けな雰囲気漂う店にたどり着いた。


「ここか……」

「ここだね!」


 彼女の提案に賛成して着いてきたが、思いのほか女性らしい店内に気後れしてしまう。しかし、一人では入りにくいような店でも彼女といれば不審に思われることもなく入店することが出来る。

 今まではこういう店に来るのは断念するか、瑠璃に頼んで一緒に来てもらっていたが、これからは彼女と一緒に来ることが出来る。そう思うと入店する恥ずかしさよりも嬉しさが勝った。



 店に入店し、先に食べ放題の分の料金を払い、席に案内される。お昼時という時間帯もあり、スイーツ店の中は他の店よりは空いていたため、列に並ぶことはなかった。


「んー、どれも美味しそう!」

「そうだな……ここに来ても迷うことになるとは」


 食べ放題のビュッフェ式の物と注文式の物がある。注文式のは別途料金が発生するが、店のオススメや少し高めのものはこちらのラインナップに入っている。


「あっ、これ……」

「ん?」


 彼女がメニュー見せ、指を指していたところを見ると『カップル限定メニュー』という表記をされたものがあった。


「これは……でも、かなり魅力的だな」

「うん、そうだよね……」


 他のメニューよりも料金が安く、かつ二人でシェアするため、食べ放題の方も問題なくお腹に入る余裕があると思う。しかし、料金の表記されているところの下にカップルと証明する必要があると書かれていた。



 2つ目の投稿です。今回もありがとうございました。

 また明日からは恐らく1本ずつになりますが、よろしくお願いします。

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