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6.誓い

全話からここまでが同じ日のもので、文字数を約2000で切るようにしていたら中途半端になってしまったので、本日続けて更新させていただきます。


 いつも通りの学校生活を終えた俺はそのまま直ぐに帰宅した。昨日は瑠璃が夕食を作ったため今日は俺の当番だ。昨日が洋風寄りだったため今日は和風にでもするかと思い、味噌汁に焼き魚、炊きたての白米などを用意した。



 そして夕飯時になり、瑠璃が2階の自分の部屋から降りてきた。



「お〜、美味しそうだね〜」

「おっ、来たか。ささっと頂こうか」

「うん、いただきます!」

「いただきます」




 そのまま瑠璃は美味しそうに食べ、俺も自分のペースでゆっくりと食べ終える。そして風呂と明日の準備を済ませてから神崎さんに連絡を送る。



『こっちはいつでもOKだぞ』


 すると直ぐに返信が来た。


『ありがとうございます。一つ一つメッセでやり取りするのも時間がかかりますし通話を繋げてもよろしいでしょうか?』


「『あぁ、構わない』っと」



 そう返信すると通話がかかってきたので直ぐに出る。


「こんばんは、神崎さん」

『むぅ……』

「えっと、どうかしたか?」


『……名前』

「あっ、えっと、成実……」

『うん! 何かな?』

「今日は何をする予定なんだ? あと、RICEでのメッセがどうして敬語なのか聞いてもいいか?」

『あー、うん、RICEではお母さんとしかやり取りしてこなかったから敬語が染み付いちゃってるんだよね〜』

「なるほどな」



 そういえば俺が二人目だと言ってたことを思い出す。



『それで今日なんだけど、せっかくだし銀の世界で今まで溜め込んできたアイテムで色々やらないかな?』

「なるほど……確かにネタみたいなのとか、数は少ないけど爽快感あるのもあったな」

『そうそう! どうせなら全部パァっと使っちゃうのはどうかなって思って』

「了解だ。確かに面白そうだし、使わないのはもったいないな」

『でしょ!友也くんなら賛成してくれると思ってたよ〜』



 これは信頼されているのだろうか、なんて少し嬉しい気持ちになりながら銀の世界にログインし、アイテムをまとめていく。3年間倉庫の肥やしになってたアイテムなどもあり、入手した時のことを思い出しながら作業を進めていく。



「よし、大体確認して、良さそうなのはパーティの共有ストレージに移したぞ」

『了解!それじゃパァっと遊びますか!』



 そう言って成実はいきなり走り出した。



「え!? ちょ、待てよ!」

『えへへ、ついて来れるかな!』



 そんなことを言いながら彼女は爆弾やロケット花火を撒き散らしながら走っていった。



「うおっ、あっぶね!」

『ふふっ、友也くんが珍しく焦ってる〜』



 なんだコイツ可愛いななんて思ったのもつかの間、目の前にロケット花火が飛んできた。



「やばっ……あ、ギリギリ耐えたか」

『流石友也くんと言ったところだね?』

「お前……次はこちらから行かせてもらうぞ!」

『望むところだよ!』




 二人でネタアイテムなんかで遊ぶはずが、気づいたら割とガチな爆弾の投げ合いになっていた。これはこれで楽しいし周囲の木々がどんどんなぎ倒されていくのは見ていて壮観だった。


 そしてお互いのアイテムが尽き、お互いに黙りこんでしまった。



『……友也くん、ちょっと付いてきてくれる?』

「あぁ」



 成実から付いてくるよう言われたので、俺は黙って付いて行く。成実が立ち止まったので俺も止まり、周囲を見渡す。



『ここさ、覚えてる……?』

「あぁ、初めて二人で倒したボスの跡地だな」

『うん。苦戦しながら何日もかかってようやく倒せたんだよね』

「そうだな……あれはキツかったが楽しかった」



 そう、ここはデビルフォレストという最初にクエストがある森の最奥にある湖で、元は綺麗な湖だったがここに住み着いた悪魔の影響で水が穢れてしまったという背景設定があった。そう記憶しているが、俺の視界に映るのはどこか幻想的で、儚げだが、自然の力強さが伺える美しい湖だった。



『ここなんだけど、デビル系ボスを全討伐した人だけで来たらこんな風に綺麗な湖になるってこの前知ったんだ』

「そうだったのか……」

『うん。先週に会おうって誘われてからユウが全然ログインして来なくて、一人でこの世界を見て回ってた時に気付いたんだ』

「ゔっ、ログインできてなかったのはすまん……」

『ううん、謝って欲しいわけじゃないの。ただ私が二人でこの景色を見たいなって思っただけだし』

「そうか……」



 俺がサ終のショックでログインできていなかった時にそんなことがあったんだな。一緒に見たいって言ってくれたこともパートナーとして認めてくれているようでとても嬉しかった。



「ありがとな」

『こちらこそ、3年間ありがとうっ。一緒にプレイできて楽しかったよ!』



 少し寂しげに、それでいて力強くそう言ってくれた成実に俺は心の底からの感謝と、自分でも分からないがなんだかとても温かく大きな気持ちが湧いてきた。



『銀の世界はこれでおしまいで、ユウとシャーロットはもう会えなくなっちゃうけど……私たちはリアルで知り合えてこれからも一緒に遊んだり話したりできるからさ。これからもずっとよろしくね?』



 成実からの言葉に俺も力強く答える。



「あぁ! これからもよろしく頼む!」

『うん! ……それじゃ、名残惜しいけどこれ以上ログインしてても辞められなくなっちゃうからログアウトしよっか!』

「あぁ、そうだな」



 今までありがとう、そんな気持ちを込めながら俺は銀の世界をログアウトする。月末までは少しだけあるが、やり残したことも無いし、銀の世界のユウとしての俺は今日で終わりだ。




「……成実、今日は誘ってくれてありがとう」

『うん、私も最後に二人でゲームにインできて、一緒にプレイできて楽しかったよ!』




 そしてお互いが黙り込んでしまう。このまましんみりしていたら銀の世界の最後の思い出がしんみりしたものになってしまうと思ったので俺は声をかける。



「それじゃ、明日も学校あるし通話も終わるか……」

『そうだね……。あ、あのさ……友也くんはいきなりいなくなって会えなくなったりしないよね?』



 心細そうに声をかけてきた成実に俺は



「パートナーを置いていなくなるわけないだろう?」



と力強く答えた。銀の世界でのプレイに彩りを与えてくれ、最後にも素敵な思い出をプレゼントしてくれた彼女にそんな声をして欲しくなかったために俺は少し格好を付けた言葉を言った。恥ずかしいが後悔はしていないし、これは俺の本音だ。



『ふふっ、ありがと!これからもよろしくね。おやすみなさい!』

「あぁ!」



 そう言って通話を切った。




 これからも彼女に寂しく、心細い思いをさせたくないなと思い、少しでも心を満たせるような存在になると自らに誓った俺だったが、これがパートナーとしてのものなのか、友人としてのものなのか、はたまたそれらとは別の気持ちなのか、この時の俺に気付くすべはなかった。

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