55.GW前
数日、GWにどこにデートに行くかの相談をしつつ過ごしていると、気付けばGW前日になっていた。
学校へと行き、いつものように授業を受け、昼休みを過ごす。
「あ、お前ら、GWだからって気を抜きすぎるなよー。テストも体育祭も近いんだから、勉強も運動もしっかりしとけな」
終礼の時に担任の気の抜けた話し方でそんな注意をされる。確かに休みになると気が抜けてしまう。だからこそ言っていることは正しいんだが、担任の雰囲気が緩いため締まりきらないので、生徒たちは自分で気合を入れていくしかない。
「友也、久々にどこか寄って帰ろうぜ」
「別にいいが、どこ行く?」
「んー、ならゲーセンでも行くか」
「了解」
長めの休みの前日には晃と放課後に出かけるのが常となっている。長期休み中は予定がなければ各々で自由に過ごすので、いつしか前日は二人で遊ぶようになっていた。
「デートの場所決まったのか?」
ゲーセンまでの道のりで突然聞いてくる晃。
「ん? 一応な」
「どこ行くか聞いてもいいか?」
「あぁ、近所の例の大型ショッピングモールに行くことになった」
「あー、あそこか」
「そういえば晃はGWに何か予定でもあるのか?」
「俺か? 俺も華に誘われて同じモールに行くはずだぞ。いつかは未定だけどな」
「え、マジか」
「おう、マジマジ」
驚きはしたが、大型ショッピングモールはここから近い場所にあるし、中に服屋や雑貨屋などのショップ、それから飲食店はもちろん、映画館やゲームセンターなど、大人から子供まで楽しめるところなのだ。
それに晃と白雪は幼馴染でよく出かけているから、特に変なことでもない。
「そういえば今頃は華と神崎さんで買い物してるところかな」
「そうなのか?」
「おう、デートに備えて服買いに行ってるらしい。友也って鈍いところもあるし、当日はちゃんと褒めてやれよ」
「鈍いっていうのは納得はいかないが、まぁ感謝はしておく……」
「おっと、そうこうしてるうちに着いたな」
晃と話をしていると目的地のゲーセンに着いたようだった。
「そういえば何するんだ?」
「んー、何って訳じゃないけど、たまにはただ何となく遊ぶのもいいだろ?」
「それもそうか。よし、遊ぶか」
「おう!」
そう言って気合を入れた晃と共に、有名な太鼓のリズムゲーやゾンビを倒すガンゲー、どのゲーセンにもあるクレーンゲームなど、かなりの時間遊び呆けた。
久々のゲーセンだったこと、それから晃と心置き無く遊べたことで、とても楽しい時間だった。
「もう夕方か」
気付けば日が傾き始めており、ある程度楽しんだので帰ることになった。
「それじゃ、今日は付き合ってくれてありがとな!」
「おう、こちらこそ久しぶりに遊べて楽しかったよ」
「ははっ。じゃ、次は休みのどこかで姉ちゃんと会う時か? またな!」
「またな。その時は香織さんが暴走しないようによろしく頼む」
「あぁ、善処するよ。というかこっちで連絡とか予定立てても、気付いたら違うところで遭遇とかしてそうだな」
「強く否定できないこと言うのやめろよ……」
「まぁ、ちゃんと見とくし、姉ちゃんが買い物行く時も付いてくようにするよ」
「よろしく頼む。それじゃ、またな」
「おう!」
本当に買い物途中で会ったら凄い驚いてしまうだろうな。香織さんと話していると、気付いたらあの人のペースになっている。
それで成実に変なことを言われたりするのは御免蒙りたいので、冗談でもあのようなことは言ってほしくないなと心の中で呟いたが、何だか本当に晃の言った通りになる気がするのはどうしてだろうか?
「まぁ、気にしても仕方ないな」
なるようにはなるだろうし、今ここで考えても仕方ないと判断し、俺は家へ向かう道のりを歩いていく。
「ただいま」
「あっ、おかえりお兄ちゃん。遅かったね?」
「あぁ、すまん連絡入れとけば良かったな。晃と久々に遊びに行ってたんだ」
「そっか。まぁ、次からは一言欲しいかなぁ。それでお風呂にする? ご飯にする? それとも……」
「ご飯だな」
「もう、最後まで言わせてよ!」
「どうせ、それとも部屋に戻る? とかだろ?」
「なんで分かるの……」
「そりゃ、兄だからな。ふざけてないで戻れ戻れ」
「はーい」
そんな何でもないやり取りをした後、手洗いを済ませ、瑠璃の作った夕飯をいただく。
「ご馳走様」
「お粗末さまでした〜」
夕飯は瑠璃が作ったため、洗い物は俺がしてしまい、自分の部屋に戻る。
明日からはGWで、数日後には彼女とのデートだ。髪型や服装一つで人の雰囲気は変わるため、彼女の隣にいても違和感がないような格好でいたいと思う。
そんなことを考えつつ、まだ日数はあるとはいえ早いことには越したことはないだろうと、当日の持ち物や格好を考えておく。
付き合い始めてから既に一月以上経っているが、彼女の弁当を食べたり、彼女が家に来たりと色々なことがあったために、ようやく実感が湧いてきた部分がある。それと同時に、自分には勿体ないくらいの人物が相手なので、少しだけ引け目を感じてしまう。
「やっぱり不釣り合いなのは事実だよなぁ」
そう独り言を呟くと、さらに自覚してしまう。少しでも見目を良くし、身も心も引き締めていかないと、彼女の隣に達には相応しくないと思う。
担任も運動しとけと言っていたので、休み期間は普段よりも朝ランの量を増やし、筋トレも取り入れていこうと思った。
「まぁ、まずはそのためにも早寝早起きだな」
そう言って俺は布団に入り、そのまま深い眠りについた。
今回もありがとうございました。
次からはデートの予定なのですが、今のご時世ということもあり、モールも最後に行ったのが数年前でして、記憶が古かったり、イメージと違うこともあると思います。調べたりはしてますが、そこはどうか暖かい目で見ていただけると幸いです。
それでは改めまして今回もありがとうございました。次も宜しければ目を通していただけると嬉しいです。ではまたお会いしましょう。