54.GWの予定
GWが翌週に控えたある日の晩、いつものように彼女と電話で話をしていた。
「そういえばGWも近づいてるけど、どこか二人で行きたいね〜」
「そうだな……学校で毎日会ったり、通話はしてるけど、デート自体は余りできてないよな」
「うん。だからこそこういう機会には一緒に行けたらなぁって思って! ダメ、かな……?」
「いや、大丈夫だ。むしろ嬉しいよ、ありがとう」
「やった! こちらこそだよ!」
ということでGWに二人でデートをすることが決まった。どこに行くのかはまた後日決めるつもりだ。
付き合う前の一緒に出かけた時のことも合わせると、喫茶店、イルミネーション、水族館……確かに凄く少ない気がするから、彼女の提案は願ってもない事だった。
放課後や休日で互いに時間がある時にはゲームを通話しながら一緒にやったりもしているが、会って一緒に出かけるのとは全然違うだろう。
そういえばイルミネーションの後から始めた朝ランも、習慣となり今でも続いている。体力もついて足も早くなり、体も少し引き締まったと思う。今年の体育祭は、彼女にかっこいいところを見せれたらいいな。
「そういえば体育祭も近いし、それよりも前にまず中間試験があるな」
「あっ、そうだね。一応授業は復習もしてるし、今のところはついていけてるかな〜」
「流石だな。あ、必要ないかもしれないが、GWで勉強会でもしてみるか?」
去年は通話越しに勉強会をしたが、あの時は色々と考えてしまっていて、勉強会らしいこともなかったしな。それに会う口実にもなる。そう考えて提案してみたが、些か会いたいという思いが強すぎるだろうか。
引かれてないといいが、と思ったが彼女からは色良い返事が返ってきた。
「ぜひ! あっ、この前友也くんの家にお邪魔したから、今度は私の家でやろっか?」
「い、いいのか?」
勉強会について肯定的な意見を貰えたことに加え、彼女の家に招待されてしまい、二重の意味で動揺する。
「もちろん! ふふっ、まぁ、もし早めに終わったらお菓子作り教えてもらおうって魂胆も少しだけあるんだけどね?」
そう言って笑う彼女。勉強ではお世話になるだろうから、それくらいはいくらでも教えるつもりだ。
「ははっ、あぁ、了解だ。ささっと勉強が終わるように、自分の方でもしっかり復習しておくよ」
「ありがとね! あっ、もうこんな時間……それじゃ、おやすみなさい!」
「本当だな。おう、おやすみ」
そうして彼女との電話を終了した。GWの予定が一気に決まったが、彼女といられるならばどこに行っても楽しいだろう。デート場所についてはまた相談して決めていく予定だ。
翌日、普段通り学校で過ごし、昼休みには中庭でいつものメンバーで食事をしていた。
「はぁ……」
「ん? どうした晃、凄いため息なんかついて」
「いや、あのな……姉ちゃんがGWに一度家に来るって連絡来てな……」
「そういう事か」
「晃のお姉さんか……久しく会っていないが、元気にしているのだろうか?」
「あ〜、華は可愛がられてたよなぁ」
「あぁ、私は一人っ子だからな。実の姉ができたようで楽しかったよ」
晃の姉、和泉香織さん。今は大学生二年で晃の三つ上の人だ。俺たちが小学から中学生の時にはよく遊び、晃をいじったり、白雪を可愛がったりしていた。俺にも弟のように接してくれていたが、たまに凄くいじられたりした記憶がある。
成績は優秀だったため俺たちに勉強を教えてくれたり、俺たちと同じでこの高校に通い、確か首席合格したとかいうとんでもない人だった。
あれ、そう考えるとうちの妹も、それに自分の彼女も首席って言ってたな……俺は思考を放棄した。
というかアルバムを見た時には会うことはないかと考えていたが、まさか帰ってくるとは……
「あ、すまん成実。前に見せたアルバムの人だよ」
少し成実そっちのけで話してしまっていたことを反省する。彼女の様子を見ると、少し難しい表情をしていた。
「ふふっ、気遣いありがとうございます。私は大丈夫ですよ。それで、あの美人な人が帰ってくるんですか……?」
「ん? まぁ、俺たちと会うかは分からないな。結構自由な人だし」
「大丈夫だよ成実。お姉さんは友也のこと狙ったりしてないしね。それよりも会うとしたら成実の方が危険かな」
白雪がそんなことを言う。成実の表情は理由は分からないが普段通りに戻った。しかしそれ以上に成実が危険という方が気になった。
「どういうことだ白雪?」
「あの人って可愛い女の子に目がないからね。むしろ男の人はそこまで好きじゃないって本人が言っていたし。晃は弟だし、友也はたまたま少し気に入られただけみたいだよ」
「そうなのか。ん? それだと弟に女性との接し方を教えてたのって……そう聞いてから考えると、晃経由で可愛い女子と会うためみたいだな」
晃がこれだけ明るく、女子にも人気なのは、お姉さんが晃に色々と教えていたからだが、自分の目的のためだったのだろうか。
「ははっ、流石にそれは考えすぎだよ友也。彼女が過去に付き合った男性の態度がかなり酷かったから、晃にはちゃんとした男に成長して欲しかったらしいよ。まぁ、お姉さんも美人な人だしね」
「え、そうだったのか?」
「いや、なんで晃が知らないんだよ……」
「ふふっ」
「どうした成実?」
「いや、話を聞いていたら、少し和泉くんのお姉さんのことが気になってしまって。友也くんたちとも仲が良いみたいですし」
白雪も危険と言っていたし、俺としてもあの人に影響されたらどうなるか分からないため、安易に会って欲しくはなかったが、本人がこう言っているんだ。
「……なら、今度会いに行くか? 久しぶりに俺も挨拶しておきたいし」
「いいのかい友也?」
「あぁ、本人がこう言ってるんだ。俺や白雪が止める理由はないだろう」
「そうだね。そういえば、いつお姉さんは帰ってくるんだい?」
「あぁ、GWの後半って言ってたぞ。いつ来てどれくらい居るのかは知らん!」
「知らんって……まぁ、確かにあの人のことだし、言ってないかもだが」
「という訳だ、神崎さん。GWの後半になったら友也に連絡入れておくよ」
「はい、ありがとうございます、和泉くん」
会うこと、それからその時には晃から連絡が来ることが決まった。
「あ、友也。一応お前たちの予定も教えてくれないか? もし被ってたら姉ちゃんに言って来る日を調整してもらうからな」
「悪いな、でも大丈夫だぞ。出かけるのは最初の方だし、勉強会も……って、忘れてくれ……」
つい流れで予定を言ってしまったが、気付けば晃と白雪がニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「そういう目で見るな。というか誘導尋問やめろ」
「いや、そんなつもりはなかったんだがなぁ。ははっ、今のは完全に自爆だろ」
そう言いながらも笑っている晃。隣には笑いを堪えてる白雪もいる。彼女とのデートの予定とか、友人には余り知られたくないな。
気付けば成実は顔を赤くして小さくなっていた。
「友也……彼女できてからポンコツになってないか?」
「うるさい気のせいだ。というか香織さんが帰ってくるのも嘘か?」
「いや、それは本当だよ。まぁ、GWの後半のいつに来るのか分かり次第連絡入れるからな。どこで会うとかは後で決めるか」
「おう……はぁ、一応ありがとな」
「ははっ、どういたしまして」
色々と晃のせいで自爆したが、連絡は貰わないと彼女の希望を叶えられないため、渋々感謝はしておく。
昼休みも終わりの時間が近づいてるため、俺たちは荷物をまとめ、四人で教室へと戻って行った。
晃はあの人が帰ったら嫌になるまでいじられればいいのに、などと考えていたのは秘密だ。
GWですね〜
今年は制限もあり、なかなか思うように行かなかったですが、せめて作品内では色んなところに言って欲しいです。え、お姉さん? まぁ、自由人だけど根はいい人なので何も起きないし大丈夫ですよ、多分。
それでは今回もありがとうございました。また次回もよろしくお願いします!




