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52.三人での昼食


「えっ?」

「あっ……」


 ここで声を出さなければ何とかなったかもしれない。しかし、後悔先に立たず。瑠璃が部屋から出てきてしまい、もはや手遅れなので、正直に言うことにした。


「その、昼食ができたから呼びに来たら……」

「聞いちゃったと……ちなみに、お兄ちゃん。どこから聞いてた?」


 瑠璃が怒り……というよりも、照れや焦りの混じった声色で俺に声をかけてくる。


「あー、『お兄ちゃんのことどれくらい好き?』くらいかな……」

「全部じゃん! って成実さん……?」

「あぅ……聞かれてたの……? 全部、最初から……はぅ……」


 瑠璃の後方を見ると顔を真っ赤にし、悶えている彼女がいた。学校でのしっかりした感じや、二人でいる時の無邪気な感じとも違い、可愛らしいなと思ったのもつかの間、どうにかしなければと我に返る。


「いや、その……俺もずっと一緒にいたいと思ってるし、ありがとな」

「はぅ……」


 フォローのつもりが、更に顔を赤くして俯いてしまった。


「お兄ちゃん……」


 瑠璃にジト目で見られていたが、他の言葉も思い浮かばなかったし、俺も俺で顔がとても熱くなって照れているので、今回ばかりは許して欲しい。


「と、とりあえず、昼食の準備もできてるから少ししたら降りてきてくれ」

「了解だよ、お兄ちゃん」

「う、うん……」



 小さい声だったが成実からも返事が貰えたので、俺は階段を降りる。そしてリビングで一人、先程のことを思い出して悶えていた。



「すっごい恥ずかしい……けど凄い嬉しいな」


 ずっと一緒にいる、と彼女がそうハッキリ言っていた。母さんを喪ってから、離れ離れになることが怖くて、人と関わりを避けがちになっていた俺に対して、そんなことを言ってくれた彼女。


 それに彼女自身も父親を亡くしているからこそ、ずっとや永遠なんていうものは、とても儚くてすぐに手からこぼれ落ちてしまうことを知っているはずなのに、そう言いきってくれた。


 その事実に俺は胸がいっぱいになり、この上なく嬉しく思える。


「ずっとか……うん、ずっと傍で支えよう」


 そう小さく、しかし気持ちを込めて自分に言い聞かせるように呟く。

 きっかけは些細なことだったかもしれない。たまたまスカウトから助けただけ、たまたまゲームで一緒にプレイしていただけ。

 しかし、今はかけがえのない存在になっている。だからこそ、今までのことではなく、これからのことを。これからどうすれば彼女を支えられるか、彼女の隣に立っていられる男でいられるかを考えていこうと思った。





 少しして俺も落ち着いてきた頃に、彼女たちも一階へと降りてきた。


「お兄ちゃん、さっきはごめんね」

「いや、気にするな。俺も気にしないようにする」

「友也くん……その、これからもよろしくね?」

「あぁ、よろしくな。……それじゃ、食べるか」

「そうだね!」


 そうして席につき、料理を食べていく。



「ん! 凄い……柔らかくて、チーズのまろやかさと野菜の甘さも合わさって、凄い美味しいよ!」

「ふぅ、喜んで貰えてよかったよ」


 彼女は一口ごとに美味しそうに顔をほころばせており、作り手冥利に尽きるというものだ。



「ご馳走様でした」

「ご馳走様」

「お粗末さまです」


 成実も瑠璃も全ての料理を綺麗に平らげてくれた。


「それにしても、友也くんってやっぱり料理上手いんだね」

「それほどでもないよ。それに上手さで言えば瑠璃の方が上だし」

「そうかな? メニューによると思うな〜」

「今度、瑠璃ちゃんの料理も食べてもいいかな?」

「もちろん! とびっきり美味しいものをご馳走様するよ!」


 食後に和やかな雰囲気の中、そんなことを話して過ごす。大切な人たちとの時間がかけがえのないものだと改めて感じた。



「それじゃ、私は自分の部屋に戻るね。せっかくのお家デートを邪魔するのも悪いしね〜」

「なっ、何言ってんだよ」

「ふふっ、成実さんもごゆっくりしていってね」

「う、うん……」


 瑠璃はそう言い残し、部屋へと戻っていく。俺と成実の間に少し気まずい空気が流れる。


 二人きりになるとどうしても相手のことを意識してしまう。食前のこともあり、何か話をしなければと頭を回す。


「そういえば、どうしてさっきはあんなことを聞かれてたんだ?」


 気付けばそう口走っていた。


「えっと、友也くんが来る前までは別の質問とかをされてたんだけど……」


 つい口走った自分の発言を後悔していたが、思いのほか彼女は大丈夫そうだった。どうやら俺は必要以上に意識しすぎたようだ。


「例えばどうして友也くんのことを好きになったのかとか、どう思ってるのかとかね」

「なるほど……って俺の事ばっかりなのか」

「うん、瑠璃ちゃんも友也くんのことが凄い大切みたいだしね。あんなに思ってくれる優しい妹は大切にしなきゃだよ?」

「あぁ、そうだな……」

「あっ、話が逸れちゃったね。それでどう思ってるのかに対して、好きだって答えたら、友也くんが聞いたところに繋がる感じかな」

「なるほどな」


 きっかけと言ったら、告白の時に言っていたスカウトマンの時だろうか。というかどう思ってるかという質問に対して、しっかりと好きって言ってくれたのは嬉しいな……


「ありがとな。その……俺も好きだよ」

「っ!? あ、ありがとっ……」


 つい伝えたくなり、彼女に直接そう伝える。


 ふと気づいたが、最近になり、自分の想いや心に思ったことを抑えられなくなってきている気がする。すぐに彼女に対して思ったことを伝えているな。というかさらっと言ってたけど、凄い恥ずかしい。


 このままだと学校でもボロが出る可能性があるので、一度気を引き締め治さないとな、と心に留めつつも今だけは彼女との幸せな時間を思う存分過ごしたいと思った。

 本日二つ目! 昨日のあとがきで二つ出すって言いましたので!

 七時に手動で更新するつもりだったのに夕食食べてて遅れたなんて言えない……


 ま、まぁ、何はともあれ、今回もお読みいただきましてありがとうございました!

 それではまた次の更新でも会いましょう!

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