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50.昼食と週末

 翌日、楽しみな気持ちもあるが、気づかれたら恥ずかしいので普段通りを装って登校する。



「おはよう、友也。なんか今日はテンション高いな」

「おはよう晃……ちっ、なんで分かるんだよ」

「ははっ、何年来の付き合いだと思ってんだよ。これくらい分かるさ」

「はぁ……まぁ、そうだよな。隠すだけ無駄か」

「おう、諦めろ。どうせ華にもバレるだろうし」


 そんなことを話しているとちょうどそこへ白雪が来た。


「何が私にバレるんだい?」

「し、白雪……」

「おはよう、華。いやぁ、友也が朝っぱらからテンション高くてな」

「おい晃」

「確かにそうみたいだね。あのことが余程嬉しかったのかな?」


 教室内ということもあり内容はぼかしているが、俺たち三人なら分かる内容だ。というか一目見てその日の相手のテンションが分かるとか流石だな。


「はぁ、心読まれて朝から疲れたんだが」

「ふふっ、昼間にはきっと回復するだろうし、これくらいは許して欲しいね」

「そうだぞ友也……って神崎さん、おはようございます」

「えぇ、おはようございます。一ノ瀬くんに華ちゃんもおはよう」

「おはよう成実」

「おはようございます」



 話をしているところにちょうど成実が入ってきた。成実と白雪は普通に仲が良くなっているので砕けた挨拶をしている。

 こういう所を間近で見ていると少し羨ましく思えてしまう。



「まぁ、また昼に。またね友也、晃」

「おう」


 そう言って白雪は自分の席に戻っていく。

 ふと気がついたが、白雪と普通に話をし、昼食を俺も含めた四人で食べているなんて知られたら、嫌でも何か勘づかれないか? ……いや、嫉妬こそされど、変な風に思われるなんてありえないか。


 俺は去年まではほとんど気にしていなかった外的評価を、彼女ができてからよく気にしてしまっていることを自覚した。しかし、不釣り合いな俺が傍にいると、彼女にも迷惑をかけてしまうから仕方がないことだろう。


 そんなことを考えつつ晃と話をしていると、担任が入ってきて朝礼を始めるようなので話を終える。




 そして昼休み。昨日のように中庭へと移動した。昨日も思ったが、ここはなかなか人が来ない。昼食を取るなら食堂や教室、何人かで食べるなら屋上ということもある。そして中庭は日当たりもよく、移動が面倒くさいため人は来ないらしい。



「友也くん、どうぞ」

「あ、ありがとう……」


 そう言って照れながら手作り弁当を渡す成実。こちらまで気恥ずかしくなってしまう。


「それじゃ、食うか」

「そうだね、二人も弁当広げてしまおうか」


 しばらく硬直してた俺たちに晃と白雪が声をかける。


「そ、そうだな。いただこうか」

「そ、そうだねっ」


 そして、俺は少し緊張しながらも弁当を開く。中身は普通の弁当のようだ。だし巻き玉子やたこさんウィンナーなどなど、何の変哲もないものだった。だし巻き玉子が斜めに切られ、ハート型なのは恋人なら普通だろう、多分。


「ほう、美味しそうだね。それに中身は二人とも同じなのだね」

「二人同じで、卵も……まるで恋人だなって思ったけど、恋人か」


 そんなことを晃たちが言ってくる。正直恥ずかしくてたまらない。


「二人とも早く食わないと昼休み終わるぞ」

「それもそうだね。いただきます」

「おう、いただきます」


 そう言って二人は自分の弁当を食べ始めた。成実の反応がないことに気が付き、そちらを見ると、顔を真っ赤に染めて俯いている彼女がいた。


「な、成実?」

「は、はい! あ、苦手なものとか入ってましたか?」

「い、いや、それは大丈夫なんだが……その、ありがとな」

「う、うん……それじゃ、私たちも食べましょうか」

「そうだな。いただきます」


 一口、まずはだし巻き玉子を口にする。見た目や形は整っているが、口に入れると柔らかく、だしと卵のまろやかさが合わさり、とても美味しくできていた。偶然俺の好みの味だったのもあるが、贔屓目なしでもこれは美味しい。

 他の食材も黙々と口にしては、美味しさを噛みしめる。


「ははっ、喜んでもらえてるようで良かったね、成実」

「う、うん、一安心です……」



 そのまま彼女の手作り弁当を完食し、弁当箱を返した。洗って返そうかとも提案したが、明日からも作るから、と断られてしまった。それどころか、美味しくなかったかとか、量は足りたか、とか色々と聞かれてしまった。

 もちろん美味しかったし、量は元々そこまで大食いという訳でもないのでちょうど良かった。その事を伝えると彼女はホットしたような、嬉しそうな表情になった。




 その後、家へと帰宅し、今は瑠璃の作った夕飯を共に食べている。


「お兄ちゃん、そういえばお昼の彼女のお手製弁当どうだった?」

「あ、あぁ、凄い美味かったよ」

「んー、私のとどっちの方が美味しい?」

「そ、それは……甲乙つけがたいな……」

「あはは〜。私としては嬉しいけど、事実でもお世辞でもこれからは彼女が一番って言わなきゃダメだよ?」

「そうだな。あぁ、成実のは美味かったよ」

「ひ、酷いよお兄ちゃん……妹よりも彼女を選ぶんだね……! な〜んてね」

「お、お前がそう言えって……はぁ。まぁ、実際に二人とも美味いんだよな」


 事実、二人の料理はとても美味い。そもそも瑠璃に関しては俺の好みを完璧に把握しているため、味付けも好みなもので作られていることもあるだろうが。

 そんなことを考えていると瑠璃から唐突に耳を疑うことを言われた。


「ふふっ、ありがとね。それはそれとして。今週末、成実さん来るみたいだよ」

「……は? いや、なんで瑠璃が……ってそういえばRICE交換してたな。しかし、なんで瑠璃は知ってて俺が知らないんだ?」

「あー、いつなら迷惑じゃないかとか聞かれてね。いやぁ、話してていい人オーラ凄いし、健気で可愛らしい人だね〜」

「あぁ、そうだな。というか後で成実に聞いてみるか」

「うん、そうしてみて」



 そして夕食を食べ終え、成実に電話をする。


「今週末、家に来る予定って本当か?」

『あっ、今晩誘おうって思ってたけど、瑠璃ちゃんから聞いたのかな?』

「あぁ、まずかったか?」

『ううん、大丈夫だよ。それで……ダメかな?』

「いや、むしろ大歓迎だ。楽しみにしてるよ」

『ふふっ、ありがとね友也くんっ』


 その後は昼のことなどを話したりして互いに自爆したり、好きな食べ物はなんだ、とか何をよく食べる、などと話してから通話を終了した。


 そうして数日後に迫った週末が楽しみなような緊張するような感覚を覚えながら、俺は眠りについた。

 ここまでご覧頂きまして、ありがとうございました。


 せっかくの五十話ですから二話投稿、と行きたかったのですが、先週から今日の午前まではハードスケジュールでして、寝落ちしてしまい更新も普段よりも遅くなってしまいました。

 誠に申し訳ございません。


 明日は久々の休みですので、できれば二話更新するつもりです。是非ご覧になっていただければ幸いです。


 それではまた明日お会いしましょう。

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