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49.昼食の約束

 昼休み、いつものように晃と話をしながら昼食を食べていると、隣の席から視線を感じた。


「ん?」

「どうかしたか?」

「いや、なんでもない。……気のせいかな」


 しかし、何だか気になったのでRICEで成実に直接聞いてみることにした。


『何かあったのか?』

『えっ、いや、なんでもないよ?』

『そうか?』

『うん、気にしないで』



 今現在、昼食は俺と晃、そして成実は仲良くなった白雪と共に食べている。

 何か白雪から言われたのかとも思ったが、そういう様子でもなかった。



 その後は何もなかったので、放課後になり、ひとまず家へと帰宅する。




「――なんてことがあったんだが、どう思う?」

「あ〜、なるほどなるほど。うん、ちょっと良くないかなぁ」


 夕食時、彼女からは聞くことは出来ないだろうと思い、俺たちの関係を知っている瑠璃に昼間のことを話して意見をもらおうと思ったら、さっそくダメ出しをされた。


「……何がいけなかったか聞いてもいいか?」

「うん、まずさ、お兄ちゃんと成実さんは付き合ってるじゃん?」

「そうだな」

「でも学校だと隠してる。けどお互いもっと一緒にいたいと考えてるんでしょ?」

「あぁ、俺はそうだし、成実にもそうだと思いたい」

「その点は大丈夫だと思うよ。それで、多分だけど一緒にお昼を食べたいって考えてたんだと思うよ〜」


 白雪と楽しそうに食べていたため、選択肢から外していたが、そういうことなのだろうか?


「んー、でもそうだとしても、どうすれば……あっ」

「おっ、何か策があるの?」

「一応な。とりあえずありがとな、瑠璃」

「いえいえ。私としては可愛いお姉ちゃんが欲しいから、二人には仲良くいて欲しいんだよね〜」

「なっ、それって……」

「ふふっ、ご想像にお任せします。それじゃ、私は部屋に戻るね」


 そう言い残してニヤニヤしながら部屋に戻る瑠璃。


 前にスーパーで考えていたことと同じことを言われ、俺は動揺で固まってしまう。



「はぁ……とりあえず晃に連絡しないとな」


 気を取り直し、今回は晃たちに協力してもらわないとできないため、電話をかける。



『どうした友也?』

「えっと、一つ手伝って欲しいことがあってな」

『おう、俺にできることならなんでもいいぞ』

「助かる。それで明日からさ、白雪たちと一緒に昼飯を食わないか?」

『ほぉ、なるほどなぁ。まぁ、教室だと目立つし中庭にでもするか?』

「……ん、助かる」


 瞬時にこちらの言わんとすることを理解し、協力してくれるのはとても心強いし助かる。以前に成実のことなら協力すると言ってくれているので、有難く頼らせてもらおう。

 まぁ、こちらからの頼みだし少しからかってくるのには目を瞑る。




 そして翌日。朝のうちに晃が白雪に伝えておいてくれたおかげで、俺たち四人で中庭へと向かう。その間、成実は嬉しそうな申し訳なさそうな表情をしていた。



「……ごめんなさい」

「え?」

「どうしたんだい成実?」


 中庭に着くなりそう謝ってきた成実。


「多分、私のお願いを友也くんが察してくれたんですよね?」

「一応そうなるが、俺は気にしてないし、晃たちも快く了承してくれたぞ」

「あぁ、友也の言う通りだ」

「うん、私としても晃たちとも話したいと思っていたからね」

「そっか……みんなありがとっ」


 そう言って彼女は笑顔を取り戻した。やはり彼女には笑顔が似合う。


「それじゃ、食べ始めようぜ!」

「そうだな」


 晃の一声で弁当や購入したものを食べ始める。



「そういえば、友也。君は弁当じゃないんだね?」

「あぁ、そうだな」

「それならば……」


 そう言いいながら白雪は成実の方に視線を向ける。成実は自分で弁当を作っているようだ。


「彼女に弁当でも作って貰うのはどうだろうか?」

「なっ!?」

「えっ!?」


 俺と成実が同時に驚きの声を上げる。正直に言うと憧れもあるし、作って貰えたら嬉しいが、彼女の負担になるのは嫌だと思う。


「いやいや、わざわざ作ってもらうのは申し訳ないし迷惑だろ」

「いいよ」

「え?」

「私が友也くんのお弁当作りますっ。彼女としてそれくらいはしなきゃ!」


 何かに焚き付けられたようにそんなことを言い出す成実。白雪に何か入れ知恵でもされたのだろうか……


「何かな友也?」

「い、いや、なんでもない。でもほんとに無理しなくていいんだぞ?」

「私がしたいからするのっ。だから、友也くんは気にしないで大丈夫ですよ」


 先程まで少し普段の口調になっていたが、再び学校用のへと戻り、俺に微笑みかけてくる。


「それなら……うん。お言葉に甘えようかな」

「はい、任せてください」

「あぁ、ありがとな成実」


 そう伝えると彼女は顔を赤くして、小さくなってしまった。晃や白雪がいることに気付き、我に返ったようだ。

 二人のおかげでこうして一緒に昼食を食べれてはいるが、生暖かい視線を向けるのはやめてもらいたい。


 しかし何はともあれ、明日からのお昼が楽しみになったのも事実だ。その後は普段よりもいい気分で授業を受け、家へと帰った。





「でも、本当にいいのか?」

『いいの! 友也くんは気にしないで大丈夫だよ?』


 夜になり、いつものように通話をしている時に再び聞いてみる。


『昼間も言ったけど、私がしたいからするんだよ。それに一人分も二人分も変わらないしね』

「それならいいんだがな……本当にありがとな」

『いえいえ、私は友也くんの……その、彼女ですから!』


 恥じらいながらも、そう言ってくれる彼女がいつも以上に愛おしく思えてくる。

 それに元々自分の分は作っているようなので、弁当自体は作り慣れている彼女がそう言うならばそうなのだろう。


『それから私の方からも、ありがとね?』

「え?」

『その、お昼一緒に食べたいこと気付いてくれてさ……華ちゃんと食べるのも楽しいけど、友也くんと食べれないのはちょっと寂しかったし……』

「っ!」


 先程の様子とは打って変わって、しおらしく儚げな声をする彼女に、思わず息を呑む。


「い、いや、俺も成実と一緒にいたかったし、気にしないでくれ」

『そっか……本当にありがとねっ』

「おう」





「彼女のお手製弁当か……」


 通話を終えた後、一人でそんなことを呟く。


「ははっ、凄い笑顔になってるな」


 ふと、自分の頬が緩みきっていることに気付いた。今まで彼女なんていたこと無かったし、瑠璃以外の同年代の女子に料理を振舞ってもらうこともなかったので、好きな人に作ってもらえるのがこれほど嬉しいとは知らなかった。



「楽しみだな」


 そう思いながら、その日は深い眠りについた。

 今回もありがとうございました。


 気付けば次で五十話、さらにあと数日で更新開始から一ヶ月ですっ。日々、読んでくださる方々がいること、また評価やブックマークを付けて下さることが糧となり、ここまでやってこれました。


 まだまだ未熟で拙い文章ではありますが、精進して参りますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。


 では、次の更新でお会いしましょう。

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