43.入学式
休みが明け、入学式の日となった。
今日は瑠璃の高校初めての登校日だ。ちなみに二年である俺は関係がなく、休みとなっている。
父さんも今日からまた仕事が始まるため、家を早くに出てしまった。
「忘れ物はないか?」
「大丈夫だよ! って言っても今日必要なものなんてほとんどないけどね〜」
「まぁ、そうだな。気をつけて行ってらっしゃい」
「うん! 行ってきます!」
高校の制服を身にまとった瑠璃を見送り、俺は部屋に戻る。
「ついに瑠璃が後輩かぁ」
受験も頑張っていたのを見ていたし、本当に合格出来てよかった、なんて考えていると、彼女の成実から連絡が来た。
『今日は入学式だね。妹さんはもう出発した?』
「あぁ、したよ。これから後輩になるから、何かあったらよろしく頼む」
『もちろん! 何でもまかせてね!』
「ありがとな」
『うん! あっ、そういえばだけど、私たちも一緒のクラスになれるといいよね〜』
「確かにそうだが、教室では話したり出来ないよな……」
互いの関係は隠すことにしているし、大っぴらに話すことは出来ない。
『んー、でもさ! 同じクラスになって委員とかも一緒なら、ずっと一緒にいられるよね!』
「確かに、委員だからと誤魔化せるしな」
『それじゃ、もし良かったら一緒にやらない?』
「おう! もちろんいいぞ」
そんな約束をしてから俺たちは電話を終えた。
彼女と一緒にいられる時間が増えるならば委員くらいどうってことない。
「明日になればまた会えるな。同じクラスになれるといいが……」
休み中はデート以降は会えておらず、久しぶりに会えるのが楽しみな自分がいる。委員のこともあるので一緒のクラスになれるといいなと思った。
そして昼頃になり、昼食を作っていると、瑠璃が帰宅した。
「ただいま〜」
「おう、おかえり」
そして帰ってきた瑠璃と共に昼食を食べながら話をする。
「初登校どうだった?」
「んー、高校生になったんだなぁ、って感じかなぁ」
「なるほどな……学校への道は迷わなかったか?」
「もちろん! 受験の時に覚えたし、文化祭も行ったしね!」
「あぁ、そうだったな。クラスはどうだ? これからやって行けそうか?」
「うーん、みんないい人そうだったし、多分大丈夫だよ。というかお兄ちゃん一気に質問しすぎだよ〜」
「す、すまんな……」
瑠璃が学校に馴染めそうか、つい心配になり色々と聞いてしまった。瑠璃のことだから大丈夫だと思うが、何かあってからでは遅いからな……
「それに、お兄ちゃんもいるんだしさ。何かあれば助けてくれるつもりでしょ?」
「ははっ、お見通しだな。まぁ、何も無いことを願うが、何かあれば遠慮なく頼ってくれ」
「うん! よろしくお願いしますね、先輩?」
「おう、任せてくれ」
いつかやったようなやり取りをし、二人で笑い合う。まぁ、実際何かあれば全力で助けるし、協力すると思う。大切な妹だしな。
そんなことを話していると昼食を食べ終えたので、ささっと皿洗いをしてしまい、部屋に戻ることにした。
「明日から学校か……とりあえず準備しとくかな」
明日が楽しみなような、怖いような感情が心の中で生まれていたので、気を紛らわすために明日の支度を済ませ、久しぶりにゲームをする。
「最近やれてなかったよなぁ。気分転換にはFPSかな」
そうして俺は以前に彼女ともやったAIPEXを開き、しばらくの間、黙々と一人で戦い続けた。
余談だが、成実も俺と一緒にやったゲームは暇な時にやっているらしいし、休みの日に二人で一緒に遊んだりもしている。
「……もう夜か」
そして気づけば外は真っ暗になっていた。
瑠璃の作った夕食を食べ、明日の学校のために早めに寝るつもりなので、風呂もすぐに済ませてしまう。
風呂上がりに部屋でまったりと過ごしていると、彼女からRICEが来た。
『友也くん、今暇かな?』
『あぁ、暇してるぞ』
『電話かけてもいい?』
『もちろん』
そう返すや否や、彼女から電話がかかってきた。
「もしもし。何かあったか?」
『ううん、少し話したいなぁって思ってね』
「そうか。……明日から学校だな」
『そうだね! また友也くんと会えるんだねっ』
「そ、そうだな。というか朝も話したが、同じクラスになれるといいよな」
『あっ、そうだった……』
去年は同じだったが、今年はどうなるかは分からない。高三では文系理系でクラスが分かれるため、それが同じならクラスも同じになれるが。
『学校で、私たちの関係のことは隠すとは言っても、違うクラスだとなかなか会えなくなるよね〜』
「そうだな……それは嫌だな」
『うん、私も。家も反対方向だから、こっそり一緒に登下校したりもできないしなぁ』
確かに家が近ければ、途中まで一緒に行くなどもできただろう。一緒に登下校なんて恋人らしいことをしてみたいと思っている自分がいることに気づいた。
「……申し訳ない」
『えっ!? なんで友也くんが謝るの?』
「俺が隠すべきだなんて言ってたから成実に無理させてしまって……」
『そんなことないよ? それに迷惑もかけたくないし、前も言ったけど二人だけの秘密ってなんか特別な感じで良いなって思うし!』
「……ありがとな」
『どういたしまして!』
そうして俺たちはその後も少し話をしてから電話を切った。
「本当にいい彼女だな……」
普段からそう思ってくるが、改めてそう思った。話していて落ち着くし、俺には勿体ないと思う。それに、そういう風に自分が思っているうちは、学校で隠さずに行くのは無理だと思う。
そして、もっと彼女にふさわしいような彼氏にならないとな、と考えながら俺は深い眠りに落ちた。




