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42.母さんと成実

 デートの日から少し経った。


 毎日彼女とは電話で話したりしているが、さすがにあの日の次の日はお互いにぎこちなかった。あんなに大胆なことをしてきた彼女だが、電話だと俺以上に恥ずかしがっていた気がする。

 今度会った時に目合わせられるかな、とそんなことを考えながら毎日をのんびりと過ごす。



 そして三月も終わり、四月に入ったばかりの頃、久しぶりに父さんが家に戻ってきた。



「ただいま友也、瑠璃」

「おかえり、父さん」

「お父さん、おかえり〜」



 聞いた話によると、大きな事業は春前で終わっていたが、新年度からの備えをしていたら休みを取るのが遅れたそうだ。



 父さんが帰ってきたため、瑠璃と俺の二人で料理を振る舞うことにした。


「おぉ、相変わらず美味しいな。ありがとう二人とも」

「どういたしまして」

「どういたしまして〜」



 三人での久しぶりの食事を終え、積もる話をしていると、俺と彼女の話になった。



「一応瑠璃から付き合い始めたとは聞いたんだが、仲良くやっているか?」

「る、瑠璃から聞いてるのか……」

「あ〜、ごめんねお兄ちゃん? 今までこんなこともなかったし、お父さんを安心させるために伝えちゃった」

「あぁ、いや怒ってるわけじゃないぞ」


 怒っているというよりも驚いたとか恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。父親に初めて彼女ができたと妹から報告されたら、誰だってそうなるだろう。



「あっ、私が居たら話しにくいかもだし、席外すね」

「気にするな……ってもう行っちゃったか」

「あはは、僕からも申し訳ないな。でも詳しくは聞いてないし、嫌じゃなければ友也から聞いてもいいか?」

「あぁ、うん。了解だ」


 恥ずかしい思いもあるが、それと同時に誰かに思いを共有したかった部分もあるため、信頼出来る上で、彼女のことを知らない父さんなら最適だと思う。

 それに今まで心配かけたし、前に好きな人が出来たとは言っているので、今更変わらないとも思う。


 それから俺はバレンタインのこと、ホワイトデーでのこと、それからつい先日のことなどを掻い摘んで話していく。


 本音を言うと、話しているうちにどんどん恥ずかしくなったが、父さんは真剣に聞いてくれていたし、ここで誤魔化した方が後からモヤモヤすると思ったため、途中で止めるようなことはしない。


 少し顔が熱いことに気づきつつも、話を無事に終えることが出来た。



「そうか……いい人なんだな」

「あぁ、そうだな。俺には勿体ないような人だよ」

「聞いた限りだとそんなことないと思うけども、まぁ、友也が少しずつ自信を持ってくれればいいか」

「そう簡単に言ってくれるなよ……」

「ははっ、すまんすまん。でも聞いていると過去のことを思い出してしまってな」

「過去のことを?」


 父さんの言葉を反芻し、聞いてみる。


「なんだか、友也と自信がなかった頃の自分を重ねてしまってな。それに相手の方も母さんに似ている気がしてな」


 そう言われて気づく。確かに元気で明るく、気遣いができる優しい彼女は少しだけ母さんに似ているかもしれない。


「僕も母さんと出会う前は自信なんてなかったし、母さんは若い頃は普段は心優しくて可愛い人なのに、時たまいたずらとかしてきたなぁ」


 懐かしそうに父さんが語る。いたずらと聞き、先日のキスのことを思い出し、顔が赤くなってしまう。


「まぁ、今が幸せならばいいんだよ。幸せはなかなか見つからないくせに、離れる時は一瞬だしね。友也なら大丈夫だと思うけど、しっかりと彼氏として頑張ってくれ」

「あぁ、もちろんだ」


 彼女を幸せにしたいし、彼女と共に幸せになりたい。俺は何があろうとも、今の幸せを離すつもりは無い。


 父さんの言葉に力強く頷くと、父さんも頷き、笑顔になる。


「ははっ、若いっていいね〜」

「なんだそりゃ」


 そう言って二人で笑い合う。以前よりも近くなった距離、彼女とだけではなく、家族との幸せも離したくないなと思った。



 その後は将来のために父さんの仕事について聞いたりして、途中から瑠璃も戻ってきて、三人で話を続けた。



 どうやら父さんは春休み中は休みなようなので、三人でいられる幸せを噛み締めながら春休みを過ごした。



 成実ともまた出かけようとも思ったが、彼女も彼女のお母さんが仕事が終わり、帰ってきているそうなので、無理に誘ったりはしなかった。



 というか俺の父さんが帰ってきた日に彼女のお母さんも帰っていたそうだが、もしかして同じ職場だったりするのだろうか?

 まぁ、どうしても気になったら聞いてみればいいし、今はそんなことよりも彼女自身のことをもっとよく知りたいと思った。

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