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41.夜景

 緊張を見せないように気を張りながら、俺は成実へ声をかけた。


「そういえばここからの景色が綺麗だって噂になってたな」

「そうなんだ……わぁ、ほんとに凄い綺麗……」


 店を調べている際に最上階からの夜景がとても綺麗だと言うのを見つけたため、席の予約は窓の近くになるようにしたが、そうして正解だったと思う。


「なんか、こういう景色を見ると、付き合う前のクリスマスの時を思い出すなぁ」

「あぁ、あの景色も忘れられないな……」


 雪が降る夜を照らすイルミネーションと彼女の笑顔。決して忘れることは出来ないだろう。


「数ヶ月前のことなのに、なんだか懐かしいな」

「そうだね……あの時とは関係も変わったよね。そういえばあの時にはもう友也くんのこと、すっごく大好きだったな〜」

「っ! そ、そうなのか……」

「うん、だから今こうして二人でいられるのはとっても幸せ!」


 やはり彼女は笑顔が似合う。そんなことを思いながら、幸せそうに笑いかけてくれる彼女に言葉を返す。


「あぁ、俺も今が凄く幸せだ! ありがとな」

「えへへ、どういたしましてっ。それからこちらこそありがとう!」

「ははっ、おう」


 夜景を眺めながら二人で思いを語り合っていると、料理が一品ずつ届く。

 やはり一つ一つがとても美味しく、良いレストランなのだと理解できる。


 当たり前だが出てくる順番も考えられており、食べる手が止まらない。


 そして、それは彼女も同様で、初デートにも関わらずお互い

黙って食事を取っていく。まぁ、若い人にも来れると言うだけで、元々この店は格式高いお店なので黙っている方が良いかもしれないが。



 デザートまで食べ終え、二人は顔を上げる。


「ふふっ、美味しかったね」

「あぁ、言い表せないくらい美味かったな」

「……長居するのも申し訳ないし、退席しよっか?」

「あぁ。あ、その前にお手洗いだけ済ませといた方がいいか」

「あっ、そうだね」

「荷物見てるから先に行っててくれ」

「了解っ」


 不自然じゃなかっただろうか。俺はそんなことを考える。


 こういう店だと男が払っておく方が良いと聞いたので、言われた通りに実践する。店の人に合図をし、彼女がいない間に会計を済ませてしまう。



 少しして彼女が席に戻ってくる。


「お待たせ〜」

「待ってないよ。それじゃ帰ろうか」

「えっ、友也くんは……あっ、別にそんなことしなくても良かったのに」


 俺の意図に気づいてしまったようで、申し訳なさそうな、それでいて嬉しそうな表情でそんなことを言う。


「昼間も言ったが、少しくらい見栄を張らせてくれ」

「ふふっ、そんな事しなくても充分かっこいいけどなぁ」

「あ、ありがとう。まぁ、まずは店を出るぞ」

「うん!」


 店を後にし、彼女と手を繋いでから駅の方へと足を進める。



「もうすぐ駅だね……」

「そうだな……」

「いつも終わりが近づくと寂しいような気持ちになっちゃうな」


 それは俺も同じだ。彼女と少しでも長くいたいと思ってしまう。また明日からもいつでも会えるのに、別れ際はどうしても苦手だ。


 俺たちは手をしっかり握り、肩がくっつくほど近づきながら足を進める。そしてしばらくして駅に着く。


「電車、乗ろっか」

「あぁ」


 電車の中ではお互い無言だった。別れを惜しむような、寂しいという気持ちがすぐ傍の彼女からひしひしと伝わってくる。一緒に暮らしていたらずっといられるのかな、とそんな変なことを考えてしまうくらい、俺もまだ一緒にいたいと思う。



 そしてしばらくの間、電車に揺られ、最寄り駅へとたどり着いた。



「着いちゃったね……」

「あぁ……改めて今日はありがとう」

「うん、私の方こそだよ。今日も一緒にいてくれてありがとう!」

「こちらこそ。これからもよろしくな」

「うん! あ、ちょっとしゃがんで?」

「ん? どうした?」


 彼女にそう言われて膝を軽く曲げると、顔が近づき、頬に柔らかい感触が触れる。



――チュッ



「っ!?」

「えへへっ! いきなりでごめんね? でもそんな寂しそうな顔をされちゃったし、私も寂しいから……それじゃ、またね!」



 いきなりのことで反応出来ずにいると、彼女は凄い真っ赤な顔で、いたずらが成功した子供のような、だが大人の色気もあるとても魅惑的な表情でそんなことを早口で言って、駆け足で去っていった。



「それは反則だろ……」


 俺も顔を真っ赤に染めながらそんな言葉を漏らしてしまう。だが仕方ないことだと思う。


 嬉しいか嬉しくないかで言ったら、凄く嬉しいが、とても恥ずかしい。恥ずかしさで顔が燃えるように熱く、鼓動もとても早くなっている。



 頬だったよな……元々リードしようと思っていたにも関わらず、最後にこんなどんでん返しを食らったんだ。唇の時には俺の方から行きたいと思う。


「今考えても仕方ないか……」


 正直、頬でこれだけ色々な感情が混じって、心が整理できないなら、唇なんていつになったらできるのか分からない。というか当分できないだろう。


 それに今だけは、余韻に浸りたいかな……

 これからの事は一旦忘れ、そんなことを考えながら俺は家へと歩き出した。

 自分からやったくせに成実の方が後で悶えてそう……

 初デートだったので、二人ともが積極的に行こうって内心で考えていました。それで照れてる辺り、初心で可愛らしいですけど


 では、今回もご覧くださりありがとうございました。また次の更新でもよろしくお願いしますね!

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