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35.気遣いと思いやり

 駅前からは彼女とは別々の道なので、名残惜しかったが手を離し、そこで別れた。俺は今までにないような幸福感に包まれながら、家へと足を進める。



「ただいま〜」

「おかえり! お兄ちゃん今日は遅かったね?」

「あぁ、遅くなるなら連絡入れとくべきだったな」

「まだ夕飯も作ってないし大丈夫だよ。それで何か嬉しいことでもあったの?」

「ま、まぁ、あったと言えばあったな……」


 とても嬉しいことがあったが、何だか恥ずかしくなり目を逸らし、誤魔化す。


「お兄ちゃん……分かりやす過ぎるし、しかも今日が何の日か考えたらある程度予想はできるよ〜?」

「ゔっ……そうだな、瑠璃にはお世話になったし、後で伝えるよ」

「うん!」


 瑠璃には色々と相談させてもらったり、本当にこの件ではお世話になりっぱなしなので、結果は伝えることにした。




 その後夕食を終え、瑠璃とリビングで寛ぐ。


「それで、事の顛末を聞いてもいいかな?」

「あぁ、といっても今日は想いを伝えて返事を貰っただけだけどな」

「お兄ちゃんがついに……! それでそれで、結果は?」

「……色良い返事が貰えたよ」

「やった! やったね、お兄ちゃん!」


 恥ずかしかったので、節々は省略しながら簡単に伝えるが、瑠璃は自分の事のように喜んでくれた。


「あぁ、ありがとな」

「私は何もしてないよ。お兄ちゃんが頑張ったんだからっ」

「いや、俺はいつも周りに支えられっぱなしだよ。本当にありがとう」

「そっか。えへへ……どういたしまして!」


 そしてそのまま根掘り葉掘り聞かれる前に俺は自分の部屋へ向かった。




「ふぅ、でも今日は本当に良かった……」


 この一ヶ月間はどうしても彼女のことを意識してしまい、一心不乱になにかしなければ心が落ち着かなかった。まぁ、そのおかげでテストでも、前回と同じ順位を維持できたのだが。



「告白ってあんなに緊張するものなんだな」


 彼女に想いを伝える時は緊張からか頭が真っ白になり、本当におかしくなりそうだった。変なこと言ってなかっただろうか?


「まぁ、考えても分からないか。過ぎたことよりもこれからのことでも考えるか」



 俺は晴れて好きな人と付き合うことになった。しかし今まで失念していたが、相手は学園の天使様だ。もし恋人ができたということが分かれば、彼女に行為を抱いている人からの何かしらの制裁があるかもしれない。


「隠し通せるか……?」


 彼女は、自分のせいで俺に何かあると知ったら、多少なりとも傷つくだろう。

 ならば学校では隠すのが一番だが、付き合いたてでもあり、少しでも話していたら態度に出てしまう気がする。


「とはいえ今のままというのも寂しいよな」


 普通なら学校で会って話したりできるのに、それが制限されるのも如何なものかと思う。



「あ、一人で考える必要もないのか。恋人になったんだしな……」


 それに俺一人で決めても、彼女がその意見に反対なら、多分俺は彼女の意見を優先するだろう。



 俺は彼女に電話をかけようとしたが、直前で躊躇ってしまう。告白して付き合うことになったが、恋人ならどのような態度で接すればいいんだろうか、と思ったためだ。



 そんなことを考えていると彼女の方から電話が来る。



「は、はい、もしもし」

『もしもし……』

「こんばんは、成実」

『う、うん。こんばんは、友也くん』


 どうやら意識しているのは俺だけではなかったようだ。このままでは埒が明かないと思い、今まで通りに声をかける。


「あ〜、緊張せずに今まで通りに接してくれればいいから」

『う、うん! ごめんね』

「いや、大丈夫だ。それに俺も恋人になってどう接すればいいのか迷ってたしな」

『友也くんも……。まぁ、関係は変わっても私たち自身は変わらないし、これまでと同じでいいよね?』

「そうだな、そうしよう」


 彼女の言葉に納得し、お互いに今まで通りにすることにした。


「そういえば何か用があったのか?」

『あっ、うん。私たちのことなんだけど、学校ではどうしよっか?』

「やっぱりそうだよな。成実はどうしたいとかあるか?」

『私は……友也くんに迷惑がかからないようにしたい、かな?』

「そ、そうか」


 元々彼女と付き合っても釣り合うような人間ならばこんな悩みを抱える必要はなかったが、後悔しても仕方の無いことだ。

 それに俺を気遣ってくれるのは嬉しいが、気を遣わせすぎるのもよくないと思う。だからこそ彼女の本音を聞きたい。



「俺のことは一旦置いておくとして、成実自身はどっちがいいか聞いてもいいか?」

『私は……実を言うとどっちでもいいんだよね』

「えっ、そうなのか?」

『うん! 周りがどう思おうと私たちはその、恋人同士なんだし、普通に学校でも話すのもいいと思う。話さないで二人だけの秘密って言うのもいいと思う。だからこそ友也くんに一番迷惑なんかがかからないのがいいかなぁって』

「そうか。なるほどな……」


 無理に気を遣わせたと思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。彼女は純粋に俺の事を慮り、迷惑をかけたくないと言った。


『ダメ、かな?』

「いや、ありがとな」

『どういたしましてっ。だって彼女だから彼氏の事を思いやるのは普通じゃん!』

「ははっ、そうかもな。逆に俺も彼女のことを思いやらないとな」


 もう一度よく考えてみる。

 言い訳のようだが、もし俺と付き合っていることが分かれば、他の人もワンチャンあるのではと考え、彼女に告白することがあるだろう。それに彼女自身が俺に迷惑をかけたくないと言っていた。

 ならば今はこうするのが一番だろう。



「今は付き合っていることを周りには隠そう。学校では今まで通りに接することにする」

『うん、了解だよ!』

「ありがとう、成実」

『さっきから感謝されっぱなしな気がするけど、そんな大したこともしてないし、私の方こそだよ?』

「それでも伝えたかったんだ。あと、これからもよろしくな!」

『うん! よろしくっ!』



 そうして俺たちは恋人になって始めての通話を終了した。

 学校では付き合っていることを隠すつもりだが、どこでバレるか分からないから気をつけないとな。と、そんなことを考えながら俺は眠りについた。

 一応今回から二章となります。付き合い始めましたね〜

 これからは甘めなストーリーにしたいと思ってます。それから新学期で新しく登場する方もいたりして……

 まぁ、暫くはのんびりとした感じで進めていきまして、その間に高二の間の大筋を決めていきたいと思っておりますので、更新速度が落ちるかもしれないことをご了承ください。まぁ、毎日するつもりですが

 今後ともよろしくお願い致します!

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