閑話 心の痛みと想い
今回まで成実視点です。次回からは2章に入る予定……!
今日は私の学校で入試の最終日があり、私は試験官の補佐として手伝いをする。
寒い中学校へと出向き、午後まで補佐を務め、その後に片付けなどを手伝っていたら夕方になっていた。
「いつの間にか夕焼け空になってたよ〜」
なんてことを呟きながら、家の方へと向かっていると私の好きな人を遠目に発見する。
「あれっ! 友也くんだ! ……女の子と一緒? それにとっても仲良さそう……」
彼を見つけた瞬間はとても嬉しい気持ちになったが、その隣にいるのが女の子と分かり、胸の奥がズキズキと痛むのを感じる。
「か、彼が誰とデートしてても私には関係ない、よね……」
最後の方は消え入りそうなほどか細い声でつぶやきながら眺めていると、彼と目が合ってしまう。
「っ!」
つい、私は反対方向へと逃げ出してしまった。
しばらくして心が落ち着いてきたので、家へ帰ろうと重い足を動かし、歩き始める。
「私が告白してないから、告白されたいななんて考えてたのが悪いのに、何勝手に傷ついてるんだろう……」
彼は少なからず自分のことを好きだと思っていたし、私も彼のことが大好きだ。そのためどうしてもあの光景を忘れることが出来ない。
「ただいま……」
そう言ってもお母さんは仕事で居ないから返事は返ってこない。虚しい気持ちになりながら部屋でダラダラと過ごしていると、友也くんから連絡が来た。
『今日まで試験官補佐お疲れ様』
『ありがとう!』
文面では極力今の気持ちを出さないようにと意識するが、彼から先程のことを言われ、心が痛くなるのを感じる。
『良かったら電話かけてもいいか?』
気にしないでとは言ったが、彼がそこで引き下がるような人ではないことは知っている。そんな彼の優しさが身に染みる。
『俺が何かしちゃったか?』
「えっ! いや、そんなことないよ。友也くんはいつもの友也くんだから大丈夫だよ……」
そう、彼はいつも通りなのだ。いつも通り、心を許した相手には優しく、だからこそそれが異性であっても……
「だから悪いのは私なの。あの時も友也くんが女の子と仲良さそうに歩いてるのを見て、なんか嫌な気持ちになっちゃったの。友也くんが誰かと一緒にいたり、デートしても私には関係ないのに……」
つい、本音が漏れてしまった。自分の発言を後悔していると、彼から返事が来た。
『なら成実が悪いわけじゃないよ。それとあの時一緒にいたのは妹の瑠璃だ。合格祝いに兄として付き合ってたんだよ。それに俺が……』
一緒にいた女の子が妹さんだと知り、私は思わず心から安堵してしまう。最後に何か言いかけていたのも今の私にはどうでもいい事だ。
安心し、いつものように振る舞えるようになったので、その後は少し話をして通話を終えた。
「そっかぁ、妹さんかぁ……。ほんとに良かった……」
安堵からか、つい涙が零れそうになっていることに気がつく。
「でも、今後どうなるかは分からない。今の時間を大切にともお母さんに言われたし、これからはもっと積極的にならなきゃ……!」
そんな決意をしてしばらくするとバレンタインの日となる。
朝早くに学校へと来て、友也くんの机にメッセージを入れる。そっちの方がRICEだけよりも意識してくれそうだし、そんなことを考えながら迎えた放課後。
「どうして今日に限って先生からお願い事をされるかなぁ……」
普段は優等生を装うが今だけは許して欲しい。すぐに先生の用を終え、教室へと戻る。
そして待っていてくれた友也くんに、渡すのは手作りのチョコだと伝える。想いを込めるために手作りにしたが、彼が喜んだくれたので一安心。
そうして彼に渡そうと思ったが、ふと先日のことを思い出す。こんなことを考えるなんてほんとに悪い子だなぁ、なんて自分のことを思いながら彼に言う。
「さて、あげる前に一つ問題です。これは義理でしょうか? 本命でしょうか?」
すると彼は驚いたような、困ったような表情をした。少々申し訳ない気持ちになった私はある提案をする。
「なら、一ヶ月後のホワイトデーに答えを聞かせてよ」
これならば彼も気持ちを伝えやすいだろう。彼もそれを受け入れてくれたようで、待っていてくれと言われてしまった。
「どうしようかな〜」
ついつい二年間も待っていたせいで、反射的にそんな意地悪なことを言ってしまった。彼はその言葉を聞き、自分を責め始めてしまったので私は慌てて言葉を返す。
「え、あっ、待つから! ここまでずっと待ってたのに最後にダメになるとか嫌だよ!?」
「それってもはや答えを言っているようなものでは……」
「……とにかく! そこまでしか待てないからね? 前に妹さんとのデートと勘違いさせたことのお返しとしてふざけただけなのに真に受けないでよ、もぉ」
慌てていたため、言葉の選択を間違えた気がする。私は少し八つ当たりをしつつも、一ヶ月後にはこの時間、この関係が終わるのだとしみじみ思う。
そうして迎えた一ヶ月後、ホワイトデー。今日は朝から男子生徒が女子生徒にお返しを渡していたが、私が渡したのは友也くんにだけだ。
授業をしてくれる先生には申し訳ないけど、今日の授業は頭に入ってこなかった。いざ、当日となると緊張が凄いのだ。
そのまま心臓がバクバクと音を鳴らしている中、放課後となってしまった。
「お待たせ」
「うん、たくさん待ったよ。本当に」
少し間を空け、今日の本題へと入る。
「それで答えを聞かせてもらえるかな?」
「あぁ……」
そう言って彼は深呼吸をし、言葉を続ける。
「まず先程も言ったが、待たせてしまって申し訳ない」
「うん……。本当だよ。初めて気になってからもう二年だよ?」
「えっ?」
つい、緊張からか、本音が漏れてしまった。彼はやはり覚えていなかったようだ。
「ふふっ、やっぱり覚えてないかぁ。中二くらいの時に強引なスカウトマンから友也くんが助けてくれたんだよね」
「そうだったのか……あ、あの時の女の子か?」
「思い出してくれたんだね! まぁ、でも今はもう関係ないかな」
思い出してくれたが、本当に今となってはそれはどちらでも構わない。大切なのは今の気持ちだ、そう思った私はついに言ってしまった。
「だってこんなにも毎日が楽しくて、大切な人と一緒にいられるんだから!」
つい気持ちが溢れてしまい伝えてしまい謝ったが、彼を見ると深呼吸をしていた。そして、彼も想いを伝えてきてくれた。
「成実、好きだ」
「――っ!」
その言葉を聞けた瞬間、私は喜びや安堵などの気持ちが溢れてきて、涙が零れそうになってしまう。そんな成実を知ってか知らずか、彼は言葉を続ける。
「どんどん気持ちが膨らんで、いつしか成実のことがとても大切な存在になってた」
「これから先ずっと一緒にいたい。何があろうとも君の傍で支えるし、いなくならないと誓う。だから……俺と付き合ってくれ!」
そして私は零れ落ちそうになる涙をグッと堪え、言葉に詰まりながらもしっかりと返事をする。
「はい! よろしく、お願いしますっ!」
すると彼からも力強く返事が来た。
「あぁ!」
その後二人で仲良く喋りながら、私たちはこれから恋人同士なんだなぁ、と浮ついた気持ちで彼の話に返事をしていた。
学校を出る際に、手を繋いでしまったが、自然にできていただろうか。
そんなことを考えながら歩いていると駅の近くへとたどり着く。ここからは私と友也くんの家は反対方向なので別れなければならない。しかし私の気持ちはとても晴れやかだ。
「今日はありがとう。とっても嬉しかったよ!これから末永くよろしくお願いしますっ」
「こちらこそ、これからよろしく頼む」
「それじゃ、またね!」
「あぁ、またな!」
そう言って私は家へと駆け出す。これからの日々が彼と一緒なら毎日幸福だろうと、確信めいた思いを胸に描きながら。
成実視点の方もありがとうございました!ここで完全に一章完結って感じですね。
次の更新は数日以内、早くて明日からになりますが、もしかしたら少々お待ちいただくかも知れません。二章の構成をしっかり考え、どうすれば甘々なストーリーになるのか考える時間が欲しいですので。
今後も作品は続いていくつもりなので、引き続きよろしくお願いします!
改めまして、ここまで読んで下さりありがとうございました!




