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31.兄妹デート?

 そして迎えた瑠璃とのお出かけ当日。


「お兄ちゃんおはよっ!」

「あぁ、おはよう」


 受験に合格でき、解放されたことで上機嫌になった瑠璃と会話をしながら朝食を食べる。


 今日は朝食を食べた後、二人で都心の方へと遊びに行くことになっている。ちなみにどこに行くのかは瑠璃自身が決め、俺には伝えられていない。


「それで今日はどこに行くんだ?」

「えっとね、まずはゲームセンターで思いっきり遊ぶでしょ。それから最近話題の甘味処で軽く食べて、大きなショッピングモールに行って、それからそれから〜」


 瑠璃の言うことを聞きつつ、今日はすごく振り回されそうな予感がした。




「行こっか!」

「そうだな。戸締りも大丈夫だな」

「うん! それじゃしゅっぱーつ!」


 そうして俺たち二人は家を出て、都心の方で聞かされていた通りのルートを行く。



「ゲームセンターなんて久しぶりだな〜。あっ、太鼓やろ! 太鼓! その後はダンスのやろっ!」


「んん! このパフェ美味しー! あ、お兄ちゃんのも一口貰うねっ。ん〜、こっちも美味し〜!」



そんな感じで午前の予定の所を回った。ちなみに俺も甘いものは好きなので、甘味処で色々食べたが、幸せの味とはこういう味なんだなと分かるくらいには幸福感に包まれていた。



「よし、それじゃ、今日はお兄ちゃんに色々と服を試着してもらうからね! 覚悟しててね!」

「えっ、俺か?」

「うん! せっかくの好きな人ができたんだからかっこいい格好して欲しいじゃん!」

「瑠璃……。それじゃお言葉に甘えようかな」


 そうして俺のファッションショーが始まった。


 これでもない、あれでもないと瑠璃が色々と服の組み合わせを持ってきて、俺がそれを着るの繰り返しだ。かれこれ一時間近くやっている気がする。


「よし、これがいいかな! 他にも良かったのを三パターンくらい買っとこ!」

「終わったか……」

「もぉ、お兄ちゃんだらしないよ? 女子の買い物はみんな長いんだから慣れてくれなきゃね」

「そうだな……。まぁ、ありがとう。とりあえず着替え直すか」


 そう言って元々着ていた服に着替えようとすると瑠璃が止めに入る。


「あっ、待って。すみません、これ着たまま帰れますか?」

「構いませんよ〜」

「ありがとうございます!」


 瑠璃は店員さんと少し話をしてから俺の方にやってくる。


「ちょっと待ってね。髪も少し整えちゃうから」

「お、おう。何から何まですまんな」

「いえいえ! ……よしっ、できたよ」


 髪を整え、鏡の方を向くように瑠璃が促してきたので、鏡に映る自分を見てみる。


「凄いな……」


 思わずそんな言葉がこぼれる。目の前にいるのは普段とイメージがとても変わった自分だった。


「でしょ! お兄ちゃん、元々かっこいいんだがらそれを活かさなきゃ勿体ないよ!」

「そうか? まぁ、瑠璃が言うならそうなのかもしれないが」

「お兄ちゃんはもっと自分に自信を持つべきだと思うなぁ。そうしないといつまで経っても告白できないよ?」

「うっ……痛いとこ突いてくるな」


 未だに告白ができていないのは、元はと言えば自分の気持ちが弱かったせいだ。だが、前に受験後までに覚悟を決めると言ってしまったため、もう逃げ道などない。


「私は応援してるし、きっと大丈夫だと思うけど、玉砕したら私が慰めてあげるからね!」

「玉砕とか縁起でもないこと言うな。まぁ、そんときは慰めてもらうかもな」

「ふふっ、黙って妹の優しさに包まれれば良いのです!」


 そんなことを話しながら俺は会計を済ませた。その後は二人でショッピングモールの中をふらふらと歩き、気になったところには入ったりして時間を過ごした。




「ふふっ、今日はとっても楽しかったな!」

「あぁ、俺もだよ。今日はありがとな」


 そんなことを話しながら最寄り駅を出て、家へと向かっていると見知った顔を見かけた。


「成実……?」


 遠かったので確信はできなかった。しかし目がしっかりと合ったと思うとどこかへ駆けていってしまった。


「お兄ちゃんどうかした?」

「いや、なんでもないよ」

「……今日はさ、私のわがままで振り回しちゃってごめんね?」

「いや、さっきも言ったが楽しかったし、感謝もしてるよ」

「感謝?」

「あぁ、服と髪を少し触れば雰囲気が変わるなんて知らなかったしさ」

「あ、なるほどね。まぁ、お兄ちゃんがそう言ってくれるなら私も一緒にデートに行けて良かったよ!」

「デート?」

「うん、デート! 兄妹デートだね!」


 そう言って瑠璃は可愛らしい笑顔になる。瑠璃は俺の妹とは思えないほどに可愛らしく、落ち着きがあるが、たまに見せる無邪気に笑う時の表情が一番魅力的だと思う。


「デートか……。まぁ、瑠璃が楽しそうなら俺も良かったよ」

「ふふっ、またいつか一緒に出かけようね?」

「お互い暇だったらな」

「うん!」


 そうして二人で家に向かって、夕焼け空の中をゆっくりと歩いていく。

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