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26,好きな人と父の思い

 俺はゆっくりと話し始めた。


「そうだな……。俺の好きな人はすごく優しい人だよ」


 彼女に対して思っていることを言葉に紡いでいく。


「とても気遣いができて、俺なんかにも普通に接してくれて、俺が過去のことを話したら彼女もそれをちゃんと聞いてくれた上で彼女自身のことも話してくれた」


「その時に知ったけど、少し近しい境遇だったことで、さらに気が許せる存在になったと思う」


「それから、たまに抜けてるところもあって、でもそこもまた可愛らしくて、照れやすいくせに妙に距離が近かったりして……」


「何よりも俺は彼女の笑顔が好きなんだ。とても眩しくて、魅力的で、俺の心をギュッと掴んで離さないようなそんな笑顔が」



 俺は思っていることをそのまま口にした。その間父さんは黙って頷きながら、優しい目でこちらを見守っていてくれた。それがなんだかこそばゆくて、でも嬉しかったりもした。


「って、長々と話しちゃってごめん」

「いや、大丈夫だよ。本当に大切なんだね、その人のことが」

「あぁ、それだけは確信して言える」

「うん、それならば僕から言えるのは一つだけかな。今後何が起こるかは誰にも分からない。僕の時もそうだった。だからこそ大切なのは過去の後悔ではなく、これからをどうするか、だとそんな風に思う。友也がどんな選択をしても僕は尊重するよ」


 そんな父さんの言葉が俺の中にスっと入ってくる。俺は力強く頷いた。


「僕は彼女を亡くした時は何もかも崩れて、今までの事が全て消えてなくなってしまったような気分になった。そのせいで仕事漬けになって、友也にも瑠璃にも沢山迷惑をかけてしまった。理由はどうであれ、本当に申し訳ない」

「ううん、もう気にしてないよ、本当に。父さんがいなくて寂しい思いもしたし、こんな時に家にいてくれたらって考えたこともあるけどさ、今こうしてちゃんと話をしてくれてるんだ」


 これは紛れもない本心だ。確かに父さんがいなかったことで、荒んだ心が落ち着くのにも時間がかかったのかもしれない。だが、さっき父さんが言ってくれたことを俺は口にする。


「それに大切なことは過去の事じゃなく、これからどうするかなんだろ? これからはもう少し頻繁に帰ってきてくれると嬉しい」

「そうか……いや、そうだな。ありがとう友也」

「あぁ。それから礼なら瑠璃にも言ってやってくれ。あいつがいてくれたから、兄として、家族としてしっかりしなきゃって思って立ち直れたのもあるし」

「あぁ……本当にありがとう。それから、改めてよろしく頼む」


 そう言って父さんは頭を下げた。


「こちらこそ。これからもよろしくな、父さん」

「あぁ……あぁ!」


 そうして父さんと俺は二人で力強く頷きながら、二人の間にできた長年の溝を埋めるかのように、その晩は長々と今までの事を話し合った。




 そして翌朝。昨夜はデートのようなことやそれまでのことを、父さんとの面と向かって話し合ったりなどしたが、いつも通り起きて朝食を作ろうと一階へ降りる。するとそこには父さんの姿があった。


「おはよう友也」

「お、おはよう父さん?」

「僕がいたのが意外だったのかな?」

「あぁ。今までは次の日の早朝には出て行ってたしな」

「今回の休みは二日取れていたんだよ。今日まで休みだ。それにこれからはもう少し戻ってこれるようにするつもりだ」


 そう言って父さんは笑いかけてくる。こんな表情は以前なら見ることは出来なかっただろう、と思いながら俺も笑い返す。



「あっ、お兄ちゃん、お父さん、おはよ! 二人とも色々話せたんだね」

「あぁ、お陰様でな。いつもありがとな、瑠璃」

「え? いきなりどうしたのお兄ちゃん?」

「瑠璃、色々と迷惑をかけてしまってすまなかった。それから、友也のことを支えてくれてありがとう」

「えっ、お父さんまで!?」

「感謝を伝えたかった気分なんだよ」

「僕も友也と同じだ。いつもありがとう」

「えっと……よく分からないけど、どういたしまして!」


 そうして俺たちは久しぶりに三人で笑いあった。こんな時間が再び来るとは思っていなかったので、なんとも心が温まり、満たされる気分だ。そんなことを考え、そっと呟く。


「……こんな時間がずっと続くといいな」

「そうだね。僕も、この時間を離さないよう努力するよ」

「きっと私たちなら大丈夫だよ。これからもずっと一緒だよ!」


 そんなことを家族で話す。今までは普通の家族とは違い、それぞれの心の距離が離れていたが、今の俺たちならばもう大丈夫だと、そう思う。

 お父さん、普通にいい人ですし、友也と似ている感じの人です。何かあると、ひとつの事に集中して、気を紛らわそうとするところとか特に……

 今までみんな大変すぎたのでこれからどんどん幸せになって頂きたいと思いますね、ほんとに。


 それから友也の中でどんどん彼女への気持ちが大きくなってますね〜。青春ですなぁ……


 あ、ひとまず今回も読んでいただきありがとうございます。まだ本日の更新は続きますのでどうぞよろしくお願いします。

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