24.恥じらい
迎えたクリスマス当日、今日はお昼時に集まってから二人で昼食を食べ、そのままイルミネーションのあるところへ向かうことになっている。
午前中は緊張半分、楽しみ半分で約束の時間が来るのを待っていた。
約束は十二時にいつもの駅前集合だが、気持ちが昂り、また家にいても課題にも身が入らないので、十一時になり家を出た。昼前とはいえ少し冷え込むため、コートを羽織って行くことにした。
「なんかいつも一時間前には着いてるな……。まぁ、それだけ楽しみなんだが」
そんなことを呟いていると、成実がこちらに向かってきているのを見つける。
「友也くん、こんにちは!」
「おう、こんにちは」
「服似合ってるな」
「あ、ありがとう!」
つい思ったことを口にしてしまったが、成実が照れくさそうに微笑んだので俺はホッと胸を撫で下ろす。
「そういえば今日も一時間前だな」
「ふふっ、そうだね」
「とりあえず現地の近くまで向かって昼食を取るか。何か食べたいものはあるか?」
「うーん、なんだろう……」
そう言って成実は考え込んでしまった。
「このまま外にいても冷えるし、移動しながら考えるか。何も思いつかなければ最近色んな年代から人気って噂のレストランに行ってもいいしな」
「そうだね。それじゃ、行こっか!」
「おう」
そうして俺たち二人はイルミネーションのある都心の方へと電車に乗って向かいながら、昼食について話し合う。
「時間もあるからゆっくり考えようか」
「そうだね! あっ、友也くんは何か食べたいものあるの?」
「俺か? 俺は、そうだな……」
俺も俺で食べたいものが浮かばず悩みこんでしまう。
「まぁ、そんなにパッと浮かばないよね。そういえばさっき言ってたレストランって何があるのかな?」
「あそこは結構何でもあるぞ。洋和食に中華、それからイタリアンとかもあったな。それにスイーツも人気だったはずだ」
「おぉー、スイーツ! そこにしようよ!」
「了解。そういえば成実も甘いものが好きだったな」
「うん! 大好き!」
眩しい笑顔でそんなことを言われ、息を飲む。
「そ、そうか。今日はそこに行くが、今度暇があればスイーツ食べ放題なんか行ったりしてもいいかもな」
「っ! 行きたい! また今度一緒に行こうね?」
何となく提案したが、次の約束も出来たので喜んでいると、レストランの最寄り駅にまもなく着くところだった。
『まもなく〜〜駅に到着します。お降りの方は足元に気をつけください』
「あ、もうすぐ着くな」
「そうだね。楽しみだなぁ、何食べようかな〜」
そうして俺たちは駅を出て、レストランへと向かう。
「思ったよりも空いてるな」
「そうだね。綺麗で落ち着く雰囲気だね」
そんなことを話しつつ、俺たちはメニューから食べたいものを注文する。
「友也くんは何にしたの?」
「俺はミートソースパスタだ。成実は?」
「私はカルボナーラにしたよ」
「二人ともパスタか」
「ふふっ、そうだね」
そのまま二人ともパスタを食べ終え、再びメニューに目を通す。電車でスイーツの話をしていたことで甘いものが食べたくなってしまったのだ。
「結構な種類があるな」
「そうだね〜。どれもとっても美味しそうだよ!」
「食べた後でまだ食べられそうならもうひとつ頼んでもいいかもな」
「そうだね! 私はこれにする!」
成実はそう言っていちごのパフェを頼んだ。かなり種類が豊富だったために俺は少し悩んでからプリンアラモードを頼んだ。しばらくして注文したものが届く。
「な、なかなか量があるな」
「そうだね。勢いで二つとか頼まなくて良かった……」
値段の割に量がしっかりとあるので確かにこれは人気が出るのかもな、と考えてから俺はスプーンで掬って口に運ぶ。
「おっ、美味いな」
「うん! とっても美味しいよ!」
そのまま食べ進めていると、彼女の視線がプリンアラモードに向かっていることに気づく。
「こっちも気になるか?」
「っ! き、気にはなるけど……。えっと、一口貰ってもいいかな?」
「あぁ、構わないぞ」
そう言ってプリンアラモードのお皿を彼女の前に運ぼうとすると、彼女が目を瞑り口を開けていることに気がつく。
「……? あっ……」
彼女の意図を理解したが、声を上げてしまう。本当にしてもいいのか分からず戸惑っていると彼女が目を開けた。
「あっ、いや、えっと冗談だよ!? わ、私のスプーンで少し貰ってもいいかな?」
「あ、あぁ、いいぞ!」
お互い顔を赤くしながら慌ててしまう。彼女はそのままパクっと食べ早口で感想を言った。
「と、とっても美味しいね!」
「そ、そうだな。これにして良かったよ」
「……私だけ貰うのも申し訳ないし、友也くんも一口いる?」
少々上目遣いでこちらを見ながらそんなことを言ってくる。まさかそんなことを言われるとは思わず、冷静になりかけていたが再び動揺する。そのまま彼女はパフェのお皿をこちらへ運んでくる。
先程の食べさせるのかと思った時ほどではないが、同じお皿のものを食べるの少し恥ずかしいが、せっかくの好意を無下にするのもいけないと思い、一口分掬い取り、口へと運ぶ。
「う、美味いな」
「そ、そうだよね!」
「あ、あぁ」
本当は動揺や混乱で味を把握しきれていないが、ひとまず飲み込み心を落ち着かせる。その後はお互い無言になりつつ食事を済ませて店を出る。
まだ昼過ぎだったため、近くの雑貨屋や服屋を周り時間を潰した。服屋では、瑠璃のように服を選ぶのは長いのだろうか、などと考えていたのは最初だけだった。
というのも自分のは気に入ったものがなかったのか、俺を着せ替え人形にしてかなりの時間を過ごしていた。様々な服を試着しているとその度に成実の表情が変わっていたので俺としては楽しい時間だった。
そうして日が暮れてきたため、俺たちは今日のメインであるイルミネーションへと足を運ぶ。




