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20.天使の気持ち 後半


 それからというと、原女神でボスラッシュをしたり、テストに備えて勉強しながら通話をして過ごした。通話勉強中に16日、つまり私の誕生日の日が空いているかと聞かれた時は思わず声を上げてしまいそうになった。



 しかし、その日からテストの最終日までは、どうしてか友也くんの表情が優れなかった。心配になりながらも、どうしてか私が踏み入ってはいけないような気がしたため、普段通りに接することを心がけた。



 テストも最終日になり、友也くんのことが気になりながらも、いつも通りある程度高得点を取ることができたと思った私はチラッと彼の方を見る。すると、憑き物が取れたような表情で和泉くんと話している様子が見て取れた。


 いつかは私が支えることが出来たらな、なんて思ってしまうのはおこがましいことだろうか。



 迎えた誕生日当日、つまり友也くんと出かける日だ。誕生日に好きな人に誘われて出かけるという状況。私は今とても浮かれている。


「ふっふー、楽しみだなぁ〜」


 そんなことを口ずさみながら私は準備を済ませ、早めに家を出る。



 そして待ち合わせ場所に着くと、一時間前にも関わらず彼が立っていた。


「友也くん! こんにちは!」

「おう、こんにちは。……まだ一時間前だぞ?」

「友也くんこそ私よりも早く来てるじゃん!」

「まぁ、今日が楽しみだったしな?」


 そんなことを言われ嬉しい気持ちになりながら返事をする。


「ふふっ、私も同じ気持ちだよ!」



 そう言いながら、彼を率いていつぞやのカフェへと向かう。初めて出会った場所で待ち合わせということである程度予想はしていたのだろう。



 カフェに着いて、以前と同じものを頼もうとしたら、彼から他のものにしないか、と提案があったために私も変更する。私たちの関係もいつかは変わるかもしれないし、いつまでも過去に囚われてはダメだね、などと考えながら。



 そうして食事をとりながら会話をしていると、気付かないうちに普段は避けていた内容になってしまった。私は幼い頃に父を亡くし、母も仕事漬けになってしまっている。こんなことを話すと気まずい空気になるのは確実なので話を変えないとなと思っていると、彼から衝撃的なことを言われる。


「母さんは俺が小学生の頃に亡くなったんだ」

「えっ……」


 思わず言葉に詰まる。私だけでなく彼も家族を亡くしていた事にとても驚いた。沈黙が続いていると、店員さんがサンドウィッチを持ってきてくれた。


「あっ、ありがとうございます! 美味しそうだね!」

「ありがとうございます。そうだな」


 そう言って私たちは食べ始める。少し気まずいままの空気だが、サンドウィッチの旨みが口の中に広がる。このままではダメだと思い、私も意を決してお父さんのことを伝える。


「私もね、私のお父さんも何年も前に亡くなったんだ」


 友也くんが驚いたと共に納得したような表情をした気がする。そして私は気にせずに続ける。


「だから、全てとは言わないけど、友也くんの気持ちもわかる気がするな」

「そうだな……よく考えると俺たちってゲーム好きなところも境遇も似ているのかもしれないな」

「あはは、そうだね。だからこそ意気投合して、一緒にいて楽しいのかも!」


 確かに私たちは似ているかもしれない。境遇も近く、趣味も一緒。一緒にいて落ち着くし、話していて気分も高揚する。彼も一緒にいて楽しいと思ってくれてるといいなと私は思う。



 その後、友也くんが席を立ったかと思うと、店員さんと話をしてからすぐに戻ってきた。どうしたのだろうと思い聞いてみると、もう少しで分かるよと返ってきた。不思議に思いながらも私たちは話をしていると店員さんがケーキを持ってきた。


「えっ……これって……」


 友也くんは私が気付かないうちに誕生日ケーキを用意してもらっていたようだ。いきなりのことで驚きながらも私はとても嬉しい気持ちになった。それから彼はプレゼントも用意してくれていたようで、二つの包みを渡してきた。


 まず一つ目を開けるとそこにはブルーライトカットのメガネが入っていた。以前から買おう買おうと思いつつも後回しになっていたため、とてもありがたい。


 もうひとつの包みを開けるとそこには可愛らしくも清楚で綺麗なネックレスだった。しかも、雪の結晶をモチーフとしている。


「これは……」

「ネックレスだ。あっ、趣味じゃなければ返してくれていいぞ」

「そ、そんなことないっ! とっても嬉しいよ! ありがとう!!」


 返すだなんてとんでもないと慌てて否定をし、感謝を述べる。私たちが以前やっていた銀の世界というゲームは雪の結晶など、雪にちなんだものをモチーフにしたものが多く、私も雪が自然と好きになっていたため、このプレゼントはとっても嬉しい。




 そのままゆっくりと過ごし、私たちはカフェを後にした。そして気付かないうちに駅前にたどり着いてしまっていた。楽しい時間は本当にあっという間だ。そんなことをしみじみと考えていると友也くんから声をかけられた。


「着いたな……」

「そうだね……」


 名残惜しいけど流石に送って貰うのは申し訳ないし、別れたく無くなっちゃうしね!と自分に言い聞かせる。


「それじゃ、名残惜しいけど今日はここで解散だねっ!」


 友也くんの方を向き、笑顔でそう伝える。


「あぁ、そうだな。今日は本当にありがとう。また一緒に出かけたいな」

「そうだね! 冬休み中は暇してるから誘ってくれたらどこへでも飛んでいくよ!」

「おう、また誘わせてもらうよ」

「うん!」



「今日は告白されるんじゃないかって期待してたんだけどな……」


 なんてことをボソッと呟きながら私は駆け出す。また誘ってくれると言うので、次はクリスマスがいいな、なんてことを考えて。






 ついさっきの出来事までを思い返しながら歩いていると、私は家に着いた。


「ただいま〜」


 誰もいないとは分かっているがいつものようにそんなことを呟く。


「おかえりなさい、成実」

「えっ? お母さん!?」


 まさか返事が返ってくるとは思わず大きな声を出してしまう。


「えぇ、今日はあなたの誕生日ですもの。まぁ、その表情を見るに、寂しい思いはしてなかったのかもしれないけれど」

「確かに寂しい気持ちはしてなかったかもしれないけど、お母さんがわざわざ誕生日に会いに来てくれたことがとっても嬉しいよ!!」


 心から思ったことをお母さんに伝える。


「ふふっ、ありがとう。それで、今日は何をしていたか後で聞いてもいいかしら?」

「えっと……うん、分かったよ。先にお風呂入っちゃうね」


 母親に好きな人のことを話すのは恥ずかしい気持ちもあるため少しはばかられたが、母を心配させないため、それから私の自慢の好きな人の話を誰かにしたかったというのもあり、その晩は母娘でゆっくりと過ごすのだった。


きっかけのところで友也がなんで助けたか書くべきかなって思ったけど、友也自身そこまで何かを考えてた訳ではなく、ただ覚悟を決めずに手を出すことや、曲がったことが嫌いってだけです。まぁ、告白していないのもそれを若干言い訳にしてる部分もありますけど……笑。妹のサポートをするって言うのは本気ですし、妹と話し合った日以降の毎日の料理なども友也が作っています。いつか自分を曲げずに頑張ってきたことが報われるのって良いですよね。

あ、ちなみに友也は助けた時のことを一つ一つは覚えていませんし、今のところ書くつもりはありませんが晃も小学生の時に彼に救われていると思っておいてください。

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