18.きっかけ
今作で初めて主人公と別の人物の視点となります。
それから、この話と次の話は回想シーン的な部分が強いです。主人公視点のみで読みたい方はそっとページを閉じてください。
今回、また次回のお話は好きになったきっかけや好きになってからを大まかに振り返るお話となっております。
それでは本編をよろしくお願いします。
〜成実視点〜
私は心からの笑顔で家へと歩いていた。
「ふふっ、今日は楽しかったな〜。というか最後のは聞かれてないよね!?」
私は友也くんと別れる時に小さな声で
「今日は告白されるんじゃないかって期待してたんだけどな」
と呟いてしまっていた。
「期待してたのは本当だけど、つい口に出しちゃうなんて……恥ずかしい〜」
そう言いながら今までのことを振り返る。
そもそもどうして私が友也くんのことを好きになったのかと言うと、2年前の中学2年の夏まで遡る。
夏休み中のある日、その日は夏期講習の最終日で、晴れやかな気分で塾から出て、駅に向かっていた。
「お嬢さん、少しいいかな?」
「えっ? 私ですか?」
「あぁ、そうだ。とても可愛らしい君だ。」
そんなことを言われ、少し警戒する。中学生の頃は歳の割に大人っぽく見られがちだったため、たまにナンパされていたので今回もその手の人かなと思った。
「私はこういう者だよ」
そう言っていきなり男の人は名刺を握らせてきた。
「モデルや撮影などには興味無いかな? 君なら売れること間違いなしだよ! ぜひ少し話がしたい!」
そのまま強引に話をしようとしてきた男の人に動揺して返事が出来ずにいると、同じくらいの歳の少年が止めに入ってくれた。
「あんた、なにやってんの」
「は? 誰だね君は」
「通りすがりのクラスメイトだよ。彼女、困ってるだろ」
「いきなり何かと思えば。こちらは仕事だ。邪魔しないでもらいたい」
「はぁ……。あそこで警察見てるぞ?」
「へ?」
男の人は少年にそう言われ、指を差された方を見ると確かに警察の人がこちらを伺うようにして立っていた。
「なっ……お嬢さん、いきなりごめんね! 気が向いたらいつでも電話かけてね。それじゃ!」
そう言って男の人は逃げるように立ち去った。少し呆けてしまったが、助けてもらった少年にお礼を言おうと振り返るが少年も立ち去ってしまったようだった。
今までのナンパでは強引に来られる前に逃げられていたため、今回のようなことは初めてでとても怖かった。そして助けてくれた少年のことが気になってしまう。
「どこの学校の人だろう……」
むしろ窮地を救われたのだから気になるなという方が無理な話である。その日は家に帰っても何も手がつかなかった。
夏休み中も定期的に駅の方へと出かけ少年を探したが、ついに会うことは出来なかった。そして、夏休みが明け、登校日となる。
「結局見つけられなかった……あっ、もうすぐ学校に着くから切り替えないと」
そう言って素の状態から優等生へと切り替える。元々人見知りなため、自分を偽っていないと他者と話す際に緊張してしまうという理由で優等生を作っていた。
そして教室に入ると、夏の間ずっと探していた少年を見つける。つい話しかけそうになったが、自分を偽っていることに加え、自分のことを覚えられていなかった時に少なからずショックを受けると思い、黙って自分の席へと着く。
その日から助けてくれた少年を目で追うようになる。名前は一ノ瀬友也、普段は一人でいるか和泉晃と一緒にいる。そして何よりも驚いたのが銀の世界をやっていたということだろう。まだ配信されて一年程だったためにプレイヤー人口もそれなりに多く、この時は知らなかったが中学三年生となった時にゲーム内で一緒にプレイしていた相手が友也だと知るのはまた別の話。
そして、年が過ぎ、そのまま同じ高校に入り、サービス終了がきっかけでリアルでも関わりを持つようになるが、この時の成実には知るすべはない。
「思い返してみると私は二年間も片想いをしてるのか〜」
私は好きになってからのことを振り返りながらそんなことを呟く。
「男の子の方から告白して欲しいって言うのは私のわがままかな……」
リアルで関わるようになってまだ一ヶ月程ではあるが、ゲーム内では三年間毎日一緒にプレイをしていた。
「まぁ、一ヶ月と言っても私としては濃い一ヶ月だったな〜」
そんなことを言いながら、今度は会ってからのことを思い返す。
今回もお読みいただきありがとうございます。
どれくらい本編であったセリフとかを書けばいいのか試行錯誤して書いてみましたが、ここをこうした方が良い等、アドバイスがございましたら御手数ですがお伝えしていただけると幸いです。