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138.髪型




 生徒会選挙の準備が進んできた、とある日のこと。

 その日の彼女は朝から少々変だった。



「おはよう、成実」


 いつものように学校へと登校し、前の席の彼女に挨拶をする。


「あっ……お、おはよう、友也くんっ」


 彼女は下を俯くようにしながら、こちらを見まいとしながら挨拶を返した。


「……何かあったのか?」

「え、えっと、なんの事かな? そ、それよりも! 進路希望調査のプリントってもう書いたかな?」

「あ、あぁ、いや。まだ書いてないよ」

「やっぱり悩むよね!」


 その後も朝の時間で聞こうとはしたものの、顔を逸らしたままどうにも話を逸らそうとしてきたので、深くは聞けないでいた。


 そのまま時間になって担任の教師がやってくると、すぐに「また後でね」とだけ言って、前の方へと体を向け直してしまった。




「友也、何かしたのか?」

「いや、何も心当たりがないから困ってるんだよ……」


 一限と二限の間の休みにも話をしたいと思ったが、すぐに席を立ってしまった。どうしたものかと思いつつ、昔からの親友の晃へと相談をしにいった。


「前に友也たちがデートに行ったのは1週間前だし、それが関係してるわけじゃないだろうしなぁ」

「なっ、なんで晃が……」

「あ……いやぁ、華から聞いてな。むしろそのとばっちりで今度連れてけって圧掛けられてるけどよ……」

「いや、普通に連れてってやれよ」

「んー、今までに何度も行ってるから上手く楽しんでもらえるか分からなくてな……って、俺のことはいいんだよ! それよりお前のことだ、友也」

「あ、あぁ……」

「デートのこと以外でなんかしたのか? 電話に出なかったとか、既読スルーしたとか、他にも……」

「いや、そんなことはしてない。というか妙に実感がこもってるな……」

「あはは……幼馴染感覚でRICEも既読スルーしたりしたらちょいと怒られてな……って! だから、俺のことはいいんだよ!」

「はは、悪い悪い」


 とはいえ、本当に何かしてしまった記憶がない。むしろ普通にしてたはずなのに、こうして気付かないうちに何か傷つけてしまった方が問題だ。


 なんて考えてるうちに予鈴が鳴ってしまったため、座席へと戻った。



 そうこうしているうちに昼休みになってしまった。流石にお昼まで別々ということはなく、いつもの4人で中庭へとやってきた。


 相変わらず少し顔を逸らしたままではあるものの、朝よりかは少しづつ会話してくれるようになった。


「もうすぐ冬だね」

「あ〜、そうだな。そろそろ食べる場所についても変えないと寒くなってくるな」

「とはいえ、私たちは部活に入ってるわけでもないから教室で食べるしかないかな。成実はどう思う?」

「あっ、う〜ん……確かに他にいい場所もないし、みんなが良ければ教室でもいいんじゃないかな? どうかな、友也くん?」

「あぁ、俺は教室でもいいと思うよ。席も近いからそんなに動かないでもいいし」


 そんな感じで食べる場所を今度から教室に変えることになった。



 しばらくしてから白雪が切り出した。


「それで、成実は言わないのかい?」

「え、えっと……」

「そのままだと友也は自分が何かしてしまったんじゃないかと思い込んだままになるけど?」

「うぅ……と、友也くん、笑わない?」

「あ、あぁ……もちろんだ」


 そう強く頷くと、彼女は顔を持ち上げてこちらを正面から見た。


「その……前髪、切りすぎちゃって……」

「……」

「や、やっぱり変だよね!」

「……」

「……へ?」

「くく……ははっ、そういうことか。あははっ!」

「あっ、笑わないって言ったのに!」

「いや、そうじゃなくてさ……何か嫌われることでもしちゃったかと思っててさ。なんか朝から張ってた気がほぐれてついつい笑っちゃったんだ。悪い」

「あ、ううん。というか、私が友也くんを嫌うわけないじゃん!」

「……ははっ、ありがとう。それと、少しくらい前髪が短くても可愛いよ」

「っ、あ、ありがと……で、でも、やっぱり変だし恥ずかしいよ……」


 そう言ってやっぱり顔を逸らしてしまう彼女。

 女の子は髪、というか前髪が命なんて言うのを聞いたことがあるがやっぱりそうなのだろうか。


 そういえば以前、妹が同じことをして凄く落ち込んでいたのに対し、「そんなことか」なんて言ってしまったばかりに、「私だからギリ許すけど、他の子に言ったらぶっ飛ばされるよ?」なんて結構本気でキレた瑠璃に言われたことがあったな……


 あの時はどんな風に対処してただろうか……


「あ……」

「へ? どうかした?」

「あぁ、いや。前髪が気になるなら、いっその事編み込んだり、センター分けにしたりって髪型を変えてみたらどうだ?」

「あっ、うーん……朝、自分でやってみたけどあんまり似合ってないように見えたんだよね……」

「そうなのか?」

「うん……」


 彼女に似合わないものがあると思えないのは、少し贔屓が過ぎるだろうか。なんて考えていると白雪からも提案があった。


「自分で見たら違和感があるのは当たり前だと思うよ。朝に相談を受けてから色々調べてみたんだ。ちょっと試してもいいかい?」

「え? う、うん、大丈夫だよ?」


 成実の許可を得ると、白雪は慣れた手つきで彼女の髪をいじる。トップの方から髪を持ってきて、前髪と合わせつつ編み込みを作っていく。


 詳しくないから上手く言えないんだが、3:7くらいの比率で3の方にはトップから持ってきた髪を、7の方には三つ編みを作ってどこからともなく出したヘアピンで留める。


 男でそういうのに疎い俺と晃が感心した目つきで見ていると、それに白雪は気づいたようで、肩を竦めて言った。


「はは、こんなのは毎日髪を触っている人なら誰でも出来るさ。それに私の場合は家での集まりがあると正装して髪も纏めなければならなかったからね。悔しいけどその過程で多少は器用になったよ」

「あぁ! そういやそうだったな!」

「まぁ、それに今は助けられてるんだけどな」

「はい、成実。完成したよ」

「あ、ありがとう、華ちゃん!」


 そうして完成した髪型を手鏡で見る成実。俺から見たら変どころか、むしろ……


「すっごい丁寧で綺麗だし、自分でやった時よりも違和感も全然ないかも……?」

「あはは、ありがとう。まぁ、普段と違うからどうしても違って見えるのは仕方ないかな」

「ううん、ありがとう! あ、えっと、友也くん……変じゃないかな?」


 その答えは一目見たときから決まっている。


「あぁ、凄く似合ってて可愛いよ」

「っ! えへへっ、良かったぁ〜」


 普段は肩よりも少し長い程のストレートヘアにしっかりと前髪がある美人で清楚らしい髪型だとすれば、今は前髪が三つ編みでおでこを出しているため、いつもと雰囲気が違う可愛らしく少し幼さやあどけなさがあるような印象を持つ。

 本人は少し気にしてるみたいだが、むしろ普段と違う姿が見れて俺としてはとても嬉しいしありがたい。というかどちらにせよ美麗で可愛いのだが。



「っと、もうそろそろ教室に戻らないとだよ」

「えっ、もうそんな時間なのっ? みんな、時間取らせちゃってごめんね……」

「いや、気にしないで大丈夫だよ」

「おう! 友也の言う通りだ!」

「うん……ありがとう!」


 そうして昼が過ぎ、放課後を迎えた。





「えへへ〜」


 今、彼女の部屋にいる。というのも帰り道で朝はちゃんと話せなかった進路のことなどを話していたのだが、まだお互い話し足りなかったためだ。


 そして彼女は昼間に白雪にやって貰った髪を眺めながらニコニコしている。


「凄い笑顔だな」

「うんっ! 友達に髪をやってもらうなんて初めてだもん! なんか嬉しいなぁって思って!」

「はは、そうか」


 思わず笑顔の彼女につられてこちらも頬が緩む。確かに彼女は中高と――傍から見たら孤高、しかしその実情は――孤独だった。


「とりあえず明日からは長さが戻るまではこの髪型にしようかな〜」

「あぁ、よく似合ってるよ。まぁ、そのままでも可愛いんだけどな」

「うぅ……友也くんはそう言ってくれるけど、やっぱり恥ずかしいかなぁ」

「まぁ、下ろした方がいい、とか無理強いしてるわけじゃないから気にしないでくれ」

「うん、ありがとっ」



 しばらく他愛ない話をしつつ、帰り道で話していた内容へと戻ってきた。


「進路なぁ……」

「やっぱり難しいよね〜」

「あぁ。ひとまず大学進学はするつもりだけど、志望校は特に決まってないかな」

「私も同じ。自分の実力で行けるところに行きたいかな」

「まぁ、成実くらい成績良ければ結構選択肢はあるよな」

「ん〜、そうだね……それに先生たちも教え方上手だから塾にも行かないで大丈夫なのは助かるよね!」

「それはそうだな……」


 父さんや瑠璃に迷惑や負担をかけることは少しでも減らしたいからな。その点では進学率の高めなこの学校で良かったのだが……


「……」

「ん? どうかした?」

「いや、なんて言うか、このままじゃ成実に追いつけないなって思ってさ。どうせ大学に行くなら同じところがいい、なんて思っても今のままじゃ難しいし」

「……そっか!」

「ん?」

「あ、ううん。その、私と同じ気持ちだって思ってね! 私だけが一方的にそう考えてると思ってたからさ!」

「……ははっ、同じか」

「うん、同じ!」

「まぁ、成績は同じじゃないんだが……悪いが、困ったら助けてもらってもいいか?」

「困ったらなんて言わずに、いつでも私のことを頼ってよ!」

「あぁ、ありがとう」

「うんっ!」



 その後も学校のことやゲームのことを話しつつ、外が暗くなるまで彼女と一緒にいてから彼女の家を後にした。



「あぁ、そういえば。もうすぐリアルで会ってから1年か……」


 なんて口にしながら、俺は家へと向かっていったのだった。






 18時には投稿したいと思いつつ、毎回1、2時間ほど遅れてしまう……

 で、でも、途中で辞めるつもりはありませんので! 高校3年パートをどうしようかどうも悩み中ではありますし、投稿時間が遅れたりしますがどうか悪しからず……



 では、今回もありがとうございました。また来週もお会いしましょう〜

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