14.友也の気持ち 前編
一話から少しずつ修正入れていったりしています。
空白や、他の話と口調が違ったりしている部分を直しているだけですので内容に変化はありません。
また、今回の話は前編後編に分かれています。後編は一時間後に投稿されますので、一気に読まれる場合は少々お待ちくださいませ。
それでは本編の方をどうぞご覧になってください。
『瑠璃のことをよろしくね友也。それから――』
今日はテスト最終日の朝だ。
約束通りに三日に一度通話勉強をしたが、変に意識をしてしまい話も続かなかった。そしてテストも三日目まで終わった。テスト自体は毎日の復習と通話勉強以外でも勉強をしていたために、どの教科もいつも以上にできている。だが、2週間考えても自分自身の問いの答えは出なかった。
「何やってるんだろうな」
こんな時、相談できる友人や家族でもいれば何かが変わっていたのかもしれない。だが、テスト期間なことに加え、瑠璃も受験を控えている。父親は出張に行っているため家を空けている。それに大切な人を喪った父親にこんなことを相談するのも忍びない。
「準備するか……」
答えの出ない、否、答えを出す勇気のない間はどれだけ考えても無駄だと判断し、準備を済ませる。
「お兄ちゃんおはよう」
「あぁ、おはよう」
「今日がテスト最終日だっけ?」
「あぁ、そうだな」
「……えいっ!」
瑠璃はそう言って俺の額に強烈なデコピンをお見舞してきた。
「痛っ!」
「お兄ちゃん! 何に悩んでるのかは知らないけど、私だって家族だよ? 相談とかも乗るからさ、少しくらい頼ってくれたっていいじゃん……」
「瑠璃……すまん、ありがとう」
「うん! 少しはいい顔に戻ったね! 帰ってきたらみっちり話を聞かせてもらうよ?」
そう言って瑠璃は意地悪そうに笑う。つられて俺も笑顔になる。
俺は受験を控える瑠璃に心配事を増やさないようにと思い話していなかったが、逆に心配させて気を使わせてしまった。
「情けない兄だな」
そう言いながらも心が少しだけ軽くなっているのを感じた。
「よし、学校行くか!」
そして、テストの最後の科目も終わり、二学期は残すところ、答案返却と終業式だけとなった。
「友也、お疲れさん!」
「おぉ、晃か。お疲れ様」
「テストが終わったからか? なんか昨日までと違って憑き物が落ちたような表情してるな」
そう言われ晃にも気にされていたことを知る。申し訳ないと思いつつも、こんな俺と一番荒れていた小中学生の時から付き合ってくれている晃には感謝しかない。
「すまんな。それといつもありがとな」
「ん? よく分からんがどういたしまして。それで、これからどうするんだ?」
唐突にそんな質問をされ、返答に困っていると晃が続ける。
「いや、あの人のこと、誘ったのか?」
「あ、あぁ、そういう事か。一応な」
「マジか! 友也のことだから結局後回しかなとか考えてたが予想が外れたぜ」
そんなふざけたことを言っているが、悪意などなく、むしろ俺の事を気遣ってくれているのを今だからこそ理解出来る。まぁ、友也のことだからというのは納得いかないが。一応不服だと言うことを伝えるためジト目をする。
「そんな顔すんなって。まぁ、何かあれば言ってくれよ? お前の過去は知ってるし、どうしても勇気が出ないってんなら背中蹴飛ばしてやるからな」
「蹴飛ばすって……まぁ、ありがとな。そんときは頼むかもしれん」
そう俺が返すと晃は面食らったような表情をする。
「珍しく友也が素直だ……」
「何を言ってるんだお前は……はぁ、まぁ、今日のところは許すけどよ」
「ははっ、まぁ、頑張れよ少年!」
「マジで誰だよお前……」
そう言って二人で笑い合う。何気ないやり取りがこんなにも楽しかったとはな。今度晃にも何かお礼をしなければ、などと考えながら俺は学校を後にした。
テストだったため昼前には学校が終わったので、久々に外食でも食べようかと思い、俺は駅前へと向かう。
しばらく歩いていると、少し前に成実ともう一人の大人の女性が並んで歩いていた。女性の方は成実の面影があるので恐らく母親だろう。それ以上に成実が寂しそうに、それでいてとても喜んでいるような表情でいたことが気になったが、俺が立ち入ってはいけないような気がしたためその場を後にした。
軽く昼食を食べ、家へと帰宅した。瑠璃が帰宅するのを待ちながら久々にお菓子作りでもしようと思い、クッキーを作っていると瑠璃が帰宅した。
「ただいま〜」
「おう、おかえり瑠璃」
「くんくん、あれ? クッキー焼いてるの!?」
「あぁ、気分転換にちょっとな」
「食べてもいい!?」
「まず先に手を洗って荷物を置いてこい」
「はーい」
そう言って瑠璃はドタドタと走っていった。どうやら俺の言ったことはきちんと守ったようだ。
「よし、準備完了! それじゃ食べてもいい?」
「あぁ、いいぞ」
「ありがとう!」
瑠璃はいただきます!と元気よく言い、ぱくぱくとクッキーを食べ進める。
「やっぱりお兄ちゃんのお菓子は美味しいね〜」
砕けた表情でそんなことを言ってくれるのだから、作り手側としてもとても嬉しい。
「ありがとな瑠璃」
「いえいえ! ……それじゃ、お兄ちゃん。色々と話してくれるよね?」
「あぁ、聞いてくれるか?」
「もちろん!」
俺はゆっくりと椅子に腰をかけ、重い口を開き始める。