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134.流石に1回も勝てないのはつらい




 振替休日が明けて再び学校が再開する。体調の方はすっかりいつも通りに戻り、夏が終わってすっかり秋らしくなったそんな空気を身に感じながら俺は登校する。


「おはよう、成実」

「あっ、友也くん! おはよっ」


 文化祭の準備期間は忙しかったり別々に仕事をしていたりしたので朝こうやって顔を合わせる機会も多くはなかった。

 前後の席とはいえ授業中なんかは関わることもなかったのでこうしたゆっくりとした時間は素直に嬉しい。


「そういえば、一昨日はありがとな」

「あっ、ううん! 私が勝手にしたことだから気にしないで」

「……あぁ、分かったよ。それと、昨日は体調崩してたりしたのか? なんか普段と違った気がしたけど……」

「あっ……そ、それも全然! 大丈夫だから!」

「そ、そうか……? 熱が移ってたりもしてないか?」

「うん! 大丈夫だよ!」


 何か隠してる風にも見えるが……言うつもりは無いようだし、無理に聞くことでもないのだろう。


「おはよう。成実、友也」

「おはよう友也、神崎さん!」

「あぁ、2人ともおはよう。……朝から熱々だな」

「あっ、おはよっ! と、友也くん、そういうことは思っても言わない方が……」

「はは、事実だからね。そういえば、友也と成実こそ昨日と一昨日がどうとか話していなかったか?」

「あー、いや……別に普通にゲームしただけだよ」

「そっ、そうだね。何も無かった……よ?」


 可愛らしく小首を傾げる彼女。ふとしたそういう動作に胸を掴まれる……って、そうじゃなくて。俺も大概だが成実の動揺っぷりもバレバレなんだよな。


 と、そこで予鈴が会話を中断する。


「ふふ、昼休みが楽しみだね」


 まぁ、恥ずかしいことが先延ばしになっただけなのだが。




 昼休み、いつものように中庭の人がいない方へと向かい、朝の会話について2人から聞かれる。


「んで、何があったんだ? 振替休日って言っても友也は前日体調悪かったろ?」

「いや、そのせい、というかおかげでだよ」

「?」


 成実は思い出してか顔を赤くしてるし、白雪のやつは最初から分かってたと言わんばかりの表情でこちらを見ている。分かってて根掘り葉掘り聞くとは……


「おや? ふふ、性格が悪いとは言ってくれるなよ? 私はただ大切な友人たちの話が純粋に気になっただけださ」

「……いや、何も言ってないし言うつもりもないから……」


 何を言っても白雪相手だと言いくるめられて終わりだ。晃なら勘は鋭いが、ポジティブ思考だったりたまに抜けてたりするから恥ずかしい事なんかは隠せるのだが。

 まぁ、晃のそんな明るいところに救われてきた事も事実だ。


「話を戻すぞ。まぁ、情けないことに文化祭の次の日に体調を崩してな。必要なものを買い揃えに行ってくれた瑠璃と成実がたまたま会ったらしくそのまま看病してもらっただけだよ」

「そうか。あ、体調はもう平気なのか?」

「あぁ、おかげさまでな。あと前も言ったけど、文化祭の時に変わってくれてありがとな」

「それは気にすんなって! むしろ気付いて止められなかった俺も悪いしさ!」

「あぁ、困った時はお互い様と言うしね。それに友也たちには私たちも助けられてきたからな。それで……ふふ、いや、やっぱり何でもない」


 幼なじみで何でも言い合って隠し事もほとんどないような仲だけど、感謝や礼節を忘れると簡単に関係が崩れるからこそ、こういうのはしっかり伝えておきたい。

 白雪の方はまだ何かあったようだが、まだ少し赤い顔の成実を見て1人納得したようだった。何が聞きたかったのやら。



 そんなこんなで、また前までのいつもが戻ってきた昼休みを過ごし、授業も終わって放課後になる。


「そうだ。成実、ちょっといいか?」

「うん? 何かな?」

「週末のことなんだけど、ハロウィンも近いから混みそうだし少し相談したいんだ。この後空いてればうちに来れるか?」

「あっ、もちろ……ん大丈夫なんだけど、場所は私の家でもいいかな? ま、前に看病だけど友也くんの家にお邪魔したしさ!」

「あぁ、もちろん大丈夫だよ。それじゃ、行くか」

「うん!」




 そうして2人で成実の家へと向かうことになった。



「そういえばもうすぐ1年か……」


 道中、ふとそんな言葉が口から出た。


「へ? ……あ」


 そんな俺の言葉を耳聡く聞きつけ、そして彼女自身も思い当たる節があったような表情をする。


「銀の世界が終わってから、それと成実と関わるようになってからもうすぐ1年だな……」

「うん……そうだね」


 2人で固定パーティを組んでプレイしていたオンラインゲーム『銀の世界』。それのサービス終了が昨年の11月だった。そして今は10月、ちょうど1年だ。


「早いな……」

「うん……」


 週末のことは成実の家に着いてから話すため、特筆して今話すべきことはないのだが少し歩く速度が遅くなる。手を繋いでいる成実もそれに合わせて――もしかしたら成実からだったかもしれないが――歩く速度が落ちる。


「……好きだよ」

「うん……えっ!?」


 先程同様、口から自然と漏れ出た言葉に隣にいる彼女も、そして俺自身も少し驚いている。


「すまん、つい……」

「う、うん……私も、大好きだよっ!」


 ――っ!

 思わぬカウンターを貰った。付き合いたてのカップルでもあんまりやらなさそうな、そんなやり取りをやりつつゆっくりと歩いていく。


 サービス終了から始まる恋、か……。そんなのもありだよな。

 今の、今しかない幸せを噛み締めながらそんなことを考えていた。



***



「さて、どこに行こうか?」

「はい!」

「はい、成実くん」

「先生、甘いものは絶対に食べたいです!」

「よし、採用!」


 道中とは打って変わって、成実の家に着いてからはまず遊園地内での行きたい場所を決めるためにPCの画面に遊園地のHPを映し出し、それを2人で覗きながら話し合いをしている。


 帰り道に、決して悪い訳では無いものの変な空気にしてしまい、俺も彼女も気を紛らわすためにいつもと違うノリで話し合っている。


 ちなみに行く場所は千葉の某ネズミーランドだ。


「遊園地の甘いものの定番はチュロスとかポップコーンのイメージだったけど、園内の店にはクレープとかケーキなんかもあるのか……」

「んー、私、実は遊園地のチュロスって食べた記憶ないんだけどどんな味なのかなぁ?」

「そうなのか? ……って、俺も1回しかないな。結構甘くて意外と美味しかったかな」

「……ちなみに、その1回って誰と?」

「ん? 瑠璃だよ。中学の頃にお祝いか何かで行った時かな」

「そっか〜……」

「どうかしたか?」

「あっ、ううん! 大丈夫だったから!」

「だった?」

「あ、いや、言い間違え! 気にしないでっ」

「あ、あぁ……」


 そういえば遊園地自体も今回行くので3回目だ。


「とりあえず、甘いものもそうだけど昼食のとる場所だけは決めといた方がいいかな?」

「うん、そうだねっ。アトラクションの待ち時間とかも長そうだし、いくつか優先して行きたいところも決めとこっか?」

「そうだな。あ、何か苦手なアトラクションとかはあるか?」

「あっ、暗くてホラーっぽいのはちょっと……」

「はは、そうだったな。絶叫系とかは大丈夫か?」

「うーん、乗ったことはないけど多分大丈夫かな」

「そうか。それなら――」

「うんうん! これとかも――」


 そうしてとんとん拍子で行きたい場所が決まっていった。苦手や好みが近いとこういう時に揉めないでいいので楽だ。



 話の途中、少し気になったことがあったので彼女に尋ねてみた。


「あんまり画面を見てないのに把握してるけど、遊園地行ってみたかったのか?」

「あ〜、えっと……遊園地に行きたかったと言いますか、大好きな彼氏と2人で行きたかったと言いますかぁ……それで前からちょっと調べてたんだよね……えへへ……」

「っ! そ、そうか……」

「……」

「……」

「あ、あはは、なんか今日ちょっと恥ずかしいことばっかかも」

「そ、そうだな……」


 原因のいくつかで俺が関わってたりすることもあり何とも言い難い。



 と、まぁ、詳しかった彼女のおかげもあり、行きたい場所や優先度なんかを決め終える。やるべき事は終わったのだが、もう少し彼女といたい気持ちがある。


「まだ夕暮れ前か……」

「そうだね……この後どうしよっか?」

「んー、邪魔じゃなければもう少しいていいか?」

「うんっ、もちろん! あ、どうせならゲームでもする?」

「そうだな。何をしようか?」

「エルデ……あ、あれはめっちゃ時間かかるよね」

「あぁ、あれはまた今度だな。前の泊まりの時にできなかったパーティゲームとか対戦ゲームとかって無いか?」

「あ! ちょっと待ってね……これとかどう?」


 そう言って見せて来たのは『大格闘クラッシュシスターズ』だった。1人から4人まで同時にプレイでき、自分以外の相手に攻撃して倒す対戦ゲームだ。相手を攻撃すればするほどパーセンテージが増え、相手を場外に吹っ飛ばしやすくなる。

 短時間でも長時間でもできるし、中途半端な今みたいな時間ならちょうど良いだろう。


「結構腕前には自信あるんだよ〜!」

「はは、やったことはほぼないけど一矢報いてみせるよ」



 そのまま1時間ほど2人で遊び、いい時間になった頃に帰宅した。


 え、結果? 知らない子ですね。

 というか彼女がかなりのゲーマーだったことを失念していた。そんな彼女が自信あると言ったことから予想しておけば良かったのに、あの時の言い方や雰囲気で油断していた。


 ハンデ貰ったのに勝てない時はさすがに心が痛かったが、今度機会があればリベンジしたいと思う。



 そんなこんなで平日が過ぎていき、週末へがやってきた。







 1週間ぶりでございます皆さん。結構時間カツカツで投稿の1時間前に書き終えて推敲してます作者です。

 それなのに他に書きたいネタが頭に浮かんできてるんですよね。時間が欲しい。くっ、力が欲しい……!何言ってるんですかねこの人。


 とりあえずエタりたくはないんですけど万一塾とか忙しくなってきたら活動報告の方に一筆したためておきますゆえ、どうかお許し願いたいです。



 それでは今回もありがとうございました〜。次は4/3ですかね。週1、日曜日更新を心がけてますので。ではでは、また来週会いましょう。

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